PCコンクリートの作り方や特徴・メリット・手順などを解説

種類

PCコンクリートとは、鋼材を使用しコンクリートにプレストレスをかけることにより、コンクリートの特徴である「引張り応力に弱い」という性質を、改善したコンクリートです。

『プレストレストコンクリート(Prestressed Concrete)』の頭文字をとって、PCコンクリート・PC構造などといいます。

この記事では、PC(プレストレストコンクリート)について、特徴・種類・工法について解説します。

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PCコンクリートの特徴は、引張り弱さを改善する

コンクリートは、圧縮力に強いが引張力には弱いという特徴を持っています。圧縮強度(圧縮力に耐える力)に対し、引張強度(引張力に耐える力)はおおよそ1/10程度しかありません。

そのため、RC構造(鉄筋コンクリート構造)の設計では、コンクリートの引張強度を無視(コンクリートの引張強度を期待しない)するのが一般的です。

硬そうにみえるコンクリートも引っ張られると壊れやすいんですよ

その弱点を改善するために、あらかじめ圧縮力を加えることで、コンクリートの引張力を補う技術が、PC(プレストレストコンクリート)です。

具体的に言うと、

PCコンクリートではあらかじめ、コンクリートに「圧縮力=縮ませる力 (-) 」を加えて縮んだ状態(-)にします。

その縮んた状態のコンクリートに「引張力=伸ばそうとする力(+)」が加わった時、縮ませる力(-)が伸ばそうとする力(+)を相殺します。

引張力と同程度の圧縮力を先に加えておくことで、引張力を圧縮力で打ち消すのが、プレストレストコンクリートです。

プレストレストコンクリート
プレ(Pre=あらかじめ)ストレスト(stressed=圧力をかけられた)コンクリートという意味。

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PC構造のメリット・デメリット

PC構造のメリット・デメリットについて、一般的なRC構造と比較したものをまとめましたので、確認してみましょう。

メリット
  • 部材断面を小さくできるため、大スパンの構造が可能
  • ひび割れ・たわみが生じにくい
  • 一時的な変形やひび割れなら、ほぼ復元する
  • 分割・継ぎ足しなど組立施工がやりやすい(プレハブ化)
デメリット
  • プレストレスを扱う高度な技術が必要
  • 大きな損傷を受けた場合の修復が、RCよりも難しい
  • 施工・使用時の変形に対する配慮が必要

プレストレストコンクリートの製造と種類

プレストレストコンクリートの製造で、コンクリートに圧縮力(ストレス)を与える材料を、緊張材(PC鋼材)と呼びます。

ストレスの導入では、緊張材を引っ張って伸ばした状態でコンクリートと固定した後、緊張材の引張りを弱めます。

すると、伸ばされた緊張材は元の長さに戻ろうとするため、緊張材の収縮力が、コンクリートに圧縮力(ストレス)を与えます。

これがプレストレストコンクリートの作り方ですが、緊張(テンション)のタイミングや緊張材の設置方法によって、いくつかの工法があります。

1.プレテンション工法とポストテンション工法

コンクリートにプレストレスを与えるタイミングに違いがあります。

  • プレテンション工法…先にテンションをかける
  • ポストテンション工法…後からテンションをかける

プレ(あらかじめ)テンション(緊張)

はじめに緊張材にテンションをかけ、型枠に固定します。そこに生コンを流し込み、緊張材とコンクリートを一体化させます。その後、緊張を緩めることでプレストレスをかける工法です

ポスト(あとから)テンション (緊張)

はじめにコンクリートを打込み硬化させます。その後、コンクリートに緊張材を定着させて、後からテンションをかけることでプレストレスをかける工法です。

緊張材を曲線に配置できるため、部材に作用する曲げモーメントに対して、より有効にプレストレスを加えることが出来ます。

2.内ケーブルと外ケーブル

緊張材の設置場所によって違いがあります。

  • 内ケーブル工法…コンクリート内部に緊張材を配置
  • 外ケーブル工法…コンクリートの外部に緊張材を配置

内ケーブル工法は、プレテンション工法・ポストテンション工法のどちらでも、外ケーブル工法は、ポストテンション工法でのみ採用されます。

プレテンション工法は、比較的寸法が小さく、工場生産される部材で採用され、ポストテンション工法は、工場生産の難しい寸法の大きい部材を、現場打ちする場合に多く採用されます。

蛇足

PCコンクリートと似た用語に、PCaコンクリート(プレキャストコンクリート)があります。

プレ(あらかじめ)キャスト(組み立てられた)コンクリートとは、コンクリート製品工場で、打設・成形した状態で現場に運ばれてくるコンクリート部材のこと。

ネットなどでも、PCとPCaが混同されて使われているため注意が必要。

工場生産されるプレストレストコンクリートをPCa・PC工法と呼び、工期の短縮や省力化、品質の安定性などのメリットがあります。

基本的に、次のように整理しておくのが良いでしょう。

  • プレテンション工法=プレキャストコンクリート(工場製品)
  • ポストテンション工法=生コンクリート(現場製作)

プレキャストコンクリート(PCa)は二次製品とも呼ばれ、工場で製品化されたものを現場に運び入れるのが一般的ですが、サイトPCaといって、建設現場の敷地内でPCaコンクリートを製作することもあります。

PC 鋼材とプレストレスの保護が重要

プレテンション工法やポストテンション工法の内ケーブル方式では、PC鋼材が、コンクリートやPCグラウトと直接付着します。

そのため、PC鋼材を腐食から保護するために、コンクリートやPCグラウトの塩化物量を厳しく管理する必要があります。

また、コンクリートに導入したプレストレスの減退(圧縮力が減ること)を抑えるために、コンクリートのクリープや乾燥収縮、PC鋼材のリラクセーションを小さくすることが求められます。

リラクセーションとは:

鋼材が時間経過により弛緩してしまい、はじめにかけた緊張力がしだい減る現象を言います。

プレストレスを導入するタイミング

コンクリートの圧縮強度が、プレストレスの導入によって受ける最大圧縮応力の1.7倍以上、さらにプレテンション工法の場合は30N/㎟以上。

そのため、部材と同条件で養生した供試体の圧縮強度の結果によって、時期を決定するのが良いとされています。

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