寒中コンクリートの意味・対策・養生が5分で分かる

寒中コンクリート 種類

寒中コンクリートとは、寒い時期にコンクリートを打設する時の施工方法の一つです。コンクリートの種類というよりは、コンクリートの取扱い=施工方法の一つになります。

読み方は「寒中=かんちゅう」コンクリートと読みます。

コンクリートは、強度が発現する前に凍結してしまうと、その後適切に養生を行なっても、強度が回復することがなくなります。

そのため「硬化前に凍結する恐れ」がある時期に打設するコンクリートについては、寒中コンクリートとして取り扱わなければなりません。

この記事の中身
  • 寒中コンクリートの期間は、日平均気温が4℃以下
  • 「初期凍害」と「強度増進の遅れ」に留意
  • 初期養生は圧縮強度が5.0N/㎟となるまで
  • 養生方法は加熱養生と断熱養生から選択する
  • 打込み時のコンクリート温度は10℃~20℃
スポンサーリンク

寒中コンクリートの期間は、気温によって判断する

建築(JASS5)・土木(示方書)では、寒中コンクリートを以下の期間としていて、寒中コンクリートの適用地域は、沖縄県を除きほぼ日本全域に分布しています。

気温から期間が決まるため、地域によって「日付に違いがある事」に注意してください。

  1. 日平均気温が4℃以下「建築(JASS5)・土木(示方書)」
  2. 積算温度M91が840°D・Dを下回る期間「建築(JASS5)」

この二つには、それぞれ違った目的があります。

  1. 初期凍害の防止
  2. 構造体コンクリートの強度確保

凍害とは、コンクリートが凍ったり溶けたりすることで受ける劣化作用。初期凍害は、硬化初期に受ける凍害を言います。

初期凍害を受けたコンクリートは、その後適切に養生をしても強度が回復しなくなります。

日平均気温が4℃以下では、凍結の可能性があがる

コンクリートの凍結温度は-2.0~-0.5℃程度と言われていて、平均気温4℃以下とすると、最低気温が凍結温度に達する可能性が高くなります。

そのため、初期凍害を防止するための対策が必要となります。

積算温度が840°D・D 以下だと強度不足の可能性があがる

コンクリートの強度発現は温度の影響が大きく、低温下では強度増進が遅くなります。すると、工程上の不具合が出たり、規定の材齢までに強度の確保が出来ないといった問題が起きます。

建築では、材齢91日で品質基準強度を確保することが必須なため、初期凍害の防止だけでなく、構造体の強度確保についても対策が必要となります。

積算温度とは、ある期間の平均気温を合計したものを言います。農作物などにおいても、成熟までの期間は積算温度の累積によって決まり、積算温度の目安としておおよその日数で表しています。

コンクリートの積算温度は、平均気温+10℃

なぜ気温に+10℃するのかは、コンクリートの強度発現は-10℃がおおよそ下限です。それより低い環境下では、強度の増進が止まるとされています。

-10℃を起点とするため、その日の気温に+10℃した値を合計して積算温度としています。

積算温度840°D・Dが基準となる理由

標準養生(20℃)をした供試体の材齢28日の積算温度は、
M28=(20+10)℃×28日=840°D・D

構造体の強度の判定は、材齢91日の強度です。材齢91日の積算温度が、標準養生の材齢28日分の積算温度より低い場合、強度を確保出来ない危険性が大きくなります。

そのため、材齢91日の積算温度が840を下回る場合は、強度確保の対策が必要となります。

M91(材齢91日)積算温度=840°D・D(標準養生の材齢28日相当)

スポンサーリンク

寒中コンクリートは養生期間と養生方法に留意する

打込んだコンクリートは、初期凍害を防止するための初期養生を行います。初期養生の期間と養生方法には以下のような決まりがあります。

養生期間は圧縮強度が5.0N/㎟となるまで

凍結融解の圧力に耐えうる強度が5.0N/㎟と言われています。そのため5.0N/㎟以上であることを確認したら、初期凍害の影響を受ける恐れがなくなるため、初期養生を打ち切って良いとされています。

初期養生の確認のための供試体は「現場封かん養生」とし、打込んだコンクリートに近い条件で養生された供試体で、強度の確認することが重要です。

養生方法は加熱か断熱かを考える

コンクリートの温度を維持するために保温養生を行ないますが、その方法には大きく二種類の方法があります。

加熱・給熱養生

打込んだコンクリートを上屋などで囲い、ヒーターなどで内部空間を暖める方法。コンクリートに熱を与える方法なので、加熱・給熱といいます。

一般に5℃を目標に加熱します。この時、コンクリートが直接熱せられて乾燥することがないよう、注意することが必要です。

断熱養生・被覆養生

断熱型枠や養生マットなどでコンクリートを覆い、コンクリートの水和熱を閉じ込める事で温度を保つ方法です。

断面が比較的大きい場合やセメント量が多い、気象状況が過酷でない場合などで、加熱までを必要としない場合の養生方法です。

寒中コンクリートの保温養生では温度差と乾燥に注意する

コンクリートの強度発現には、温度と水分が必須です。

寒中コンクリートは、加熱による水分の蒸発やコンクリートと周囲の温度差による水分の蒸発に留意する必要があります。

また、コンクリートの温度が上がり過ぎると、周囲との温度差によって表面ひび割れを起こす可能性があるため、必要以上に加温することはリスキーとなります。

寒中コンクリートにおけるその他の留意点

打込み時のコンクリート温度は10℃(場合によっては5℃)~20℃とする。

養生期間中にコンリート温度を保つのに、「冷たいものを暖める」よりも「暖かいものを冷めない様にする」ほうが、労力が少ないため、生コンの温度を10~20℃として打込む事とします。

生コンの温度は、材料の温度と運搬時間によって決まります。そのため、生コン製造時に材料を加熱しますが、セメントは急結する恐れがあるため、どんな場合でも加熱してはなりません。

またコンクリートは運搬によって徐々に冷えていくため、運搬時間も考慮する必要があります。

JASS5においては、凍結による障害や低温下での強度増進の遅れに対処するために、寒中コンクリートで用いるコンクリートは「調合管理強度を24N/㎟以上」としています。

凍結融解作用を受けるコンクリートとは

寒中コンクリートとよく似たものに「凍結融解作用を受けるコンクリート」があります。

寒中コンクリートと凍結融解作用を受けるコンクリートでは、対策を行う目的に違いがあります。

コンクリートの種類目的
寒中コンクリート打込んだ生コンの初期凍害と強度発現
凍結融解作用を受けるコンクリート硬化コンクリートの長期的な凍害防止

寒中コンクリートは、打込んだ生コンが健全に硬化するための対策なのに対して、凍結融解作用を受けるコンクリートは、硬化後のコンクリートに凍害の恐れがある場合の対策となります。

主に寒冷地において、湿潤状態(濡れた状態)で凍結融解作用を繰り返し受ける恐れがある場合を想定しています。

凍結融解作用について下の図を見てみましょう。

凍結融解作用のサイクル
  • 気温の降下
    コンクリート内部の水が、気温の降下によって凍結
  • ひび割れ
    凍結による膨張圧によってひび割れ
  • 気温の上昇
    凍結した水が、気温の上昇によって融解
  • ひび割れ進展
    ひび割れに水が浸入し、次のサイクルで凍結

コンクリート内部の水が「凍結→膨張圧によるひび割れ→融解しひび割れに侵入」を繰り返す事によって、ひび割れの発生とひび割れの進展のサイクルが起こることを凍害といいます。

凍結融解作用を受ける地域とは

寒中コンクリートの適用地域は、沖縄県を除きほぼ日本全域に分布していますが、凍結融解作用を受ける地域は、北海道、東北及び北関東・信州地方の一部がおおよその地域となります。

また、該当する地域であっても凍結融解作用の強さや、部材の条件や重要度を考慮して総合的に判断するものとしています。

適用の判断として凍結融解作用係数があり、次式によって求める事ができます。

凍結融解作用係数=―(最低気温)×日射係数×部材係数

  • 日射係数:
    部材の方位と方向から係数を求め、水平方向(屋根スラブやひさしなど)及び南面の鉛直方向(外壁)の部材がより大きな係数となります。
  • 部材係数:
    水分の供給具合から係数を求め、軒先やベランダなど水と接した状態になる部材がより大きな係数となります。

凍害は「凍結と融解を繰り返すこと」が問題なため、凍結融解作用の条件として

最低温度×溶ける条件(日射)×凍結する水の量(水分供給)

によって、凍害の危険性を判断することが出来ます。

凍結融解作用を受けるコンクリートの規定値は?

コンクリートの凍害防止の観点から、通常の管理値と違う項目について、主なものを解説します。

耐久設計基準強度

コンクリートの水セメント比が小さい=強度が高いほうが、凍害に対する抵抗性が高まるため、耐久設計基準強度は、一般環境の値に+3N/㎟としています。

計画供用期間の級:短期耐久設計基準強度(Fd) :21
計画供用期間の級:標準耐久設計基準強度(Fd) :27

骨材の品質

骨材の吸水率は凍害に対する抵抗性に影響が大きく、また安定性で凍結膨張に対する抵抗性を判断できるため、原則として表の値を満足する骨材を使用する。

 細骨材粗骨材
吸水率3.0%以下2.0%以下
安定性損失質量10%以下12%以下

コンクリートの空気量

空気量の下限値は4.0%以上、ただし、品質基準強度が36N/㎟を超える場合は3.0%を下限とする。

下限値管理のため、空気量の設定値は許容値を考慮すると、表の値を標準とします。

 目標空気量
一般のコンクリート5.5%
高流動コンクリート6.0%
高強度コンクリート4.5%

高流動コンクリートの場合、気泡間隔係数が大きくなったり気泡の消失が多いなど、コンクリート内部の気泡が不安定なため、一般のコンクリートよりも高い目標値を標準としています。

コメント

  1. むっつりたこ より:

    寒中コンクリートに近々なるのですが今年は暑さが厳しくコンクリート温度が20度を超えそうです。
    コンクリート温度が20度を超えた場合、試験不合格で打設にまわすと駄目なのでしょうか?

    • jiego より:

      日平均気温が4℃以下の場合、初期凍害の予防策として生コンの温度を規定しています。現状の気温が、初期凍害の恐れがない場合は、工事管理者の承認を得て、寒中コンクリートの適用を見送れば良いと思われます。

タイトルとURLをコピーしました