材料分離とは、練混ぜたコンクリートが均質性を失い、材料がかたよったり離れたりする事をいいます。
材料分離が生じると、局所的に強度・耐久性・水密性の低下を招くためコンクリートにとって好ましくない現象です。
ただし、材料分離はワーカビリティとも深い関係性にあるため、一概に無くせば良いとも言い切れない側面も持っています。ワーカビリティを確保しつつ材料分離をコントロールする事が重要です。
この点を踏まえつつ、この記事ではコンクリートの材料分離、特にポイントとなるブリーディングを中心に、分かりやすく説明していきます。
材料分離の要因とタイミング
コンクリートとは、大きさや密度の違う材料を混合したものですから、宿命的に分離を生じるものです。練混ぜ時点から硬化するまでの様々なタイミングで分離の可能性を秘めています。
下の図は、材料分離の特性要因図です。特性要因図とは、原因究明のために使用される図で、ある結果とそれに影響を与える要因を結びつけ、整理するために使われます。
魚の骨に形が似ているため、フィッシュボーン図とも呼ばれたりします。
特性要因図を見ると、材料分離は使用材料・配合及び施工・運搬が影響していることが分かります。ここから、各項目ごとにどういった要因があるのか見ていきましょう。
材料分離の要因1.骨材
- 種類:密度が大きい又は小さい骨材、特に軽量骨材は分離しやすい
- 最大寸法:過度に大きい寸法の粗骨材は分離しやすい
- 粒形:細長かったり扁平な骨材は分離しやすい
- 粒度:細骨材の粒度(FM)が大きい、または、0.3mm以下の細かな粒が少ないものは分離しやすい
材料分離の要因2.配合
- 粗骨材量:粗骨材量が多すぎると分離しやすい
- s/a:s/aが小さすぎたり、単位骨材量が多すぎると分離しやすい
- W/C:W/Cが大きすぎると分離しやすい
- セメント量:セメント量が少なすぎると分離しやすい
- 単位水量:単位水量が多すぎると分離しやすいが、少なすぎても分離しやすい
材料分離の要因3.混和材料
- 混和材:フライアッシュやシリカフュームは適度な粘性により分離を少なくする
- 化学混和剤:AE剤や減水剤の使用によって適度な粘性により分離を少なくする
材料分離の要因4.運搬・施工
- 輸送方法:ダンプトラックでの輸送は分離しやすい
- 打込み:高い所から投入すると分離しやすい
- 運搬:長いシュート上を流すと分離しやすい、特に斜めシュート
- 締固め:過度な締固めは分離を引き起こす
- 締固め:バイブレーターで横流しすると分離しやすい
材料分離は、コンクリートの粘性と密度差が主な要因です。粘性が足りないと分離しやすい・材料の密度差が大きいと分離しやすい、また運搬方法や打込み方法によって、材料のサイズや密度差の影響が大きくなり、分離を起こしやすくなります。
ブリーディングの原因と対策
ブリーディングとは、型枠に打ち込んだコンクリート表面に、内部の水が浮き上がってくる現象を言います。ブリージングではなく、正しくはブリーディングと言います。
ブリーディングは、水密性の低下・鉄筋との付着の低下、コンクリート表面の美観の低下など、コンクリートに悪影響を及ぼします。逆に少なすぎる場合には、ポンプ圧送の低下や、表面仕上げの不良などワーカビリティーの低下も招きます。
コンクリートの水密性の指標には、透水係数K(cm/s)というものがあります
また、ブリーディングにともなって、コンクリート表面に浮きあがってくる白い粉(細かな粒子)をレイタンスと呼びます。レイタンスの層は脆弱なため取り除かなければなりません。似たような現象に、エフロレッセンスというものがありますが、
エフロレッセンスは、コンクリートが硬化した後で、内部の可溶性物質が水の移動にともなって表面に出てくるものです。間違えないように注意しましょう。
ブリーディングの要因について下の対比表にまとめて見ました。
ブリーディングが増える | ブリーディングが減る |
単位水量が多い | 単位水量が少ない |
セメントが粗い | セメントが細かい |
細骨材の粒度が粗い | 細骨材の粒度が細かい |
粗骨材の最大寸法が小さい | 粗骨材の最大寸法が大きい |
コンクリート温度が低い | コンクリート温度が高い |
AE減水剤を使っていない | AE減水剤を使っている |
打込み速度が速い | 打込み速度が遅い |
打込み高さが高い | 打込み高さが低い |
表から分かるのは、ブリーディングを減らすには単位水量を減らす事。直接減らさなくても、単位水量が少なくて済む材料や配合を選定するのが良い。
また、細かな粒子を増やすことで、分離して表面に浮き上がる水を繋ぎ止める=保水する事も良いというのが分かります。
ブリーディング量の規定値
コンクリートの材料分離については定量的な判定が難しく、相対的・感覚的に良い悪いという判断をするしかないのですが、ブリーディグは、唯一定量的な試験が可能です。
ブリーディングは多すぎても少なすぎても良くないのですが、次に示すコンクリートは、特にブリーディングの影響を受けやすいため規定値が定められています。
水密コンクリート
水密コンクリートとは、地下室・水槽・プールなどの水圧の影響を受ける部分に使うコンクリートの事をいい、ブリーディング量の規定値は0.3cm3/0.2cm2以下です。
凍結融解作用を受けるコンクリート
凍結融解作用を受けるコンクリートとは、寒冷地において凍害を受ける部分に使用するコンクリートの事を言います。水平面で凍害が想定される場合のブリーディング量の規定値は、0.3cm3/0.2cm2以下です。
鋼管充填(CFT)コンクリート
鋼管充填(CFT)コンクリートとは、鋼管の内部にコンクリートを充填して一体化するコンクリート鋼管充填造(CFT造)に使用するコンクリートの事を言います。
ブリーディング量の規定値は0.1cm3/0.2cm2以下です。
まとめ
今回の記事は、コンクリートの材料分離について説明しました。コンクリートの性質上、分離を無くす事は不可能ですが、抑える事は可能。
材料分離を減らすには、適度な粘性を持たせる・単位水量を減らす(特にブリーディング)事が重要です。ただし、材料分離とワーカビリティは互いに関連しているものなので、むやみに分離を抑えようとすると、かえってワーカビリティが悪くなることも…
施工が悪くなると、材料分離以上に欠陥を生じる危険性が増すため、充分に考慮する必要があります。コンクリートはあくまで材料です、良い施工が出来なければ意味がありません。
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