コンクリートにおける劣化の原因は様々で、劣化が起こる時期も原因によって違います。また、使用環境によっても劣化の程度や発生状況に違いがあります。
劣化とは、元々備わっていた性能が衰え、機能低下することをいいます。
耐久性の定義は「劣化に対する抵抗性」ですが、ある劣化現象について必要な抵抗性を確保するには、その劣化のメカニズムを理解する必要があります。
この記事では、コンクリートにおける劣化の種類や内容についての全体像について解説します。
鉄筋コンクリート構造物に共通する劣化原因
地震・火災などの災害を除くと、コンクリートの劣化は、空気や水がコンクリート内部に侵入することで起こります。
つまり、劣化しやすいコンクリートとは空隙やひび割れ等が多く、外的要因を通しやすいコンクリートであると言えます。
一方、コンクリートは塑性材料であるため、現在の技術では鉄筋コンクリート構造物のひび割れをゼロにする、というのは難しいというのが実情です。
劣化に強く・耐久性の高い鉄筋コンクリート構造物にするには、
この2つが重要となります。
コンクリートの劣化原因・劣化種類のカテゴリー
コンクリートの劣化は様々な原因によって起こり、その種類も多種多様にあります。
コンクリートの劣化を専門的には「変状」と言い、
- 初期欠陥
- 経年劣化
- 構造的変状
と大きく3つのカテゴリーに分類する事が出来ます。
初期欠陥は、コンクリートの品質と施工の品質が主な要因
初期欠陥とは文字通り、コンクリートで構造物を作った初期段階(打込み時や硬化の初期)で発生する変状の事をいいます。
初期欠陥はそれ自体が問題になるというより、後々の劣化を誘発する原因になりやすい事が特徴です。
初期欠陥の多くは、コンクリートの品質(配合・製造)や施工の品質(打込み・締固め)を改善することで防げるものが多い劣化です。
豆板(ジャンカ)・内部欠陥
- 豆板(ジャンカ)
- 一ヶ所に粗骨材が多く集まってできた空隙の多い部分
- 内部欠陥
- コンクリート内部に空洞や豆板ができる事
打ち込み時の材料分離、締固め不足、型枠からのセメントペーストの漏れなどによって起こります。
コールドジョイント
打ち重ねた部分に不連続な面が生じ、コンクリートが一体化しない状態で硬化した部分。コンクリートの凝結が進み過ぎてから打ち重ねたために起こります。
表面気泡・砂すじ
- 表面気泡
- コンクリート表面に露出した気泡
- 砂すじ
- コンクリート表面にシマ状に露出した細骨材
ブリーディングが多いコンクリート、過度な締固め、速すぎる打込み速度によって起こります。
経年劣化は、時間とともにコンクリートが変質することが主な要因
経年劣化とは、コンクリートの品質が時間とともに変質していく変状の事を言います。
経年劣化の原因は複合的であることが多く、また劣化原因によっては進行性の劣化であることも多いため、劣化の特徴を見極め、原因に対処する事が大切になります。
ひび割れ・浮き・剥落
- ひび割れ
- 躯体に入った亀裂
- 浮き
- ひび割れたコンクリートが押し出された状態
- 剥落
- 押し出されたコンクリートが躯体から剥がれ落ちた状態
コンクリートのひび割れには、鉄筋(鋼材)腐食先行型とひび割れ先行型の二つがあり、進行性のひび割れ・非進行性のひび割れがあります。
ひび割れ発生の原因には、多くの要因があり、またいくつかの要因が重なっていることも多いのが特徴です。
錆汁
金属の腐食によって、コンクリート表面に発生する褐色系のシミのようなものを言い、錆汁の発生源には、以下の二つがあります。
- コンクリート表面の金物(金属)
- 金物のサビが、雨などで流されて付着したもの
- コンクリート内部の鉄筋
- 鉄筋が錆び、ひび割れなどを通じて水分とともに表面に析出したもの
錆汁の発生源がコンクリート内部の場合、鉄筋が腐食している事が濃厚なため、注意すべき変状です。
エフロレッセンス
コンクリート中の可溶成分が、水とともにコンクリート内部から表面に移動し、二酸化炭素との反応や水の蒸発によって析出することをいい、白華とも呼びます。
エフロレッセンス自体は、コンクリートへの影響は少ないが、劣化や変質の結果としてコンクリート表面に発生する事が多く注意が必要です。
すり減り(摩耗)
コンクリートの表面が摩擦・衝撃によって徐々に薄くなる現象をいいます。車両の走行や人や物の移動、水流による砂・氷・波浪の移動によって起こります。
変色(汚れ)
コンクリートの変色(汚れ)には、二通りの原因があります。
- 表面の付着物によるもの
- コンクリート自体の変色
コンクリート表面には、大気中のチリ・ほこりを栄養素として藻やカビが発生します。その付着物の死骸が炭化することが汚れの原因です。
コンクリート自体の変色は、セメント水和物が変質することによって生じます。多くは茶色や黄土色など褐色系に変色する。
変色の度合いによってはコンクリートの劣化が内部まで進行している場合があり、注意が必要です。
構造的変状は、コンクリート構造物の力学的特性が要因
構造的変状とは、設計で想定した範囲を上回る荷重や、想定外の状況(基礎地盤の変動・部材の耐荷力の不足)、また、振動や荷重を繰り返し受けることで起こる疲労など、力学的特性で生じる変状です。
変形・たわみ
鉄筋コンクリート構造物は、一時的に作用する活荷重と継続して作用する死荷重によって変形・たわみが生じます。
設計時に想定した範囲の荷重であれば、安全性の問題となる可能性は小さいですが、設計時の想定を上回る荷重や耐力不足、地盤の変動による基礎の沈下・移動があった場合などは、構造物の安全性が問題となる場合があります。
振動・疲労
コンクリートは、応力を繰り返し受けることによって疲労します。設計で想定した範囲の荷重でも、繰り返し作用することによって疲労破壊をおこします。
コンクリート構造物に作用する荷重の周期と部材の固有振動数が近い場合、共振現象が起こり、疲労劣化を助長する場合があります。
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