乾燥収縮・自己収縮とは、コンクリートの体積変化を指す用語です。
コンクリートの体積変化には、膨張、収縮およびクリープがあります。中でも乾燥収縮は耐久性の観点から規定値が設けられているなど、コンクリートの重要な性質です。
この記事を読めば、コンクリートの体積変化について以下のような事がわかるようになりますよ!
コンクリートの体積変化を知ろう
冒頭で説明したとおり、コンクリートの体積変化には3種類あります。
- 膨張…水和熱による膨張・日射や気温などの温度変化による膨張
- 収縮…温度降下による収縮・乾燥収縮+自己収縮
- クリープ…持続的な荷重によって、ひずみが増大すること。
水和熱による膨張とは
コンクリートの硬化過程において、セメントの化学反応による発熱を水和熱と呼びます。このため、硬化初期に起こる体積変化です。
マスコンの温度ひび割れの原因が、水和熱による膨張になります。
日射や気温などの温度変化による膨張とは
日射や気温などの影響で、コンクリートの温度が上昇することで起こる膨張です。このため、コンクリートの硬化後に起こる体積変化です。
コンクリートの熱膨張係数は、一般的に7~13×10‐6/℃程度になります。
温度降下による収縮とは
気温などの影響で、コンクリートの温度が低下することで起こる収縮です。このため、コンクリートの硬化後に起こる体積変化です。
乾燥収縮+自己収縮とは
クリープとは
コンクリートに荷重をかけ続けると、時間の経過にともないひずみが増していく現象。分かりやすく言うと、
コンクリートに重量物を乗せた時、その重みでちょっとだけコンクリートは縮みます。そのまま乗せ続けたままにすると、少しずつ縮む量が増えていくという現象。
コンクリートの乾燥収縮と自己収縮の違いとは
乾燥収縮と自己収縮について説明しましたが、もう少し詳しく解説していきましょう。
と説明しましたが、これで理解できた人はこの記事をそもそも読まないでしょう?どちらも、コンクリート内部の水分が減る事が原因なのは同じです。
違いは、いつ減るのか、何が減るのかという事です。
コンクリート内部では、水はセメントと化学的に結合し水和物を生成します。その水和反応に必要な量は、セメント量の40%程度と言われ、残りはゲル水や間隙水、毛細管水、吸着水などという状態で内部に留まるとされています。
乾燥収縮というのは、その水和反応で余った水が、外部へ蒸発して減ることで起こる毛細管張力が一番の原因とされています。
一方、自己収縮はと言うと、水和反応によって生成された水和物が、水和前の体積(水の体積+セメントの体積)よりも小さくなる事と、水和物の生成による毛細管張力の増加が原因とされています。
コンクリートの収縮は、硬化反応とともに自己収縮が起こり、自己収縮をしながら乾燥収縮が始まるという時系列になります。
自己収縮による体積変化は乾燥収縮の1/10程度であり、通常のコンクリートではあまり問題とされてきませんでしたが、近年の高強度化によって、自己収縮の影響も考慮されるようになってきています。
コンクリートの乾燥収縮の規定値とは、800μ?
乾燥収縮は耐久性の観点から規定値が設けられている、と冒頭で説明しました。
品確法(住宅の品質確保の促進などに関する法律)にひび割れの技術的基準が示されたこともあり、建築学会の収縮ひび割れ指針において、下表のように仕様が定められました。
使用するコンクリートの級 | 乾燥収縮率の目標値 |
標準 | 650~800×10-6 |
高級 | 500~650×10-6 |
特級 | 500×10-6以下 |
このような事から、JASS 5においては、計画供用期間の級が長期及び超長期の場合、乾燥収縮率8×10-4以下と規定されています。
乾燥収縮率8×10-4の根拠は、構造物に発生するひび割れを、ひび割れ幅0.3㎜(有害となるひび割れ)以内に抑えるためです。
構造体のサイズを、供試体サイズとみなした場合、乾燥収縮が8×10-4以下のコンクリートであればひび割れ幅を0.3㎜以下にコントロールできることが実証されています。
建築学会の収縮ひび割れ指針では、乾燥収縮を低減させる対策例を示していますので、参考までにのせておきます。
対策№ | 使用する材料 | 対策の内容 | 期待できる効果 |
1 | 石灰石骨材 | 石灰石骨材に変更 | 600~700×10-6の実現 |
2 | 膨張材 | 標準量使用 | 150×10-6以上の低減 |
3 | 収縮低減剤 | 標準量使用 | 15%~30%の低減 |
コンクリート 長さ変化率試験
乾燥収縮率を測定する方法にはJIS A 1129モルタル及びコンクリートの長さ変化試験方法がありますので説明します。
JIS A 1129には3種類の試験方法が定められています。
- コンパレータ法
- コンタクトゲージ法
- ダイヤルゲージ法
使用機器によって違いがある程度で、どの方法で試験をしても測定結果は等しくなります。
問題となるのは、JIS A 1129には基長となる材齢や、供試体を保存する環境条件の規定がないこと。期間や環境条件が変われば乾燥収縮率の値も変わってきますので、一定の規定が必要となるのですが、その規定はJASS 5に書かれています。
- 供試体作製型枠のまま24時間20±2℃の室内で湿潤状態を保つ
- 材齢1日脱型後、1回目の長さ測定。その後20±2℃の水中で養生
- 材齢7日2回目の長さ測定。この時の長さを基長とする
その後は温度20±2℃、相対湿度60±5%の環境下で保存。
- 7日以降保存期間1週、4週、8週、3か月、6か月で長さ測定
基準となる長さのこと。ある時点での長さをL1とし、そこからどのくらい縮んだかを測定する。
乾燥収縮の試験は長期間の測定となるため、建築学会では早期判定式を提案しています。
乾燥収縮率の推定値=推定係数αi×ni週目に測定した乾燥収縮率
i=4,8,13のいづれかとする。
α4=2.11
α8=1.49
α13=1.21
この式により早期判定を行う場合の注意点は、軽量・高強度などの特殊な仕様のコンクリートには適用できないこと、膨張材や収縮低減剤、その他混和材などの混和材料を使用した場合についても適用ができません。
まとめ
今回はコンクリートの体積変化について、その中でも乾燥収縮。自己収縮について説明しました。
乾燥収縮と自己収縮のメカニズムの違いは、コンクリートの収縮を理解する上で重要な項目ですので、しっかりと整理して覚えて下さい。乾燥収縮の規定はJASS 5にあること。規定の意味や測定方法、早期判定式については、実務でも頻度の高い部分ですので、しっかりと確認しましょう。
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