プライマーとは、建築工事の仕上げ工程(塗装工事・防水工事)において使用される下塗り塗料で、仕上げの品質を高めるため、仕上げ材との接着性を高めたり下地を強化する目的で使用されます。
また、プライマーは、コンクリート表面の浸透性を調整し、塗料やコーティングの均一な吸収を促進する効果もあります。これらの作用によってコンクリート表面の仕上がりを改善し、耐久性や防水性を向上させることができます。
この記事では、下塗り材である「プライマー」について説明します。
プライマーの語源や意味
プライマーとは、英語のprimary(最初の)に由来していて、初めの塗料=一番下に塗る塗料という解釈となり、下塗り塗料の総称です。
下塗り材の総称としてプライマーというジャンルがあり、目的や用途によって色々な分類があると理解してください。
プライマーは主に表面の接着力を高めたり凹凸を無くすといった表面処理が基本ですが、それ以外にも様々な機能を付与した、機能性プライマーと呼ばれるものもあります。
- 防錆プライマー
- 粘着プライマー
- 浸透性プライマー
- 絶縁プライマー
- 導電性プライマー
防錆プライマー
防錆=サビを防ぐ機能があり、金属製の下地に使用します。
下地にすでにサビが発生している場合、そのまま塗装しても早期に塗膜がはがれてしまうため、下地処理(サビ落とし)が必要となります。下地処理としてケレン作業が伴うだけでなく、表面を削ることで耐久性も弱くなることもあります。
防錆プライマーはサビを防ぐだけでなく、すでにあるサビを不活性な黒サビとすることができるため、ケレン作業の省略によって費用を抑え耐久性を確保することができます。
浸透性プライマー
下地に浸透し表面を強化する機能があり、コンクリートやモルタルなど無機質系の下地に使用します。
経年劣化で表面が傷んでいる場合、そのまま塗装をしても早期に下地と一緒に塗装もはがれてしまいます。
浸透性プライマーは微細な粒子のため、下地の細かな傷に深くまで浸透し、表面強度を改善することができます。また、下地が上塗りを吸い込むことを防ぐため、上塗りの仕上がりを良くします。
プライマーの種類と主な効果・目的
下塗り塗料には、プライマー以外にも効果や目的によって様々あります。
「厚塗り・薄塗り」、「水性・油性」などでプライマーとシーラーを区別している方もいますが、プライマーに厳密な定義はなく、主に下地の素材や使用する目的によって選ぶのが一般的です。
ここに挙げた全てが下塗り塗料=プライマーという事になります。
- プライマー
- 鉄・アルミ・ステンレスなどの鉄部に使用されます。塗装することで付着性が高まり、剥がれにくくなります。
- シーラー
- モルタル・コンクリート・石膏ボードなどの外壁材に使用されます。英語のseal(密閉する・塞ぐ)が由来で、上塗り塗料が下地に吸収されるのを防ぐ目的で使用されます。
- フィラー
- モルタルなどの外壁に使用されます。英語のfiller(詰め物)が由来で、傷を埋め表面を平らに滑らかにする目的で使用します。シーラーとフィラーの両方の性能を持つ「微弾性フィラー」などもあります。微弾性フィラーは下地のひび割れに追従するため、塗装後のひび割れにも効果があります。
- バインダー
- タイル・リシン壁、新築の壁などに使用されます。英語のbinder(結合するもの)の通り、下地と上塗りの接着剤として使用さます。下地の吸い込みがない場合はバインダー、吸い込みが多い場合はシーラーを使用します。
- サーフェイサー
- 英語のSurface(表面)が由来で、厳密には中塗り塗料の一種です。塗装の傷や凹凸を埋めたり、塗装表面の色合いを均一にし上塗りの発色を良くするため使用されます。他のプライマーが下地の調整が目的であるのに対して、サフェイサーは上塗りの仕上がりを目的としています。
コンクリートにプライマー処理が必要な理由とプライマーの使い方
塗装・防水・補修工事などでは、はじめに下地処理を行い下地面を調整します。その後塗装や仕上げを行いますが、下地の素材や仕上げ材の種類や相性によっては、下地との接着やなじみが悪い場合が多々あります。
そのため、下地と仕上げ材の接着力や相性を改善する目的で下塗りとしてプライマーを使用します
コンクリートのプライマーには、原料の種類によってもいくつか種類があり、目的や用途・性能に応じて適切な原料のプライマーを選択します。
用途 | 耐久性・耐候性 | 価格 | 備考 | |
アクリル系 | 屋内のコンクリート セメントボード | やや劣る | 比較的安価 | 塗布が簡単で乾燥が早い |
エポキシ系 | 屋外のコンクリート や床面 | 強度は高いが 紫外線に弱い | 他の種類よりも高価 | 非常に硬く、 重量物の床などに向く |
ウレタン系 | 屋外のコンクリート や床面 | 高い | エポキシ系に比べやや安価 | 弾性が高く、 廊下など歩行に向く |
- 下地処理と清掃
プライマー塗布の前にひび割れ注入・断面補修・不陸調整などの下地処理を終わらせ、コンクリートの表面をきれいに清掃します。
埃や汚れ油がある場合は、ディスクサンダーやウォータージェット、ブラシを使用して取り除きます。
- 施工条件の確認
当日の天候・気温・湿度などがプライマーの施工条件に該当しているかを確認します。気温は、エポキシ・ウレタン系で5℃以上、アクリル系で-10℃以上などとなっています。
湿度は一般的なプライマーで85%以下で施工可能です。屋外の施工の場合、天候にも注意が必要で、乾燥・硬化するまでは水分に当たらぬよう養生を必要とします。
- 下地の状態確認
下地全体の乾燥具合を確認します。水分によってプライマーの浸透が阻害されたり、塗膜のふくれ、白化現象の原因となります。
目安として表面水分が8%を超えると不具合が起こるとされています。
- プライマーの塗布タイトル
塗布ローラーやハケを使用して均一に塗布します。下地は不均一なため、場所によってプライマーの吸収にムラが出ます。吸い込みの多い場所は増し塗りをして、全体が均一に見えるようにします。
塗り方のポイントは一方向に塗るよりも二方向に塗ることできれいに仕上がります。塗布の際には、メーカーの標準使用量に従って行います。
- 仕上がりの確認と乾燥
作業後、塗り残しやムラ、ダレの確認を行います。次の工程に移る場合、推奨された時間を守りプライマーを乾燥させます。
乾燥時間は塗り厚や気象条件によっても変わりますが、目安としては1~2時間から12時間程度で、アクリル(乾燥時間が短い)<ウレタン<エポキシ(乾燥時間が長い)。
プライマーの種類や使用方法は、具体的な状況や施工条件によって異なります。そのため、使用するプライマーの仕様書やメーカーの指示に従って施工することが重要です。
コンクリートの打継ぎにもプライマーが必要
打継ぎで重要なことは、新旧コンクリートの一体化とレイタンスの除去です。新旧コンクリートの一体化のために、プライマーが重要になります。コンクリート・モルタルの打継ぎには、エポキシ系の接着プライマーを使用します。
レイタンスとは、ブリーディングに伴いセメント・骨材の微粒子などが表面に析出した強度の弱い層のこと。
レイタンスやブリーディングの内容については、こちらの記事で。
打継ぎによく似た用語に、打重ねという用語がありますが、プライマーが必要なのは打継ぎを行う場合のみです。
打重ねは、厚みのあるコンクリートを打設する場合、複数の層に分けて時間を空けてコンクリートを重ねていくことで、同じ日にコンクリートを打設します。
打継ぎは、打設したコンクリートが硬化した後に新たにコンクリートを付け足すことで、日をまたいで打設する場合をいいます。
打継ぎや打重ねについて詳しくはこちらの記事で解説しています。
レイタンス除去の方法には、処理のタイミングによって二通りの方法があります。
もう一つレイタンスを処理する方法として、打継ぎ(面)処理剤があります。この方法はレイタンスを除去するのではなく、脆弱なレイタンス層に処理剤を塗布し強化する方法です。
合成樹脂エマルジョンと呼ばれる打継ぎ(面)処理剤をコンクリート表面に塗布することで、レイタンス層を固着し、除去作業が省略できます。
また、表層部にポリマーコンクリート層が形成されることによって、急激な乾燥によるへアークラックに対しても効果が期待できます。 過密鉄筋や狭小部位など作業が困難な場合でレイタンス処理が難しい場合に有効です。
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