コンクリート構造物の劣化調査/環境作用・荷重・応答

診断

コンクリート構造物の劣化には、「構造物のおかれた環境」や「供用時に作用する荷重」などの影響が、大きく関わります。

構造物の診断においては、必要に応じて次の項目について調査を行い、劣化診断の指針としています。

  • 環境作用…コンクリート構造物に影響を及ぼす環境
  • 荷重作用…コンクリート構造物に影響を及ぼす荷重
  • 応答…荷重作用に対する振動・たわみ・変形
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環境作用

構造物の環境作用は、「それ自体が劣化要因となる場合」や「劣化の推定に関連する場合」など、診断に有益となる事が多くあります。

立地条件として問題となりやすいものには、以下の様な事例があります。

  1. 傾斜地や護岸壁に隣接している
  2. 偏土圧の影響によってひび割れや不同沈下が生じている
  3. 地震などにより建物に傾斜・沈下が生じている

1や2は、構造的な原因が主な要因と推測できるため、周辺の土地との高低差や擁壁の状態を計測する必要があります。

また、不同沈下など建物下の地盤に原因が認められた場合は、N値などの地盤の物性値・基礎の種別や構造を確認する必要があります。

それに対して、構造物の経年劣化に影響を及ぼす環境作用としては、次の事が挙げられます。

  • 気象条件
  • 土壌条件
  • 供給塩化物量
  • 水の供給量

気象条件が構造物に及ぼす影響

コンクリートの劣化は気象による影響を大きく受けます。気象作用の違いが劣化の原因の違いや進行速度の違いを生み出します。

気温凍害・ひび割れ・塩害・中性化・化学的侵食・アルカリシリカ反応
湿度中性化・塩害・アルカリシリカ反応・ひび割れ
降雨中性化・塩害・ひび割れ・アルカリシリカ反応
風速・風向ひび割れ・塩害
日射量凍害・ひび割れ
コンクリートの劣化に関係する主な気象条件

表の他にも、中性化では二酸化炭素濃度・凍害では凍結融解回数が該当します。

土壌条件が構造物に及ぼす影響

コンクリート構造物が接する地盤から、水やその他の物質が供給される場合があります。特に建物基礎や地中構造物の場合は、供給状態を把握する必要があります。

含水率・地下水位凍害・アルカリシリカ反応
酸性物質の種類と量中性化
侵食物質種類と量化学的侵食
アルカリ供給の有・無アルカリシリカ反応
コンクリートの劣化に関係する主な土壌条件

供給塩化物量が構造物に及ぼす影響

供給塩化物とは、海水や潮風・凍結防止剤などによってコンクリート構造物にもたらされる塩化物を言います。

塩害においては、塩化物が要因となるのはもちろん、アルカリシリカ反応においても、塩化ナトリウムによって反応が促進されます。

海水・飛沫塩害・アルカリシリカ反応
飛来塩化物量塩害・アルカリシリカ反応
凍結防止剤塩害・アルカリシリカ反応
コンクリートの劣化に関係する主な供給塩化物量

水の供給量が構造物に及ぼす影響

雨がかりとは、降雨によるコンクリートの濡れ具合をいいます。コンクリートの含水率は、酸素透過性に関連し、また水の供給によって変状が促進される場合もあります。

化学的侵食では、水(腐食溶液)の種類・濃度・供給状況が、変状に大きく関係しています。

雨がかり凍害・塩害・アルカリシリカ反応・中性化
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荷重作用・応答

構造物は、想定される荷重に耐えうる強度で設計されるため、荷重作用による劣化=構造的欠陥は通常はありません。しかし「設計した当初の条件や用途」と違う状況の場合、荷重作用が劣化要因となります。

・設備機器の重量や用途変更による積載荷重の増加
・車両などの走行条件の変更

荷重作用の調査

構造物の荷重作用を計測する方法として、コンクリート橋における調査では、次の方法があります。

  • 直接計量方式
    • 荷重を読み取るセンサーを路面上に設置し、センサーを通過した車輌の重量を直接計測する方法です。センサーには、ひずみ式ロードセルや可搬式マットなどが用いられます。
  • 間接計量方式
    • 床板・桁の「たわみ」や「ひずみ」を計測し、荷重を推定する方法です。橋梁の曲げ剛性が分かっていて、たわみ量との相関が高いことが必要です。
  • 交通流調査方式
    • 目視やビデオによって走行車両を集計し、車種ごとの車両重量からおおよその荷重を推定する方法です。

直接方式・間接方式においても、交通流調査を併用して車両走行位置や車種の判別を行います。

応答の調査

構造物に荷重が加わると、荷重の大きさに応答してたわみ・変形振動を起こします。コンクリート構造物は、変位することが通常であり、設計荷重以内の荷重では弾性体に近い挙動をとります。

設計時に想定した以上の変位が起こっている場合、構造物の耐力に問題があると推定できます。

構造物のたわみ・変形を変位(置が化する)といいます。

部材断面の剛性や境界条件によって、荷重に対する応答としてたわみや変形が発生しますが、力学上の仮定が正しければ、たわみや変形は計算によって求める事ができます。

計算値と実測値に有意差がある場合、「設計時の仮定」と「現状の構造物」に差が生じている事が分かるため、劣化の程度や安全性の評価を行うことが可能となります。

実構造物による試験

既設構造物の検査法として、構造物に荷重・外力を加えて、その変位を測定する手法があります。

実構造物の載荷試験

構造物に荷重を加え、その時のたわみ・変形を計測することで、計算値と実測値を比較します。

荷重には車両・カウンターウェイト・油圧ジャッキなどを使用し、あらかじめ計算で設定した荷重と同じ重量又は外力を、計算時に設定した位置に加えます。

部材の変形は、接触式の変位計やひずみゲージ、非接触式のデジタルカメラやレーザーで計測します。

「計算で設定した位置」に「計算で設定した荷重」を加える事で、計算値と実測値の差を捉えます。

安全性の観点から、荷重の大きさは設計で想定された範囲内としますが、構造物の状況によってはそれよりも小さい値でしか確認できません。そのため、許容応力度レベル以下の限られた範囲での計測となるため、構造物の終局時の耐力・安全性などの確認はできません。

注意点

構造物の出来形や材料特性のバラつき、設計モデルの仮定と実物の違いなどにより、構造物に変状が無くても差が生じることがあり、それらを考慮した上で、計算と実測の差が有意であるかを考察する必要があります。

また、載荷試験による変形の計測では、死荷重や持続荷重による影響を把握することは難しく、荷重による変形のみを捉えています。

実構造物の振動試験

  • 強制振動による方法
  • 自由振動による方法

振動試験では、剛性と固有振動数の特性をもとに試験を行います。

  • 部材剛性が高い…固有振動数が高い
  • 部材剛性が低い…固有振動数が低い

剛性とは固さ(変形のしづらさ)であり、固有振動数とは揺れ幅の大きさと理解してください。

振動に関係する部の剛性は、曲げ剛性せん断剛性の二つですが、振動試験で発生させる変位・たわみは、曲げ変形が支配的であるため、曲げ剛性のみを対象として試験を行います。

曲げ剛性は、材料特性であるヤング係数と断面二次モーメントによって定まります。

  • 材料であるコンクリートの強度不足や材料の不良⇒ヤング係数の低下
  • 部材の劣化による断面減少・ひび割れによる損傷⇒断面二次モーメントの低下

その結果として曲げ剛性が低下し、部材の固有振動数が低下することになります。

衝撃振動試験

衝撃振動試験では曲げ剛性の低下に着目するため、衝撃を与える方向は部材の揺れやすい方向・曲げ方向とします。

部材にハンマーや重錘などで衝撃を与え、振動を感知するセンサーで計測します。この時、打撃による表面波や反射波などの高い振動数は考慮しないものとします。

計測は、打撃以外のノイズの影響を下げるため複数回繰り返し、波形の重ね合わせ処理(スタッキング)を行い、スタッキング処理後、フーリエスペクトル解析にかけ、部材の固有振動数と振動モードを特定します。

たわみ・変形の調査

コンクリート構造物の変形を計測する方法として、非接触型で遠隔操作が可能なデジタルカメラやレーザーを用いた手法があります。

デジタルカメラによる変位計測は以下に大別でき、二次元変位計測が一般的です。

  • 二次元変位計測(カメラ固定による定点計測)
  • 三次元変位計測(カメラを固定しない写真測量)

二次元変位計測は、固定したカメラで定点撮影し、基準画像と変位画像を比較することで変位量を求めます。基準画像と変位画像の差を確認する方法には、次のような方法があります。

  • ターゲット画像計測(丸や四角の目印をもとにする)
  • ノンターゲット画像マッチング(目印をつけず、対象物の角や凹凸をもとにする)

計測精度は以下の条件によるが、撮影距離が20m程度なら、0.1㎜以内で計測可能です。

  • カメラの分解能(画素数)
  • 気象条件
  • 周辺環境

レーザーによる変位計測では、レーザーによる距離測定によって、変位計測が可能です。

レーザーによる距離測定の原理は、レーザー光線のズレを測定する事です。

レーザーをスプリッタで分割し、2つのレーザー光線をつくります。片方を対象に照射し、跳ね返ってきた光と、もう片方の光の位相(波のズレ)を比較します。

レーザーによる計測手順
  • 対象へターゲット設置

    対象となる測定位置にレーザーを反射するための反射ターゲットを設置します

  • レーザー距離計の設置

    レーザー距離計を見通しの良い場所に設置・設定を行います

  • 照射角の調整・登録

    角度の調整を行い、基準となる初期値を設定します

  • 測定

    自動測定が始まり、測定結果をパソコンでグラフ化します

計測精度は気候や機材の種類によりますが、撮影距離が60m程度なら、±1.5㎜以内の精度で計測可能です。レーザーによる計測は、計測面がガラスや水面の場合、光の乱反射や透過が起こるため測定できません。

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