硬化コンクリートのSEM・EPMAによる分析方法 

診断

コンクリートの診断において、微細構造や組織分析が劣化診断の推定に対する根拠となります。

  • 化学成分の分析
  • 水和生成物の観察
  • 内部空隙の形態

コンクリートの表面組織の状況や含まれる化学成分を分析する機器として、「走査型電子顕微鏡(SEM)」「電子線マイクロアナライザ(EPMA)」があり、それぞれ異なる目的と機能があります。

今回の記事では、コンクリートの分析で、表面組織の状況や含まれる化学成分を特定する調査方法とその装置について解説します。

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コンクリートの化学分析装置と原理

コンクリートの表面組織の状況や含まれる化学成分の分析で使用する装置には、以下の2つの装置があります。どちらもコンクリート表面に電子線を照射し、跳ね返ってきた信号を解析する装置になります。

  • 走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope, SEM)
    • 物質の表面形状を観察する顕微鏡として開発され、付属の機能として元素を分析することも可能です。
  • 電子線マイクロアナライザ(Electron Probe Microanalyzer, EPMA)
    • 物質の定性・定量を行う装置として開発され、付属の機能として、ある程度の倍率で表面観察をすることも可能です。

SEMでは試料の表面に電子ビームを照射し、その反射や散乱される電子を検出して画像を生成します。これにより、試料の表面の形状や粗さ、微細な構造を観察することができます。

EPMAでは電子線を試料表面に照射し、その後のX線やバックスカッター電子などの放射線を測定します。これにより、試料中の元素や化合物の存在や濃度を分析することができます。

走査型電子顕微鏡(SEM)は、表面組織の状況や構造を観察するために使用され、電子線マイクロアナライザ(EPMA)は、化学成分の特定や定量を行うために使用するのが基本的な用途となります。両者の結果を組み合わせることで、より詳細な試料の特性を把握することが可能です。

元素分析の原理

物質を同定するための手法の一つとして特性X線を使用する方法があります。コンクリートの化学分析で使用する装置は、この特定X線を利用しています。

試料に対し電子ビームを照射すると、原子内で電子の励起が起こります。その時放出される電磁波(特性X線)は、元素ごとに固有のエネルギー・波長を有しているため、このX線を観察・解析することで元素を特定することができます。

特性X線を分析する方法には、対象とする特性値によって次の分析方法があります。

  • エネルギー分散型X線分析(EDS)
    • 半導体検出器を用いて特性X線のエネルギーから、各元素を選別する
  • 波長分散型X線分析(WDS)
    • 分光結晶を用いて特性X線の波長から、各元素を選別する

また、コンクリートの分析では一般的に以下の組合せで分析を行います。

  • 走査型電子顕微鏡(SEM)…エネルギー分散型X線分析(EDS)
  • 電子線マイクロアナライザ(EPMA)…波長分散型X線分析(WDS)
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SEM及びEPMAの分析の特徴(メリット・デメリット)

分析装置の違いによってそれぞれにメリット・デメリットがあります。

エネルギー分散型X線分析(EDS)は、装置が小型かつ短時間で計測できる、一度に多くの元素を分析できるのがメリットになります。

波長分散型X線分析(WDS)は、分解能が高く、微量の元素も解析することができる、ノイズが小さいことがメリットです。

エネルギー分散型X線分析(EDS)は、分解能は波長分散型X線分析(WDS)より劣るため、微量の元素は解析できない、ノイズが大きいなどのデメリットがあります。

波長分散型X線分析(WDS)は、装置が大型かつ計測に時間がかかる、一度に複数の元素を分析できないなどのデメリットがあります。

両者の検出限界を簡単に説明すると、エネルギー分散型X線分析(EDS)が0.1%程度であるのに対して、波長分散型X線分析(WDS)は2桁小さい0.001%程度と言われています。

走査型電子顕微鏡(SEM)

顕微鏡として開発された装置で微細構造観察がメイン。10万倍を超す高倍率で高精細な観察が可能です。

組成物の形状や表面の微細構造などを観察し、エネルギー分散型X線分析(EDS)によって、組成物を同定するような使い方をします。

走査型電子顕微鏡(SEM)を使用した調査
  • 試料採取

    組織状況や結晶構造を観察することが目的のため、試料は研磨などせず凹凸のままとします。

  • 蒸着

    コンクリートは絶縁体のため、電子ビームの照射によって電気の帯電(チャージアップ)が起こります。これを避けるため、サンプル表面に金属を蒸着させます。

  • 装置へ設置

    試料台にサンプルを載せて位置と角度を調整し、両面テープなどで固定します。蒸着材料と試料台を導通テープ等で導通させます。

  • 顕微鏡観察

    アルカリシリカゲルの分析や化学的浸食による析出物の分析、空隙や水和生成物の観察など

蒸着とは、素材表面に金属などを膜状に付着させる表面処理方法です。特徴として、加工スピードが速く高品質であること、樹脂や非金属など幅広い素材に適用できることなどがあります。

走査型電子顕微鏡(SEM)観察における注意点
  • 観察対象の領域に応じて、電子ビームの加速電圧・電流、画像倍率を選択し、焦点調整やコントラスト調整が必要
  • 電子ビームにより試料に帯電(チャージアップ)が起こり、画像のコントラストが低下する可能性があるため、蒸着及び導通が必要
  • SEMで観察した画像は試料の表面だけを観察するため、内部の情報は得られません。したがって、SEMの結果を他の観察方法と組み合わせて総合的に解釈することが必要
電子線マイクロアナライザ(EPMA)

X線分析をメインに開発された装置で検出器の分解能が高く、ppmオーダーの微量成分の定量分析などを行うことができます。

特定元素の濃度分布の把握など、微量かつ広域に分析する場合に使用され、汎用SEM程度の表面組織の観察も可能です。

分解能の高さを活かして、微量元素の同定分析や濃度分布測定のための定量マッピング分析、広域(200㎜×200㎜)マッピング分析に向いています。

EPMAの特徴である広域マッピング分析(面分析)の調査例について説明します。電子顕微鏡としてEPMAを用いる場合は、SEMの試料準備と同等と考えてください。

電子線マイクロアナライザ(EPMA)を使用した調査
  • ラベル
    試料採取

    面分析では、試料表面の凹凸が分析結果に大きく影響します。後工程を効率的に行うために、試料の採取時点から表面の平坦性に注意が必要です。

  • ラベル
    試料調整(カッティング・研磨)

    精密カッターを使用し平坦にカットしたのち研磨によって鏡面仕上げをします。研磨作業では、水溶性の元素が溶脱するのを防ぐため、水の使用は避けます。

  • ラベル
    洗浄および乾燥

    超音波洗浄機を使用し、研磨時に使用した研磨剤・潤滑剤を洗浄します。その後、真空デシケータ内で乾燥・保管します。

  • ラベル
    蒸着

    SEM同様にチャージアップを防ぐため蒸着作業を行います。

  • ラベル
    装置へ設置

    サンプルに対して電子線が鉛直に当たるように置き、蒸着材料と試料台を導通テープ等で導通させます。

  • ラベル
    EPMA分析

    元素量の大小を色表示によって表現される(例:濃度の高いものから、白→赤→黄色→緑→青など)

電子線マイクロアナライザ(EPMA)分析における注意点
  • 機器の移動スピードと分析対象となる元素の量に応じて電流を適宜選定する
  • 試料の凹凸や研磨面の不均一などが、分析結果に影響する
  • 元素の種類・組み合わせにもよるが、同じ面を何度か分析する必要があり、時間を要する
  • 電子ビームにより試料に帯電(チャージアップ)が起こるため、蒸着及び導通が必要
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