軽量コンクリートとは、普通コンクリートに比べて単位容積質量が小さく、構造体の重量を軽くすることができるコンクリートを言います。
軽量コンクリートには大きく分けて2種類あり、以下に大別できます。
- 軽量骨材コンクリート
- 軽量気泡コンクリート
ネットで「軽量コンクリート」と検索しても、軽量骨材コンクリートと軽量気泡コンクリートの情報がランダムに出てくるため、混同しやすいコンクリートです。
軽量骨材コンクリートと軽量気泡コンクリートでは、その用途や規格、作り方にかなり違いがあり、注意が必要です。
今回の記事では、軽量コンクリートについて、違いや用途、基準などについて解説します。
軽量コンクリートの種類と違いを知ろう
軽量コンクリートは、次の二つに分けて考えることが出来ます。
- 骨材を軽量化したもの=軽量骨材コンクリート
- 多量の気泡を混入したもの=軽量気泡コンクリート
軽量骨材コンクリートと軽量気泡コンクリートの違いについて、表にまとめました。
規格 | 建物構造 | 用途 | |
軽量骨材コンクリート | 生コン | 鉄筋コンクリート造 (RC構造) | 構造部材 |
軽量気泡コンクリート | 二次製品 | 鉄骨造 (S構造) | 非構造部材 |
一般的には、軽量骨材コンクリートは生コンであり、軽量気泡コンクリートは二次製品(プレキャストコンクリート)となります。
軽量骨材コンクリートは、構造耐力上主要な部分である構造部材に使用されますが、軽量気泡コンクリートは、耐力を必要としない非構造部材で使用されます。
そのため、軽量骨材コンクリートはRC構造に、軽量気泡コンクリートはS構造で使用されます。
用途によっては、現場打ちの気泡コンクリートや軽量骨材コンクリートに気泡を混入することもあるし、軽量骨材コンクリートでも、パーライトなどの超軽量骨材の場合、非構造用として使用されます。
同じ軽量コンクリートという種類ではありますが、この2つはかなり違った使われ方をしているため、規格や用途も大きく異なったものとなります。
軽量骨材コンクリートとはなに?
軽量骨材コンクリートとは、JIS A 5308に規定されている「軽量コンクリート」を言います。
コンクリートの単位容積質量を小さくするため、「密度が小さい=軽量骨材」を使用してコンクリートの比重を軽くします。
コンクリートの重さは、材料の密度と材料の使用割合から定まります。
軽量骨材は多孔質で内部の空隙が多いため、密度が小さく吸水率が大きいのが特徴です。
軽量骨材には、以下の2種類があります。
- 火山から噴出した軽石や火山礫などの天然軽量骨材
- 膨張性岩石を加熱膨張させた人工軽量骨材
現在広く使われているのは人工軽量骨材で、
- 品質がJIS A 5002(構造用軽量コンクリート骨材)に適合している
- 天然より管理がしやすい
- JASS 5の規定が人工軽量骨材を使用(全量または一部)すること
などが、その主な理由です。
軽量コンクリートには、単位容積質量の違いから「軽量1種・軽量2種」の2種類があります。
- 軽量1種…粗骨材のみ
- 軽量2種…粗骨材及び細骨材(全量または一部)
1種と2種では、使用する軽量骨材に違いがあり、軽量2種の方がより単位容積質量が小さいコンクリートになります。
軽量気泡コンクリートとは
軽量気泡コンクリートとは、アルミ粉末などの発泡剤でコンクリート内部に大量の気泡を入れ、多孔質化したコンクリートを言います。
軽量気泡コンクリートでもっとも流通しているものが、ALC(Autoclaved Lightweight Concrete)という、コンクリート二次製品です。
JIS A 5416「軽量気泡コンクリートパネル(ALCパネル)」では、石灰質・けい酸質原料を使用し、オートクレーブ養生した軽量気泡コンクリートを、鉄筋などで補強した板状のパネルについて規定しています。
軽量コンクリートの重さについて、一般的なコンクリートと比較してみました。
コンクリートの種類 | 気乾単位容積質量 |
普通コンクリート | 2.3t/㎥程度 |
軽量コンクリート1種 | 1.8~2.1 t/㎥ |
軽量コンクリート2種 | 1.4~1.8 t/㎥ |
ALCコンクリート | 0.6 t/㎥程度 |
高強度コンクリート | 2.4 t/㎥程度 |
重量コンクリート | 2.5 t/㎥を超える |
普通コンクリートと比べて、軽量コンクリートは10~40%程度、ALCコンクリートは75%程度、軽くすることが出来ます。
軽量コンクリートの配合・品質基準値は?
軽量コンクリートの品質基準について、比較的軽量コンクリートの使用頻度が多いJASS 5の基準を見てみましょう
軽量コンクリート | 普通コンクリート | |
単位容積質量 | 1.8~2.1t/㎥(軽量1種) 1.4~1.8 t/㎥(軽量2種) | 規定なし |
設計基準強度 | 36N/㎟以下(軽量1種) 27N/㎟以下(軽量2種) | 36N/㎟以下 |
スランプ | 21cm以下 | 18cm以下(呼び強度<33) 21cm以下(呼び強度≧33) |
空気量 | 5.0% | 4.5% |
単位セメント量 | 320kg/㎥(Fc≦27) 340kg/㎥(Fc>27) | 270 kg/㎥ |
水セメント比 | 55%(Fc≦27) 50%(Fc>27) | 65% |
軽量骨材は多孔質=内部空隙が多く、吸水率が高いのが特徴です。
そのため凍結時の膨張圧が大きくなる傾向があり、普通コンクリートに比べて凍結融解作用に対する抵抗性が劣ります。
凍結融解抵抗性を向上させるために、空気量の目標値を5.0%と大きくする必要があります。
軽量コンクリートの用途やメリット・デメリット
軽量骨材コンクリートと軽量気泡コンクリートの用途や使い方、それぞれのメリット・デメリットについて見てみましょう。
軽量骨材コンクリート
軽量骨材コンクリートは、構造部材としてコンクリートの自重を軽くする必要がある場合や、余分な重量を増やしたくない場合に使用されます。
シンダーコンクリートとは、元々は、石炭の炭がら(cinder)を骨材とした軽量コンクリートのことを言います。
現在は軽量コンクリートに限らず、防水押えコン・保護コンや床のレベルコンをシンダーコンクリートと総称することが多いです。
メリット:
- 構造物の自重が軽く、基礎工事の縮小・躯体のスリム化が可能となり、トータルコストが低減できる。
- 含水率が高いため、水和に必要な水分が自己養生に寄与する
- 断熱性に優れている
- 防音・吸音性が高い
デメリット:
- せん断許容応力度が普通コンクリートの0.9倍と小さい
- 施工時のポンプ圧送に注意が必要
- 製造できる生コン工場が限定され、供給が難しい
軽量気泡コンクリート
軽量気泡コンクリートは非常に軽く断熱性・耐火性が高いことから、建築では高層ビルのカーテンウォールや床のかさ上げ、土木では充填用の裏込め材、一般住宅でもALCパネルなどの外壁材や屋根材として使用されます。
カーテンウォールとは、建物と外の空間を仕切る外壁のことを言います。
ガラス張りの高層ビルなどが分かりやすいと思いますが、外壁自体は耐力を負担せず、建物の中と外を区切るために使われています。
メリット:
- 耐火性や防火性が高い
- 断熱性に優れている
- 遮音性が高い
- 伸縮やひび割れ、反りなどが起こりにくい
デメリット:
- 内部の空隙が多いため水に弱く、ひび割れなど劣化の原因となる
- 継ぎ目が多く美観が良くない。
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