コンクリートの力学的物性値には、静弾性係数(ヤング係数)という値があります。
ヤング係数とは、その物質の固さの指標であり、コンクリートのヤング係数(静弾性係数)は、構造設計において重要な物性値です。
ちなみに、静弾性係数(ヤング係数)を、ヤング率・弾性率などとも呼びますが、どれも同じものを指していることに注意してください。
この記事では、コンクリートの静弾性係数(ヤング係数)について、求め方や測定方法、基準などについて説明します。
コンクリート 応力ひずみ曲線
応力ひずみ曲線とは
物体にある力(応力)を作用させた時、物体の形状は変形(ひずみ)します。その関係を、図で示したものを応力ひずみ曲線と言います。
変形量(⊿X)の元の長さ(X)に対する比で表される値(⊿X/X)。ひずみ≠変形量ですので、間違えずに覚えてください。
ヤング係数とは、その図において、応力とひずみが比例関係である領域、つまり線の傾きを表しています。
傾きが急であるほど固い材質・緩やかであるほど柔らかい材質だということが分かります。
コンクリートの応力ひずみ曲線
コンクリートの応力ひずみ曲線には、厳密には直線部分(弾性域)は存在しません。そのため、どの時点を起点とするかによって、ヤング係数(静弾性係数)にも種類があります。
- 初期弾性係数
- 接線弾性係数
- 割線弾性係数
通常、コンクリートの弾性係数という場合、割線弾性係数の事を指します。
割線弾性係数とは、ひずみが50×10-6の時の応力と、最大荷重の1/3の時の応力を結んだ直線です。
コンクリートのヤング係数の求め方(計算方法)
ヤング係数は、「応力とひずみが比例関係である領域、つまり線の傾きを表しています」とお伝えしました。
この関係性は、みなさんも一度は習ったであろうフックの法則の公式と同じです。
フックの法則は
f(力)=K(定数)×X(伸び)
でしたね。
これと同じく
σ(応力)=E(ヤング係数)×ε(ひずみ)となります。
つまりE(ヤング係数)=σ(応力)/ε(ひずみ)となります。
コンクリートのヤング係数と圧縮強度の関係
コンクリートのヤング係数は、強度と気乾単位容積質量に相関があります。強度の高いコンクリートのほうが大きい値となりますが、一般的には、22〜32kg/mm2程度。
実験式で広く知られている式には、
といったものがあります。
またJASS5には、ヤング係数の規定があり、下の式で計算された値の80%以上の範囲内であることが要求されています。
この場合、これから説明するヤング係数の測定方法などによって実測したデータと、上の式から求めた理論値を比較することになります。
コンクリートのヤング係数の測定方法
ヤング係数の測定方法には、JIS A 1149コンクリートの静弾性係数試験方法があります。
通常の圧縮強度試験と同様の方法で荷重を加えていき、その時のひずみを計測していく試験です。静弾性係数試験のポイントを説明します
測定機器
供試体の変形量を計測するのが、ひずみ測定器です。ひずみ測定器は、縦ひずみ測定精度が10×10-6以下の機器を使用します。一般によく使われているのが次の機器です。
- ひずみゲージ(ストレインゲージ)
- コンプレッソメーター
ポイント
- 測定誤差を小さくするため、温度と湿度を一定に保つ。
- ひずみ測定器は、供試体の軸に平行に、かつ正反対の2か所に取り付ける。
- ひずみ測定器は、供試体の高さの中心位置に取り付ける。
試験方法
所定の位置にひずみ測定器を取り付けたら、圧縮強度試験と同様の方法で荷重を加えます。
縦ひずみは、最大荷重の1/2程度まで測定を行い、測定中は等間隔に10点以上は測定します。
その後、最大荷重を有効数字3桁まで読み取り、応力とひずみを使ってヤング係数を算出します。
ヤング係数の計算方法
ヤング係数は次の式によって算出します。
Ec=(S1-S2)/(ε1-ε2)×10-3
Ec:ヤング係数
S1:最大荷重の1/3の応力
S2:ひずみが50×10-6の時の応力
ε1:最大荷重の1/3の応力の時のひずみ
ε2:50×10-6
右図に赤い点が二つありますね。
S1とε1が上の点S2とε2が下の点になります。
まとめ
今回はコンクリートの静弾性係数(ヤング係数)について説明しました。
コメント