コンクリートの変状(劣化)は、発生時期や原因によって、大きく分けて以下の様になります
- 初期欠陥
- 経年劣化
- 構造的変状
その中で初期欠陥とは、コンクリートを型枠に打込んでまもなく、または打込みに原因があり起こる欠陥=施工不良ともいえる事象を言います。
現代のコンクリート構造物は、強度だけでなく耐久性を考慮した設計のもと施工されているため、充分な耐用年数を持っています。
しかし、施工の不具合による初期欠陥が発生した場合、設計時に想定した耐久性が保たれないため、耐用年数に劣る建物となってしまいます。
構造物に発生した初期欠陥は、すぐに対処すべき欠陥となります。
この記事では、コンクリート構造物に発生する初期欠陥=施工不良について、初期欠陥の種類や内容、発生原因や防止方法、補修方法などについて解説します。
1.豆板(ジャンカ)・内部欠陥とはどんな劣化?
豆板とは、コンクリート表面のある一部において、粗骨材が多く集まってできた空隙の多い不良部分を言います。
豆板は、一般的にはジャンカ・あばたと呼ばれたりもします。
豆板部分は、二酸化炭素や水を透しやすく、中性化の抑制効果をほとんど示しません。鋼材付近に豆板がある場合は、早くから鋼材腐食が始まるため、早急に補修をする必要があります。
内部欠陥とは、コンクリートの表面ではなく、コンクリート内部に豆板や空洞が生じる事を言います。
コンクリートの内部に限らず、コンクリート表面と仕上げ材(モルタルやタイル)との境目に生じた空隙なども該当します。
豆板(ジャンカ)・内部欠陥がおこる原因
打ち込み時の材料分離、締固め不足、型枠下端からのセメントペーストの漏れ、などによって発生します。豆板が発生しやすい場所として次の様な箇所が挙げられます。
- 窓などの開口部の下部
- 配管や設備の金物などの下部
- 部材の薄い壁・階高の高い柱
- 鉄骨フランジの下端
- 壁付きの階段
豆板は、コンクリートを打ち込みにくい・締固めしにくい場所で出来やすく、コンクリートの落下高さが高くなると材料分離が起こり、豆板が発生しやすくなります。
豆板(ジャンカ)・内部欠陥を防止する方法・対策
施工不良が主な原因であるため、作業や確認を念入りに行うことが基本となります。
- 良好なワーカビリティの配合とする
- 材料分離を生じないように打ち込む
- 締固め・叩きなどでしっかり充填させる
- 型枠の精度・漏れに気を付ける
豆板(ジャンカ)・内部欠陥の補修方法
豆板が発生した場合は、スケールなどで測定し面積を求め、ノギスなどで深さを測定します。さらに、ハンマーで豆板部分を叩き、粗骨材の結合力を調べます。
豆板は「欠陥の深さと粗骨材の結合力」によって不良の程度が判断できるため、ノギスで測った深さと粗骨材の結合力を考慮して、補修方法を選定します。
- 深さが浅く粗骨材の結合力が強い場合
- 表面にポリマーセメントモルタルを塗布する
- 深さが深く、粗骨材の結合力が弱い場合
- 不良部分をはつり取った後、モルタルやコンクリートで充填する
発生した豆板の面積と深さにもよりますが、実質的にかぶりが少なくなるため、耐力の低下よりも、耐久性の低下を招きます。
2.コールドジョイントとはどんな劣化?
「先に打ち込んだコンクリート」と「後から打ち重ねたコンクリート」が一体化しない状態で硬化し、不連続な面が生じることを言います。
コールドジョイント部はひび割れが生じていることが多く、強度・耐久性・水密性の低下につながるため、補修をする必要があります。
コールドジョイントがおこる原因
一般に、壁などの高さ方向に長い部材は、コンクリートを一度で打込まず、複数に分けて上まで打込んでいきます、それを「コンクリートを打ち重ねる」と呼びます。
コールドジョイントは、打ち重ね時に時間が経ちすぎてしまい、先に打ったコンクリートと後から上に重ねたコンクリートが一体化しないことで起こります。
先に打ったコンクリートの凝結程度が原因で、次の要因が関係しています。
コールドジョイントを防止する方法・対策
コンクリートの打込みを中断せず連続して打込むこと、先に打込まれたコンクリートと一体になるように締固めをすることが必要です。
各種仕様書ではコールドジョイント防止のため、運搬時間と打重ね時間間隔について外気温を基準として、時間の限度を規定しています。
JASS 5(建築) | 標準示方書(土木) | |||
外気温 | 25℃未満 | 25℃以上 | 25℃以下 | 25℃越え |
製造から打込み完了まで | 120分 | 90分 | 2.0時間 | 1.5時間 |
打重ね時間間隔 | 150分 | 120分 | 2.5時間 | 2.0時間 |
コンクリートの製造時間から4時間程度を打重ね時間の限度として施工計画を立てなければなりません。
コールドジョイントの補修方法
コールドジョイント部はコンクリート自体が弱くひび割れていることが多く、耐力・耐久性の低下を招く原因となります。
コールドジョイントが発生した部分を観察し、色の違いやひび割れの有無などで不具合の程度を確認し、補修方法を選定します。
- 色違いがある程度の軽微な場合
- 当該部にポリマーセメントペーストを塗る
- はっきりと縁切れが確認できる場合
- 当該部をはつり取り、ポリマーセメントモルタルなどで充填する
コールドジョイントは強度の低下・耐久性の低下を招きます。水密性が低下し劣化因子が浸入しやすく、中性化・塩害・化学的侵食などの劣化要因となります。
3.表面気泡・砂すじとはどんな劣化?
表面気泡とは、打込み時に巻き込んだ空気が、コンクリート表面に残ったまま硬化し、表面に露出した気泡のことを言います。
表面気泡は、美観上の問題や、表層部分がポーラスな組織となるため、強度の低下や水密性の低下を招きます。
砂すじとは、コンクリート表面に、細骨材(砂)が縞状に露出したものを言います。
主に美観上問題となるが、砂すじ部分は脆弱なため、水や空気などの劣化因子が浸入しやすくなります。
表面気泡・砂すじがおこる原因
表面気泡は、型枠面が傾斜している部分で発生しやすく、スランプの大きい場合や、コンクリートの凝結が早すぎる場合でも発生しやすい。
砂すじは、コンクリートのブリーディング水が原因であるため、スランプの大きい場合や過度な締固めをした場合、打ち重ね時のブリーディング水を除去しなかった場合などに発生します。
表面気泡・砂すじを防止する方法・対策
表面気泡は、打込み速度や締固めに注意することや、型枠に空気孔を設けるなど。透水型枠や吸水型枠を使用し、余剰水や気泡を排出することで防止できます。
砂すじも表面気泡と同様に、打込み速度や締固めに注意することや透水型枠の使用が有効です。
表面気泡・砂すじの補修方法
表面気泡・砂すじとも美観上問題となる場合があるため、
- 表面気泡の場合
- ポリマーセメントペースト・モルタルによって気泡を充填する
- 砂すじ
- 砂すじ部分を削り取り、ポリマーセメントペーストなどを塗布する
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