コンクリートの強度って、どうやって調べるの?分からない用語もたくさんあって難しいなぁ…
コンクリートの強度と一口に言っても、コンクリートの強度にはたくさんの用語があり、なかなかとっつきにくいものです。さらに、強度に対する答えが様々あることが、とっつきにくさを助長させていますよね。
そこで、コンクリートの強度とは何かを、試験の方法や強度の基準など、試験の流れに沿って解説していきます。
強度試験の目的とは
一般にコンクリートの強度と言えば、圧縮強度を指します。
これは構造設計の際に、コンクリートは圧縮応力のみを受け持つ前提で、構造物が設計されている事によります。
コンクリートの強度試験の目的は、硬化したコンクリートが、構造設計時に用いた値よりも大きい事を確認するために、コンクリートの圧縮強度を測定しています。
この「構造設計時に用いた値」というのが、設計基準強度(Fc)となります。設計基準強度については、こちらの記事で分かりやすく解説しています。
コンクリートの強度試験の方法とは
では、強度試験の方法について順を追って説明していきます。大まかな流れは下記の通りです。
- 1
フレッシュコンクリートの試験 - 2
供試体(テストピース)の作製 - 3
供試体の養生 - 4載荷試験
フレッシュコンクリートの試験
工場で製造されたばかりの、まだ固まっていないコンクリートを、フレッシュコンクリート(一般的に言うと、生コン)と呼びます。
まず初めに、フレッシュコンクリートの時点で、コンクリートの品質に問題ない事を各種試験によって確認します。
供試体(テストピース)の作製
試験で品質を確認した後、供試体(テストピース)という強度試験用の試験体を作製します。
これには、JIS A 1132という供試体の作製方法についての規格があり、
- 供試体の寸法
- 作製に用いる器具
- 作り方の手順
- 作製した後の供試体の保管方法
など、細かく定められており、コンクリートの強度試験の結果に影響を及ぼすため、規格通りに作製しることが大事になります。
供試体の養生
養生とは、外部の影響によって硬化が阻害されることがないように、コンクリートを保護するために行います。 養生の方法には、目的に応じていくつかのやり方があり、一般的なやり方として、
- 標準養生
- 20±2℃の水中か相対湿度95%以上の空気中で行う養生
- 現場水中養生
- 工事現場にて、気温の変化に追随する水中で行う養生
- 現場封かん養生
- 工事現場にて供試体の温度が気温の変化に追随し、供試体からの水分の逸散がなく、供給もない状態で行う養生
などがあります。分かりやすく説明すると、
- 標準養生は、20℃の水の中、一定の温度で養生する方法。
- 現場水中養生は、気温の変動に合わせた水の中で養生する方法。
- 現場封かん養生は、気温の変動に合わせ、更に水分の供給や乾燥をさせない養生方法。
コンクリートの強度発現には、温度と水分が関係しています。
養生方法の違いは、強度試験の目的の違いとほぼ同じ意味を持ち、養生方法の違いで強度試験の結果も、その結果が意味するものも変わります。それについては、記事の続きで説明していきます。
これには、JIS A 1108 圧縮強度試験方法という規格があり、
- 供試体の寸法測定の方法
- 試験機の基準
- 試験の手順
- 供試体に加える荷重の速度
など、細かく定められており、コンクリートの強度試験の結果に影響を及ぼすため、規格通りに試験することが大事になります。
圧縮強度の求め方は、 fc=p/π×(d/2)2
- fc:圧縮強度(N/mm2)
- p :供試体に載荷した最大荷重
- π:円周率
- d :供試体の直径
圧縮強度の単位は「N/mm2(断面積当たりの強さ)」なので、供試体に加えた最大荷重を、供試体の断面積で割ると、強度が求まります。
混同しやすい判定基準について
判定基準には、いくつか基準があります。大別すると、コンクリートの強度は、使用するコンクリートの強度(ポテンシャルの強度)とコンクリート構造物の強度(コア供試体の強度)に分けられるからです。
この考え方が、強度についての誤解や難しさを生んでいる原因かもしれません。はじめに、基準の説明からお話しします。
使用するコンクリートの強度
JIS A 5308 レディーミクストコンクリートに規定があり、
- 1回の試験結果は、呼び強度値の85%以上であること
- 3回の試験結果の平均値は、呼び強度以上であること
と規定されています。また、1回の試験結果とは、一度に作製した3本の供試体の試験結果の平均値の事を言います。
コンクリート構造物の強度
建築基準法に規定されていて、供試体の養生方法ごとに判定基準が定められています。
- 標準養生の場合、材齢28日の強度結果が、設計基準強度に構造体強度補正値を加えた値以上であること。
- 現場水中養生の場合、材齢28日の強度結果が、設計基準強度以上であること。
- 現場封かん養生の場合、材齢28日の強度結果が、設計基準強度の7/10以上であり、材齢91日の強度結果が設計基強度以上であること。
と規定されています。 また、1回の試験結果とは、個別に作製した3本の供試体の試験結果の平均値の事を言います。
コンクリートの強度(ポテンシャルの強度)とコンクリート構造物の強度(コア供試体の強度)とは、材料としてのコンクリート自体の強度と、コンクリートで作られた構造物自体の強度とで、強度差があることを言っています。
Aというコンクリートの強度と、Aで作られたA’というコンクリート構造物の強度は、A=A’にはならないということです。
- 標準養生は、コンクリートのポテンシャルの強度を確認するための養生方法。
- 現場水中養生・現場封かん養生は、コンクリート構造体の強度を確認するための養生方法。
と、理解しておけば間違いは少ないと思います。
標準養生でも、コンクリート構造体の強度を確認出来ますが、現場水中養生・現場封かん養生では、コンクリートのポテンシャルの強度を確認することは出来ません。
コンクリート強度の予測(1週→4週・3日・14日など)
コンクリートの強度試験は、一般に材齢28日時点の強度を判定するために行いますが、ほかにも1週強度や3日強度、14日強度など28日までの間に複数回試験を行う方が一般的です。その目的は、おおむね二つの理由があります。
- 工程管理上、強度の確認が必要となる場合
- コンクリート強度の早期判定用
1.については、せき板・型枠の脱型、養生の打ち切り時期、支保工の解体時期の決定のための、強度確認として行われるもの。3日強度や、14日強度などが目安として用いられやすい。
2.については、打ち込んだコンクリートが、合格か不合格かの予測を早めに確認するために行われるもの。1週強度と呼ばれるもので、1週時点の強度結果から、4週強度を推定するために行われます。
公的機関って何?費用はいくら?
ここまで、コンクリートの強度試験について説明をしてきました。では、その試験は誰が行うのでしょうか?
コンクリートを製造するコンクリート工場が行うのでしょうか、コンクリートを買って構造物を建てるゼネコンが行うべきでしょうか?
答えは、試験に関して公正な立場にある者、つまりは公的機関(第三者機関)に依頼すべきとなるのです。
とはいえ現状では、公的機関に依頼出来るのは、強度試験の方法で説明した中の4.載荷試験の部分のみというのが実情です。
そこで、1.フレッシュコンクリートの試験~3.供試体の養生までを請け負う採取試験機関(代行試験業者)に依頼するという形をとりつつあります。
採取試験機関(代行試験業者)というのは、公的機関から認定された公認の第三者。公的機関に代わって、試験に関して公正な立場で、検査をする者を言います。
採取試験機関の費用に関しては、業者・地域で一律ではないため、「コンクリート試験 〇〇」(〇〇は地域)で、検索してみる事をおすすめします。
圧縮強度試験については、各都道府県の工業技術試験所や技術センターなどで受託しています。こちらの費用も、地域によってまちまちで一律ではありませんが、1本につき1200~1300円程度が、おおよその目安です。
コメント
一週間後が祝日で行なえないときは、前日の検査になりますか。
建築工事においては、建設省告示第1102号において材齢を前倒して良いとされています。