コンクリート構造物の外観調査

診断

コンクリート構造物は、劣化の進行に伴い表面に変状が現れることが多く、外観調査によって、変状の原因推定や進行程度・劣化の緊急性など、おおよその判断をすることができます。

外観調査では、構造物に発生したひび割れや剥離・鋼材の露出などだけでなく、全体の傾斜や沈下などの変形状況、周辺環境からくる劣化因子の推定の把握を行います。

外観調査の方法には、次のような手法があります。

  • 目視
  • 光波測量器(トータルステーション)
  • レーザー
  • デジタルカメラ

外観調査における基本的な調査項目には、表のようなものがあります。

構造物の変状調査項目
ひび割れひび割れ方向と本数
ひび割れ幅と長さ
ひび割れ周囲の浮き・剥離・段差等
変形・沈下・傾斜スケールなどによる測定
振動・音振動箇所・音源の確認
浮き・剥離・剥落
鋼材の露出・錆汁
豆板・コールドジョイント・補修跡
変色・エフロレッセンス・漏水・滞水
スケールなどによる測定
たたきによる周囲の浮き・剥離
変状位置・変状箇所数
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目視調査

目視調査では、出来る限り対象に近づき観察することが重要で、汚れなどはきれいにしてから、明るい状態で観察します。

コンクリートは複合材料であるため、変状の形態や発生原因が多岐にわたるため、構造物全体を調査する必要があります。

  • 構造的な原因…発生位置はある程度想定できる
  • 材料が原因…発生位置の推測は難しい

構造物全体の変形や沈下などは、近接して観察するよりも、全体を俯瞰して観察する方が確認しやすい。ひび割れの観察では、ハンマーによる叩きや触診を併用し、ひび割れ周辺の段差や浮き・剥離の有無を調査します。

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光波測量器(トータルステーション)

トータルステーションとは、目標に光を照射し、反射して返ってきた光を電子的に解析し距離を測る「光波距離計」と「角度測定器」を組み合わせた機器で、測量などで使用されています。

外観調査で使用するトータルステーションには、さらに「クラックゲージを内蔵」しているのが特徴で、倍率42倍の接眼レンズを用います。

光波測量器(トータルステーション)の原理と計測

レンズ越しにひび割れを目視し、内蔵されたクラックゲージとひび割れを比較することで、ひび割れ幅の測定をすることができます。

計測手順
  • レンズ内のひび割れ幅と一致するクラックゲージを選択
  • トータルステーションでひび割れまでの距離と角度を計測
  • 選んだクラックゲージの幅を計測した距離と角度によって自動補正

トータルステーション(TS)での計測データは解析処理後、CAD上で2D・3Dの図面として自動描画されます。

また、対象構造物の形状や測定環境に応じて最適な計測モードを設定する事ができます。

簡易計測TSに正対したひび割れひび割れ幅
角度補正計測TSに正対していないひび割れ
壁面モード擁壁・橋脚・法面ひび割れ幅と 構造物の形状
平面モード床板・天井
アーチモードトンネル・曲面状の構造物

計測時の注意点と精度

トータルステーションをひび割れに対して斜めに設置する場合、水平・垂直方向ともに60度以内で計測し、揺れや振動のある場所に設置することは避けます。

ひび割れ幅の計測については、「目視によるクラックゲージの値」と「トータルステーションで計測した値」で、ほぼ同じ値となります。

ひび割れの図面描画については、手書きの場合、個人差も含め18㎜~75㎜程度の誤差が生じるが、トータルステーションの場合は2~3㎜の誤差となり、高い精度を有しています。

デジタルカメル・レーザー

デジタルカメラ

レンズに投影された画像を電子的に記録するもので、画像データをRGB(赤・緑・黄色の三原色)データとして記録し、その性能は画素数が多いほど分解能が高く、ひび割れ調査では有利となります。

1600万画素のデジタルカメラで、1m×1mの表面を撮影した場合、4000×4000画素(1600万画素)となり、分解能は0.25㎜となります。

撮影したデータは、画像処理ソフトやCADソフトを使用し描画します。

レーザー

1㎜程度に細く絞ったレーザーを計測対象物に照射し、反射光を高感度光センサで検出します。ひび割れ部と健全部において、レーザーの反射光の明暗を数値化することで、ひび割れを計測できます。

レーザーによる連続走査画像検査方法の特徴として

  • 連続して広い範囲を計測できる
  • 範囲に限らず分解能が同一
  • 計測時の照明が必要ない

トンネルや道路など、形状が単純かつ連続した構造物に適していて、複雑な形状の構造物には向いていません。

まとめ

各種機器を使った外観調査は、いずれも足場設置などの省力化や連続的に広範囲を調査できるなどの利点があり、費用対効果、安全面においても優れています。

また、計測データの再現性が高く、供用時の維持管理においてひび割れや欠陥の進展を定量的に判断できることも可能となります。

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