コンクリートの配合には、標準配合=計画配合とは別に、現場配合=指示配合があります。
標準配合が一定なのに対して、現場配合は製造するたびに変わっていきます。
今回の記事では、標準配合から現場配合を算出する計算方法について説明します。
現場配合とは、標準配合を計量値へ変換した配合のこと
標準配合とは、生コン1㎥を作る上で必要な各材料の量を、重さで表したものです。
生コンに使われる材料は、簡単に言うと
の4種類ですが、材料には物性の幅(バラつき)があります。
そのため標準配合通りに材料を計量しても、一定品質の生コンが製造できるとは限りません。そこで、標準配合を作成した時の材料の状態を、再現することが必要となります。
材料の状態を再現するとは、材料を加工することではありません。生コンはとても多く材料を使用するため、材料を加工することは現実的ではありません。
材料の状態を再現するには標準配合の単位量を補正し、一定の品質になるように材料の量や割合を調整します。
標準配合を補正した後の配合を現場配合と呼び、現場配合の値を用いて材料の計量指示を行います。
そのため、現場配合の事を指示配合と呼ぶこともあります。
現場配合の手順は、材料のバラつきと量を計算すること
まずは、現場配合計算の流れとそのポイントから見てみましょう。
- step1骨材の過大粒・過小粒の補正
細骨材と粗骨材の粒のバランスを整える
- step2容積保証の補正
計量誤差を考慮してあらかじめ量を増やす
- step3骨材の表面水率の補正
骨材に含まれる水を計算する
- step4容量変換の補正
練混ぜ量に合わせて計量値を計算する
現場配合の補正項目は、ここで説明するものだけではありません。今回は、一般的に補正されている項目について解説しています。
他にも以下の様な項目などがあります。
また骨材の過大粒・過小粒の補正は、5mm以下を細骨材と設定した標準配合の場合の補正項目であり、容積保証も標準配合であらかじめ補正した配合としている場合もあります。
現場配合の計算は、標準配合の設定条件によって補正項目が変わるということを覚えてください。
それでは、表の標準配合から現場配合を算出する計算の流れを説明します。
配合表
セメント | 水 | 細骨材1 | 細骨材2 | 粗骨材1 | 混和剤 |
285 | 180 | 510 | 340 | 920 | 2.90 |
現場配合計算の過程とポイント
では、step1から計算過程を解説していきます。
骨材の過大粒・過小粒の補正
骨材の過大粒・過少粒補正とは、粒の量を揃えるために行います。
粒の大きさを基準にして、
- 5㎜より大きいものを粗骨材
- 5㎜以下を細骨材
として補正します。
現在使っている材料には、砂利には若干の5㎜以下の粒が混ざっていて、砂にも若干5㎜より大きい粒が混ざっているという状態です。
互いに混ざっている「大きすぎる粒と小さすぎる粒=過大粒と過少粒」の量を足し引きすることで、骨材全体の粒のバランスを揃えることを、骨材の過大粒・過少粒補正と言います。
- 細骨材1:細骨材2=60%:40%
- 細骨材1の過大粒a1=4%
- 細骨材2の過大粒a2=2%
- 粗骨材1の過小粒b=4%
S’=
=
=
=
=
=
S1‘=
=
S2‘=
=
G1‘=
=
=
=
100×(S1+S2)-b×(S1+S2+G1)/100-(a1+a2+b)
100×(510+340)-4×(510+340+920)/100-(4+2+4)
(85000-7080)/90
865.78
865.78-850(S1+S2)
15.78
15.78×60%+S1(510)
519.468
15.78×40%+S2(340)
346.312
100×G1-(a1+a2)×(S1+S2+G1)/100-(a1+a2+b)
100×(920)-6×(510+340+920)/100-(4+2+4)
92000-10620/90
904.22
(S1+S2+G1)=(510+340+920)=1770
(S1‘+S2‘+G1‘)=(519.468+346.312+904.22)=1770
補正前と後で、骨材の全体量は同じです。全体量は変えずに粒のバランスを整えています。
過大粒・過少粒補正後
セメント | 水 | 細骨材1 | 細骨材2 | 粗骨材1 | 混和剤 |
285 | 180 | 519.468 | 346.312 | 904.22 | 2.90 |
容積保証の補正
生コンは容積=容量で取引されるものですが、容積保証とは、その取引数量を下回らない(容積が少ない)ために行うものです。
生コンの製造には計量誤差が認められていて、標準配合ピッタリを計量目標とすると、計量誤差によっては生コンの容積が足りないという事が起きてしまいます。
そのため、注文数量に係数をかけて計量目標値を増やす事で、容積不足になる事を防いでいます。
容積保証係数1.5%と設定し、1㎥に対して1.5%の割増し(増量)を行う。
C=
=
W=
=
S1=
=
S2=
=
G1=
=
AD=
=
285×1.015%
289.275
180×1.015%
182.7
519.468×1.015%
527.26002
346.312×1.015%
351.50668
904.22×1.015%
917.7833
2.90×1.015%
2.9435
容積保証後
セメント | 水 | 細骨材1 | 細骨材2 | 粗骨材1 | 混和剤 |
289.275 | 182.7 | 527.26002 | 351.50668 | 917.7833 | 2.9435 |
骨材の表面水率の補正
骨材の表面水率とは、骨材に付着した水分を補正することです。
コンクリートの配合は表乾質量で規定されています。表乾とは、内部の空隙は水が含まれていて、表面だけ乾燥した状態のことを指します。
ところが製造時に使用する骨材は表面に水が付着しているため、補正せずに計量すると単位水量が増えて骨材量が減る事になります。
そこで各骨材に付着した水分量を測定し、測定値に応じて補正をかけることを、骨材の表面水率補正といいます。
- 細骨材1の表面水率=5.0%
- 細骨材2の表面水率=3.0%
- 粗骨材1の表面水率=0.5%
S1=
=
WS1=
=
S2=
=
WS2=
=
G1=
=
WG1=
=
W‘=
=
527.26002×(1+5.0%)
553.623021
553.623021-527.26002
26.363001
351.50668×(1+3.0%)
362.0518804
362.0518804-351.50668
10.5452004
917.7833×(1+0.5%)
922.3722165
922.3722165-917.7833
4.5889165
180-26.363001-10.5452004-4.5889165
138.5028821
ここまでが各種補正をした1㎥の計量値になります。この値に1バッチ当りの練混ぜ量を補正します。
表面水補正後
セメント | 水 | 細骨材1 | 細骨材2 | 粗骨材1 | 混和剤 |
289.275 | 138.5028821 | 553.623021 | 362.0518804 | 922.3722165 | 2.9435 |
容量変換の補正
容量変換とは、練混ぜ量に応じて計量値を増減させることをいいます。
コンクリートの配合は1㎥分の材料で規定されていますが、製造時には1㎥ごと練混ぜるわけでないため、1回の練混ぜ量に合わせて材料の量を増減させることを容量変換と言います。
1バッチの練混ぜ量2.00㎥と設定し、 1㎥の計量値を補正する。
C=
=
W‘=
=
S1=
=
S2=
=
G1=
=
AD=
=
289.275×2.00
578.55
138.5028821×2.00
277.0057642
553.623021×2.00
1107.246042
362.0518804×2.00
724.1037608
922.3722165×2.00
1844.744433
2.9435×2.00
5.887
容量変換後
セメント | 水 | 細骨材1 | 細骨材2 | 粗骨材1 | 混和剤 |
578.55 | 277.00i57642 | 1107.246042 | 724.1037608 | 1844.744433 | 5.887 |
ここまで一度も数字を丸めずに計算しましたが、容量変換後の値を指定の桁数に応じて丸め、計量指示値=現場配合となります。
数字を丸めずに計算した理由は、数字を丸める回数が増えるほど、元の値からのズレが大きくなるからです。
計算の最後に、指定の桁数に値を丸めることが大事になります。
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