プレキャストコンクリートの規格や種類、メリット・特徴とは?

種類

プレキャストコンクリートとは、工場であらかじめ作られたコンクリート部材のことを言います。

あらかじめ(Preプレ)成形 (Castキャスト) されたコンクリートであるため、プレキャストコンクリート製品と呼んでいます。

PCaコンクリート・PCと略称で書かれることも多いですが、PCはプレストレストコンクリートと混同しやすいため、Pre Castの略であるPCaの方が間違いがありません。

プレキャストコンクリートは、プレコンや二次製品などとも呼ばれています。

近年、国土交通省では、工事現場における生産性の向上や安全性の向上など、環境改善の取り組みとして「i-Construction」の推進を打ち出しています。

その取り組みの中で、工期短縮、省人・省力化などプレキャストコンクリートの優位性が注目され、導入促進が進められています。

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プレキャストコンクリート製品とは

RCとの違いは、現場に運ぶコンクリートの状態

一般的にコンクリートは、生コン工場で練混ぜられたコンクリートを現場までミキサー車で運搬し、型枠の中に打込んで硬化させます。

そのため、現場に運ばれてくるコンクリートはまだ固まらないコンクリート(フレッシュコンクリート)であり、現場の型枠内で鉄筋とコンクリートを一体化させて硬化させます。

一方、プレキャストコンクリートは、プレキャスト製品工場で練混ぜたコンクリートを、工場内で組み立てた型枠の中に打込んで硬化させます。

そのため、現場に運ばれてくるコンクリートはすでに固まった後の状態であり、構造体の部材としてすぐに使える状態です。

鉄筋コンクリート(RC)とプレキャストコンクリート(PCa)の違いは、現場に運ばれるコンクリートの状態、別の言い方をするとコンクリートを硬化させる場所の違いです。

プレキャストコンクリート製品の規格は、構造の種別で分けられている

プレキャストコンクリート製品に関するJIS規格は、構造の種別によって以下の3つに分けられています。

  • JIS A 5371 プレキャスト無筋コンクリート製品
  • JIS A 5372 プレキャスト鉄筋コンクリート製品
  • JIS A 5373 プレキャストプレストレストコンクリート製品

プレキャストコンクリートのJIS規格には、使用性や安全性、耐久性など強度に関すること以外に、部材寸法について規定があります。

また、製品をⅠ類・Ⅱ類に区別していて、規格では以下のように規定されています。

Ⅰ類…製品の性能を満足することが、実績によって確認された仕様に基いて製造されるPC製品で付属書に推奨仕様が示されているもの

Ⅱ類…受渡当事者間の協議によって、性能及び仕様を定めて製造されるPC製品

この文章を説明すると、下文のようになります。

  • Ⅰ類…JISの付属書と推奨仕様に適合する
  • Ⅱ類…JISの付属書に適合するが、推奨仕様には適合しない

Ⅰ類は性能や寸法など、あらかじめ決められたレディメイドの製品、Ⅱ類は、メーカー仕様や発注者の要望によるオーダーメイドの製品だと言えます。

プレキャスト製品の種類の分け方

プレキャストコンクリート製品は、「作り方」・「構造」・「使用用途」の3項目をもとに分類されます。

  1. 成形方法
    • 振動締固め
    • 加圧締固め
    • 振動・加圧締固め(即時脱型)
    • 遠心力締固め
    • ロール転圧締固め
    • 高温高圧蒸気養生(オートクレーブ養生)
  2. 構造別
    • 無筋コンクリート(URC)
    • 鉄筋コンクリート(RC)
    • プレストレストコンクリート(PC)
  3. 用途別

3.用途別の主なものを、いくつか紹介します。

  • 道路、下水道、排水路などに使われる「暗きょ類」
    • 遠心力鉄筋コンクリート管(ヒューム管)
    • プレストレストコンクリート管
    • ボックスカルバート・アーチカルバート
    • シールドセグメント
  • 道路の舗装、境界などに使われる「舗装・境界ブロック類」
    • 歩道用平板
    • 歩車道境界ブロック・地先境界ブロック
    • インターロッキングブロック
  • 道路に設置される側溝などに使われる「路面排水溝類」
    • U形側溝およびU形側溝用ふた
    • L形側溝、皿型側溝
  • 河川・港湾の護岸、道路・宅地造成の土留め壁に使われる「擁壁類」
    • 積みブロック
    • L型擁壁
  • 構造物の基礎くいに使われる「くい類」
    • プレストレスト鉄筋コンクリートくい
    • 鋼管複合くい
    • 節くい
  • 下水道の点検孔として使われる「マンホール類」
  • 農業用水の用水路などに使われる「用排水路類」
    • U形フリューム
    • ベンチフリューム
  • 電柱、各種電線路用支柱に使われる「ポール類」
    • プレストレストコンクリートポール
    • 照明用化粧ポール
  • 道路橋の橋梁に使われる「橋梁類」
    • 道路橋用橋桁
    • 道路橋用プレキャスト床版
  • 貯水施設に使われる「貯水施設類」
    • 雨水貯留施設
    • 防火水槽
  • 落石などから道路などを保護するのに使われる「防災施設類」
    • ロックシェッド
  • 河川堤防、切土・盛土の被覆に使われる「法面被覆ブロック類」
    • 張りブロック
    • 連接ブロック
    • ブロックマット
    • 植栽コンクリートブロック
  • 鉄道の設備に使われる「鉄道施設類」
    • PCまくらぎ
  • 塀や外壁などに使われる「建築用製品類」
    • 空洞ブロック(建築用ブロック)
    • 軽量気泡コンクリートパネル(ALCパネル)
  • 建物の主要部材に使われる「建築用構造部材」
    • 柱・梁・床
    • 階段・バルコニー・カーテンウォール
  • その他
    • 点字ブロック
    • 共同溝
    • 防護柵
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プレキャストコンクリートの特徴は、生産性の良さと安定した品質

プレキャストコンクリート製品の特徴について、現場打ちコンクリートと比較して表にまとめました。

 プレキャストコンクリート製品現場打ちコンクリート
品質安定した環境で製造されるため、品質
や精度が高く、天候に左右されない
施工業者や天候によって品質に
ばらつきが出る可能性がある
工期養生期間が不要、鋼製型枠を転用する
ため、工期の短縮につながります。
型枠組み立てや養生などの作業が
必要なため、工期が長くなります
施工性分割・継ぎ足しなど組立施工がやりや
すく作業の簡略化につながります。
型枠や鉄筋の作業が多く、
作業の工数が多い。
柔軟性規格外の形状やデザインには
対応しにくいです。
現場の状況に合わせて打設することが
できるため、柔軟性に優れています。
環境性規格化された寸法のため、残コン・
型枠や鉄筋のゴミが少なくなります
残コン、木製型枠、鉄筋端材など、
現場廃棄物が出る。
省力化完成品が現場に届くため、現場の
作業員不足を解消できる
型枠・鉄筋工、コンクリート・養生工
など、多くの作業員が必要

プレキャストコンクリートは大量生産や、部材の規格化によるメリットが大きい

プレキャストコンクリート製品は、コンクリート部材として以下の様な強みを持っています。

生産性が高く経済性に優れている

  • 規格化された形状や寸法であれば、工場で大量生産する方が、安定した品質で効率的に製造することができ生産性が良いと言えます。
  • 小規模工事やコンクリートの使用が少量である場合、現場施工よりもコンクリート製品を使用した方が効率的・経済的になります。

モジュール化によって施工性に優れている

  • モジュール化によって、作業の効率化や施工スピードの向上が図れます。
  • 現場でのコンクリート施工に伴うリスクを回避し、品質の安定性や信頼性を高めます。
  • シールドセグメントやインターロッキングブロック舗装など、工法の前提としてコンクリート製品が施工システムの一部となっているものもあります。

省力化によって現場の環境影響を受けづらい

  • 「積雪・暑中など気象の影響」「深海・傾斜地など厳しい立地」「道路・鉄道など施工時間の制約」など施工条件が厳しい場合、現場での作業時間の短縮や作業の簡略化により、施工環境を緩和します。
  • 特殊な環境でなくても、遠隔地などで生コンの供給が困難な場合、コンクリート製品を使用することで品質が確保できます。

木造住宅の在来工法と2×4工法の比較と似ていますね。2×4工法が、工場生産の部材を現場で組み立てる事で生産性を高めるように、プレキャスト工法も似たようなイメージで理解してください。

プレキャストコンクリートのメリット・デメリット

生コンクリートの現場打ちをプレキャストコンクリート製品に置き換える場合のメリット・デメリットとして、

プレキャストコンクリート製品のメリット
  • 日射や降雨による影響や、運搬による時間経過など、品質に影響を及ぼす要因が小さく、コンクリートの品質が安定します。
  • すでに出来上がった製品を現場に持ち込むことで、作業量を削減できるだけでなく、品質管理や工程管理も軽減でき、施工速度の向上が図れます。
  • 現場での作業量が減る事で、従来の現場作業につきものだった3K(キツイ・汚い・危険)や、現場で発生する廃棄物の量も削減できます。
プレキャストコンクリート製品のデメリット
  • すでに出来上がった部材を組み立てるため、寸法や性能をカスタマイズすることが難しく、事前の計画や調整を厳しく管理する必要がある。
  • プレキャストコンクリートは接合部が弱点になるため、計画段階で接合部を減らす工夫や、接合部の止水対策をしっかり行う必要があります。
  • 工期の短縮や省人化の効果を加味すると、条件によっては場所打ちコンクリートよりもコストが低くなる場合もあるが、製品自体の単価では、現場打ちより20%程度コストがかかる。

プレキャストコンクリート製品の製造方法

一般的なプレキャストコンクリート製品の製造方法はこのようになります。

  • 鉄筋組立て
    鉄筋を組立て、型枠内に配置します。
  • 型枠組立て
    鉄筋のズレや型枠が崩れないように留め具で組み立てます。
  • コンクリートの製造
    材料を計量し、均一に練り混ぜます。
  • 成形
    内部振動機や、振動台を用いて締固めを行います。
  • 養生
    最高温度65°Cの常圧蒸気養生を行います。
  • 脱型
    クレーンなどを使い翌日脱型します。
  • 保管
    製造業者名、製品の種類、製造年月日などを表示し、在庫置き場で保管します。

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