コンクリートのスランプ(Sl)値の基準・選定など仕様書で解説

規格

スランプとは、コンクリートのワーカビリティーを評価するもっとも手軽な値です。
ワーカビリティーは、流動性と分離抵抗性を組み合わせたものですが、スランプは主に流動性を表しています。

ワーカビリティーとは

Workability(ワーカビリティー)を日本語訳すると、加工性と訳すそうですが、コンクリート工学では作業性と訳しています。運搬・打込み・締固め・仕上げetcの作業のしやすさの事

スポンサーリンク

コンクリートのスランプとは


スランプについて科学的に説明すると、レオロジー(流動学)では、コンクリートはビンガム流体とみなす事が出来ます。

ビンガム流体とは

変形させようとする力が、形を留めようとする力を超えた時に、動き始める流体をビンガム流体という。

歯磨き粉を思い浮かべて下さい。チューブを逆さまにしても垂れませんが、チューブを握るとブニュッ出てきますよね!?これがビンガム流体です!

一般的なスランプの範囲では、スランプと降伏値はおおむね直線関係であることが分かっています。

せん断応力(変形させようとする力) と降伏値 (形を留めようとする力)の関係は、スランプ値が大きいほど降伏値が小さくなります。

また、ひずみ速度(変形速度)は粘性の影響を受けるため、粘性が小さいほどひずみ速度は大きくなります。

 これを図に書くとこのようになります。

正の切片を持った一次関係式で、スランプが大きいほど切片(降伏値)が小さく、傾き(増加速度)が大きい。スランプフローの場合、降伏値は小さいですが粘性が大きいので、図の様な線になります。

このことから、スランプを評価するには、流動性だけでなく粘性(分離抵抗性)も重要であるといえます。

スランプの規格値は、コンクリートの下がり具合を測るものですが、スランプの広がりを測ることで粘性を評価する事もできます。

F/Sとは

スランプの広がり(フロー値)をスランプの下がり(スランプ値)で割った値。Flow/Slump を略して、F/Sと表記します。

一般的なスランプの範囲(12〜21cm程度)では、

F/Sが

1.6〜1.9程度

とされています。

  • F/Sが小さいものは、粘性が大きく圧送性が良くない。
  • F/Sが大きすぎるものは、分離抵抗性が低く充てん性が良くない。

という判断が可能になります。

スランプ試験の結果だけでは分からない、「コンクリートの状態」を知ることは大事な事です。

スポンサーリンク

スランプ(Sl)値の基準・決め方とは

スランプを決める際の原則は、

スランプは作業に適したワーカビリティーを得られる値であること。
作業に適したワーカビリティー内で、できるだけ小さな値とすること

つまり、施工に支障のない範囲でなるべく硬い(スランプの小さい)生コンを使いなさいとされています。
その理由は、スランプを大きくすると、分離・収縮・耐久性で不利に働くことが多いためです。

でも、作業に適したワーカビリティーってどうやって決めるんだろう?

各種仕様書に、標準的なスランプ値が記載されているので確認しましょう

仕様書の基準

JASS5(建築学会)

基本的に特記によるとしていて、特記のない場合18cm以下を標準としています。

特記とは

特記仕様書を略して特記と言います。それに対して標準仕様書は標仕と言います。
特記とは、工事ごとの個別のルールを書いたもの。
標準仕様書は一般的なルールを書いたものに対して、特記は工事の実情に合わせて個別に指定する項目を書きます。

コンクリートの種類に応じて決められているので表にして説明します。

種類調合管理強度基準値
一般コンクリート33N/㎟未満18cm以下
33N/㎟以上21cm以下
水中コンクリート33N/㎟未満21cm以下
33N/㎟以上23cm以下
流動化コンクリート33N/㎟未満21cm以下
33N/㎟以上23cm以下
軽量コンクリート21cm以下
マスコンクリート15cm以下
遮へい用コンクリート15cm以下
高強度コンクリート45N/㎟未満21cm以下50cm以下
45N/㎟以上60 N/㎟以下23cm以下60cm以下
高流動コンクリート55cm以上65cm以下
鋼管充填コンクリート55cm以上65cm以下
住宅基礎コンクリート18cm以下

コンクリート標準示方書(土木学会)

部材ごとに鉄筋量・鉄筋間隔・打込み高さなどで細かく規定されていますので、その一部を記載します。

:壁部材の最小スランプの目安

鋼材量
(kg/㎥)
かぶり・鉄筋間隔
(mm)
締固め作業高さ(m)
3未満3以上5未満5以上
200未満100以上81015
100未満101215
200以上350未満100以上101215
100未満121215
350以上151515

:スラブ部材の最小スランプの目安

鋼材量
(kg/㎥)
鉄筋間隔
(mm)
打込み箇所の間隔締固め作業高さ(m)
3未満3以上5未満5以上
100~150100~150任意の箇所57
2~3m10
3~4m12

土木の場合、この表は打込み時のスランプの目安です。
これに圧送ロス+スランプの許容差を足したものが、受入れスランプの目標値となります。

公共建築工事標準仕様書(営繕)

特記に指定のない場合、下表を目安にします。

打込み箇所基準値
基礎・基礎梁・土間スラブ15cm
柱・梁・スラブ・壁18cm

実務では特記のない場合、営繕の目安が使われることが多いです。
基礎周りは硬めのスランプ、上部躯体は軟めのスランプを選択します。


今回は、コンクリートのスランプについて説明しました。

スランプ値の基準と選定
  • スランプ値の選定は、特記仕様書の記載を確認すること。
  • 特記に記載のない場合、各仕様書の基準を参考にすること。
  • スランプは作業に適したワーカビリティーで、なるべく硬い値を選ぶこと。
  • 部材の寸法・かぶり厚さ・鉄筋量・鉄筋間隔・打込み方法・圧送距離などを考慮してスランプ値を選定すること。

コメント

タイトルとURLをコピーしました