コンクリートの物理的性質には、様々な値があります。
部材や構造物の変形,破壊,ひび割れの発生などと密接な関係があり,構造計算する上でその値を知ることは、コンクリート構造物の安全性や耐久性に関係するため、重要な項目となります。
今回の記事では、強度だけでないコンクリートの物理的性質・物性値について説明します。
コンクリートの各種定数
コンクリートの降伏値・降伏点
ヤング係数:22~32kN/mm2程度
コンクリートの応力ひずみ曲線には、厳密には直線部分がなく、降伏点が存在しません。
通常、最大荷重の1/3点での割線弾性係数(セカンドモジュラス)がヤング係数として使われています。
コンクリートのヤング係数は、強度によって値が変わるというのが特徴です。
コンクリートのポアソン比
ポアソン比:普通コンクリート0.15~0.2、高強度コンクリート0.2~0.33程度
ポアソン比とは、単位長さ当たりの縦方向の伸びと横方向の縮みの比の事。
こんにゃくを引っ張った時、縦に伸びて、横は細く縮みますよね?この伸びと縮みの割合をポアソン比といいます。
ポアソン比の逆数をポアソン数といい、普通コンクリートで5~7、高強度コンクリートで3~5程度です。
コンクリートの剛性率(せん断弾性係数)
剛性率:ヤング係数の約43%程度
剛性率Gは、ヤング係数Eとポアソン比Vから求められます。
G=E/(2(1+V))
剛性率は、ヤング係数とポアソン比から自動的に決まる値で、独立して決めることが出来ません。
コンクリートのクリープ
クリープ係数:屋外環境2.0、屋内環境2.5~4.0程度
継続荷重が働いたときに、時間の経過とともにひずみ量(変形量)が増える現象をクリープといい、クリープ係数は、断面算定などの構造計算で必要となります。
クリープ係数φは、クリープひずみfと弾性ひずみεから求めることが出来ます。
φ=f/ ε
クリープは作用応力とおおむね比例関係を示し、通常3~4年程度荷重が続くと一定となります。
また応力が一定以上大きくなると破壊されることもあり、その現象をクリープ破壊と言います。破壊にいたる下限の応力をクリープ限度と言い、コンクリートのクリープ限度は圧縮強度の75~85%程度です。
コンクリートの熱膨張係数・熱伝導率・耐熱温度
熱膨張係数:7~13×10—6/℃程度
熱伝導率:1.51W/m℃
耐熱温度:500℃程度
コンクリートの熱的性質は、コンクリートの体積の7割程度を占める骨材の性質に左右されます。W/Cや材齢などの影響は小さいと覚えてください。
強度は、500℃程度の熱によって一時的に50%程度まで低下しますが、その後徐々に回復していきます。
コンクリートの含水率・基準
含水率:1.5%程度
コンクリートの含水率が問題になるケースは、塗装や仕上げ材の接着に関してです。自然乾燥の場合、環境条件による違いもありますが1年程度は放湿(水分を出す)をし、1.5%程度で平衡状態となります。
含水率に一定の基準はありませんが、仕上げの施工に際しては含水率が8%程度以下になれば、放湿の蒸気圧が接着に影響を及ぼさないとされています。
含水率の測定には、高周波容量式水分計やカール・フィッシャー水分滴定法などがあります。
今回の記事では、コンクリートの物理的性質・定数について紹介しました。
コンクリートの物理的性質で重要な項目は、下の記事で原理や測定方法、規定値など詳しく説明しています。
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