コンクリートの塩害のメカニズムとは?

診断

鉄筋コンクリート構造物のひび割れには、発生時期とひび割れのパターン(形状)に固有の特徴があります。

ひび割れが認められた場合、発生した時期とひび割れのパターンによって発生原因を推定し、的確な対処をすることが重要となります。

鉄筋コンクリート構造物のひび割れは、原因別に以下の分類となります。

  • 鉄筋腐食が原因のひび割れ
  • コンクリートの劣化が原因のひび割れ
  • コンクリートの性質・施工不良によるひび割れ(初期ひび割れ)

このうち「鉄筋腐食が原因のひび割れ」の原因は次のとおりです。

  1. 中性化
  2. 塩害

1.中性化について、鉄筋の腐食でコンクリートがひび割れるメカニズムについては、こちらの記事で詳しく説明しています。

今回の記事では、2.塩害について解説します。

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コンクリートの塩害とは

コンクリート中の塩化物イオンによって、鉄筋の腐食が促進される現象を言います。

鉄筋腐食によるサビ(酸化鉄)の体積膨張によって、コンクリートのひび割れや剥離・剥落、鉄筋の断面現象による構造耐力の低下などを招きます。

塩害による鉄筋腐食のイメージ
  • 潜伏期

    鉄筋の表面には不動態被膜があり、塩化物イオンから保護されている

  • 進展期

    不動態被膜が塩化物イオンによって破壊され、鉄筋の腐食が開始する

  • 加速期

    サビによる膨張圧でコンクリートのひび割れが増加し、さらに腐食が早まる

  • 劣化期

    コンクリートの剥落や鉄筋腐食による断面減少によって、構造耐力が衰える

イオン濃度や電気的ゆらぎによって、不動態被膜表面に塩化物イオンが集中します。塩化物イオン濃度が高くなると、鉄イオンと塩化物イオンが反応し、塩化鉄を生成します。

生成された塩化鉄は、不動態被膜を突き破るように次第に内部へと進展していき、不導体被膜に穴が開けられます。

不動態被膜が破られた箇所において、アノード・カソード反応が起こり、水酸化鉄(Fe(OH)2)が生成され、水と酸素と反応し、鉄筋が腐食します。

腐食によるひび割れによって、酸素・水分・塩分の供給が促進され、腐食が更に進行し、コンクリートの剥落・鉄筋の断面減少による耐荷力の低下を招きます。

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塩化物イオンが不動態被膜を破壊する

不動態被膜の破壊は、コンクリート内部の細孔溶液中の塩化物イオン濃度が、鉄筋の腐食に必要な濃度以上となり起こるため、塩化物イオンの侵入と拡散が問題となります。

コンクリートの塩分(塩化物イオン)には、

  • 内在塩分
    • コンクリート自体の塩分
  • 外来塩分(飛来塩分)
    • 海水や凍結防止剤などの環境による塩分

があり、鉄筋付近の塩化物イオン量が1.2~2.5㎏/㎥になると腐食が開始するとされています。

コンクリート内部の塩分は3種類の形態で存在し、塩分の40~50%は固定・吸着された状態のため拡散せず、残りの半分程度が細孔溶液(内部の水)内を移動しながら内部へと拡散します。

コンクリート内部の塩化物イオン
  • コンクリート内部の水に溶け、溶液の状態
  • フリーデル氏塩として、固定化された状態
  • セメント水和物に吸着された状態

塩化物イオン濃度が高くなった不動態被膜付近では、鉄イオンと塩化物イオンの反応により塩化鉄が生成され、不導体被膜を破ります。

不動態被膜を失った鉄筋表面では、酸素と水の供給により鉄筋に腐食が発生します。

塩化物イオンの濃縮には中性化の影響が大きい

コンクリートに中性化が起こると、フリーデル氏塩(固定化・吸着された塩化物)が溶液中に溶け出し、塩化物イオン濃度の平衡を保つため、中性化していない内部へと塩化物イオンが移動していきます。

これにより、塩化物イオンの絶対量が変わらなくても、内部の塩化物イオン濃度が段々高くなっていきます。外部からの塩化物イオンの供給がある場合は、さらに塩化物イオンの内部への移動スピードが速くなります。

塩害による鉄筋腐食に必要な条件を化学的に見てみよう

鉄筋腐食は、水と酸素が鉄と反応し水酸化鉄が生成されることで起こります。

鋼材表面の不動態被膜が破壊されると、被膜のない部分(腐食部)と被膜で覆われた部分(健全部)の間で腐食電流が流れます。

これをアノード・カソード反応といい、鉄筋が溶液中の水・酸素と反応し水酸鉄(Fe(OH)2)を生成します。

アノード・カソード反応
  • 被膜のある部分
    • アノード(陽極)部となり鉄イオンFe2+を放出する(+側)
  • 被膜のない部分
    • カソード(陰極)部となり2OHを生成する(-側)

この反応には、発生している場所によって二通りの反応があります

  • ミクロセル腐食…鉄筋の同位置で起こる腐食
    • 腐食電流が小さく、比較的ゆっくりとした速度で腐食が進行する
  • マクロセル腐食…鉄筋の離れた場所で起こる腐食
    • 腐食電流が大きく、ミクロセルより速い速度で腐食が進行する

鉄筋コンクリートの塩害で問題となるのは、マクロセルによる腐食です。

マクロセルによる腐食の進行は、主に3つの要素に影響を受けます。

  • 塩化物イオン濃度
  • 酸素の供給量
  • コンクリートの含水率 (電気抵抗)

塩化物イオン濃度

コンクリート中の塩化物イオンは不導体被膜を破壊する以外にも、アノード部の電位を小さくするため、腐食の起こりやすさと関係しています。

酸素の供給量

カソード部は酸素の供給量の影響を受け、酸素が多いほど大きな電流が流れます。

コンクリートの含水率 (電気抵抗)

マクロセルの場合、コンクリートを介して腐食電流が流れるため、コンクリートの電気抵抗が小さいほど大きな電流が流れます。電気抵抗は含水率によって変化し、含水率が高いほど抵抗が小さくなり、大きな電流が流れます。

また、コンクリート内部への酸素の拡散にも、含水率が影響を及ぼしています。含水率が高いほど、酸素の拡散が遅くなります。

ここまでの整理
  • 塩化物イオンの働き
    • 鉄筋の不動態被膜を破壊
    • 鉄筋の腐食しやすさに関係…多いほど腐食しやすくする
  • 酸素
    • カソード部で水酸化イオンを生成
    • 腐食電流の大きさに関係…多いほど大きな電流を流す
  • コンクリートの含水率
    • 腐食電流の流れに関係…濡れているほど大きな電流を流す
    • 酸素の拡散に関係…濡れているほど酸素が拡散しない

例えば海洋構造物では、常時海中にある部分は塩化物イオン濃度の高いが、鉄筋の腐食は進行が遅いことが分かっています。これは、海中では酸素の供給量が少なく、腐食電流がきわめて小さいことが理由です。

塩化物イオンが鉄筋の腐食環境を作り、酸素の供給量はコンクリートの含水率によって変わり、酸素量により腐食電流の大きさが決まります。

塩化物イオンが鉄筋の腐食環境を作り、酸素の供給量はコンクリートの含水率によって変わり、酸素量により腐食電流の大きさが決まります。

鉄筋の腐食により劣化のスピードが加速する

塩害によって鉄筋の腐食が進むと、サビの膨張圧によって周囲のコンクリートにひび割れが発生します。

ひび割れによって、酸素・水・塩化物イオンの供給がさらに進むため、腐食が進行します。

腐食がひび割れを作り、ひび割れが更なる腐食を助長するというスパイラルが発生し、加速度的に劣化が進んでいきます。

腐食によって鉄筋の断面が減少し、コンクリートもひび割れの増加によって剥離・剥落すると、耐荷力が低下し構造安全性が不十分となります。

また、コンクリート自体の強度は、塩害によって特に変化するものではありません。鉄筋も腐食によって性質が変化するのではなく、腐食部分が弱点となるためヤング係数や伸びが低下するとされています


塩害による鉄筋腐食について、コンクリートに含まれる塩化物量の測定方法について、鉄筋の腐食状況についてはこちらの記事で説明しています。

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