夏場の気温の高い時期(暑中)は、コンクリートと施工の両方に、次のような問題が生じやすくなります。
- コンクリート…単位水量の増加・スランプロスの増大・凝結の促進
- 施工…コールドジョイント・ひび割れ・構造体強度の低下
そのため、夏場の気温の高い時期(暑中)に施工するコンクリートは、暑中コンクリートとして管理する必要があり、暑中コンクリートは、
荷卸し時点でコンクリート温度が35℃以下
でなければなりません。
この記事では、暑中コンクリート工事について説明します。
暑中とはいつのこと?暑中の適用期間について知ろう
暑中コンクリート工事を知るために、はじめに暑中がいつからいつまでなのかを説明します。
暑中の定義は、
日平均気温の平年値が25.0℃を超える期間
とされています。
平年値とは、過去30年間の気象データから算出したもので、10年に一度更新されます(西暦の下一桁が1の年)。2023年現在の平年値は、1981年~2020年の気象データから求めたものになります。
暑中期間は、地域ごとの気象データから算出するため、各地域で期間に差があると覚えてください。
また、暑中期間の構造体強度補正値(S値)は+6N/㎟となります。強度発現は早いですが、高温により強度増進が鈍いため、91日時点のコア強度が低くなるからです。
コンクリートのスランプロスに気を付ける
暑中期間の高温は、コンクリートの品質に以下の様な影響を与えるため、対策を検討する必要があります。
- 単位水量の増加
- スランプロスの増大
- 凝結の促進
コンクリートのスランプは、温度の影響を受けやすく、高温下では単位水量が増える傾向にあります。
一般に練上がり温度が10℃の上昇すると、単位水量を3~5%程度増やす必要があります。
さらに高温下では、運搬中のスランプロスも大きくなるため、練上がりの目標値も大きくするなどの対策が必要です。
コンクリートのブリーディングは温度が高いほど減少し、凝結・硬化も早くなるため、施工時間が限られてきます。
ジャンカやコールドジョイントが出来やすい
コンクリートの打込みでは、ジャンカやコールドジョイントを防止する事が重要ですが、暑中コンクリートでは、特に注意が必要となります。
- スランプの低下=ワーカビリティの低下→打込み効率の低下
- ブリーディング・凝結の促進→打重ね時間の短縮
暑中コンクリートは凝結が早いため、早く打重ねなければなりません。一方で、ワーカビリティが低下しやすいため、逆にいつもより打込み効率が下がりやすくなります。
そのため、コールドジョイントが発生しやすくなり、暑中コンクリートの施工では、特に注意が必要となります。
暑中コンはコンクリート温度が重要
コンクリートの練上がり温度(製造した時点での温度)は、材料の温度に依存しています。
暑中コンクリートの練上がり温度は、一般に平均気温+5℃程度になり、その後の運搬中に、2~4℃程度高くなります。
暑中期間は、日平均気温が25.0℃を超える時期なので、荷卸し時は32~34℃程度となります。
25℃+5℃+2~4℃=32~34℃
そのため、平均気温が26~28℃を超えると35℃を超える可能性が高くなっていきます。
荷卸し時のコンクリート温度は、「練上がり温度+運搬中の温度上昇」ですので、コンクリート温度を下げるためには、
- 練上がり温度を下げる
- 運搬中の温度上昇を抑える
二つの対策のどちらかまたは、両方を行う必要があります。
コンクリートの練上がり温度を下げるには
- 材料の冷却
- コンクリート自体の冷却
が挙げられます。
材料の冷却とは、水や骨材、セメントを冷やす事で温度を下げる方法で、その中でもっとも効率的なのが、水を冷やす方法です。
水は比熱が大きく、ほかの材料より温度コントロールがしやすいため、もっともポピュラーな方法と言えます。
そのほか、絶対量の多い粗骨材を冷やす方法や、高温になりやすいセメントを冷やす方法なども選定されることがあります。
細骨材を冷やすのは、表面水の変動が大きくなりやすく、スランプの管理が難しくなるため、オススメできない方法です。
コンクリート自体を冷却する方法としては、液体窒素をミキサ内に投入して直接冷やす方法があります。
運搬中の温度上昇を抑えるには
- 運搬時間を短くする
- ミキサー車に遮熱や断熱処理を行う
が挙げられます。
運搬中の温度上昇は、外気や直射日光・ミキサー車の排熱によるものですが、運搬時間が長いほど、温度が上がります。
そのため、運搬・待機時間を出来るだけ短くすることが有効となります。
しかしながら、運搬時間は物理的な距離に左右されるので対策をとれない事もあるでしょう。
そういった場合は、ミキサー車の車体に遮熱や断熱処理を行う対策も有効となります。
- 車体を白色・銀色のペンキで塗装する
- 表面に遮熱塗装を施す
- 断熱カバーを取り付ける
- 散水により車体を冷却する
などにより1~3℃程度、温度上昇を抑える効果があるとの報告もあります。
近年の温暖化などにより、上記の対策をしても35℃以下を超える可能性があります。そのため、次のような対策を検討することも重要です。
発熱量や凝結をコントロール
暑中コンクリートでは、構造体に以下の様な問題が生じます。
- コールドジョイント
- ひび割れ
- 構造体強度の低下
これらの問題をクリアする方法として、次のようなことが挙げられます。
材料と配合で発熱量と凝結をコントロール
コールドジョイントやひび割れの発生は、コンクリートの凝結時間が早いことが原因です。以下の対策で、適度なブリーディング量と凝結時間にすることが有効です。
- 遅延型の混和剤を使用
- 低発熱型のセメントを使用
セメントの水和熱を抑え、体積変化によるひび割れや構造体強度を確保するために、以下の対策なども有効となります。
- 低発熱型のセメントを使用
- 高性能AE減水剤を使用しセメント量を減らす
- 材齢の延長・混合セメントの使用
運搬・打込み時間の管理と養生期間の確保
コールドジョイントの発生を防ぐために、なるべくフレッシュな生コンを打込むことが重要です。そのため、以下の対策で、打込みの中断を短くすることが有効です。
- 製造から打込み終了まで90分以内
- 配管や打込み順序を計画的に行う
構造体強度の確保とひび割れを防ぐために、打込み後のコンクリートの養生が重要になります。そのため、以下の対策で、構造体を乾燥・高温から守る必要があります。
- 湿潤養生期間は5日間以上
- 直射日光や風による乾燥を防ぐ
乾燥・高温によって、表面ひび割れが発生しやすくなる、硬化に必要な水和反応水が不足し強度発現が鈍くなる、強度増進が鈍化するため構造体強度の確保が困難になることもあります。
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