型枠とはコンクリートを流し込み、図面通りの形にコンクリートを成形するためのものです。
型枠は「木や金属などを板状にしたせき板」と「せき板を固定するための支保工」「それらをつなぐ締め付け金物」で作られ、設計通りの寸法・形状・品質の構造物を形成できるものである必要があります。
また型枠工事では、設計・組立てに欠陥があると、型枠の崩壊による大事故が起きる危険性があるため、労働安全衛生規則(厚生労働省)においても安全性能が求められています。
この記事では、型枠工事について、基準や型枠の種類、セパレーター・スペーサーの違い、型枠の計算・型枠の取り外し時期などについて説明します。
型枠に使用する材料の種類
型枠は「せき板」・「支保工」・「締め付け金物」の3つに分解できます。それぞれに種類や基準が定められていますので、はじめに確認しましょう。
せき板の材料と種類
一般的なせき板の種類・材質には以下の様なものがあります。
・せき板は一般に特記が無い場合は、JAS(日本農林規格)に適合した合板が使われます。せき板の品質がコンクリート表面の仕上がりを左右するため、型枠と型枠の繋ぎ目はモルタルの流出・ノロ漏れを少なくするように密着して取り付けます。
・打ち放し仕上げとする場合は、上記規格の品質[A]のものを使用します。品質は、A(高い)→D(低い)の順となります。
・金属製型枠パネルは、JIS A 8652(金属製型枠パネル)という規格があり、戸建ての基礎などに使われる事が多いです。
・床型枠用鋼製デッキプレートは、工場や倉庫などの鉄骨構造物の床に使われます。打込み型枠の一種なので、施工の省力化が図れます。
せき板には、剥離剤・離形剤と呼ばれるコンクリートとせき板の付着を弱める薬品を使用します。離形剤の主な成分は、軽油・潤滑油に脂肪酸エステル・植物油を添加したものがあります。
支保工の材料と種類
支保工は、せき板を所定の場所に固定する役割と、コンクリートの強度が発現するまで構造体を支える役割をしています。支保工の材料には、大引・根太・支柱・仮設梁および筋かいなどがあります。
現在では、支保工とせき板、足場まで1セットとしたシステム型枠というものも活用されています。
締め付け金物の材料と種類
締め付け金物とは、セパレーターと呼ばれる型枠の幅を固定する金物の事を言います。正確には締め付け金物は、本体・座金・コーン・セパレーターをフォームタイで固定したものです。セパレーターとは、型枠の幅を固定する「コーンとコーンを繋ぐ棒状の部分」を指します。
現場では、「セパ」と略す事が多く、組み合わせた一式でセパと呼んでいます。
セパの役目は、型枠の厚みを一定に収める事と型枠の強度を確保する事の二つです。
型枠の強度とは、コンクリートを型枠内に流し込むと、コンクリートの自重によって「側圧」という型枠の内側から外側に向かう圧力が生じます。
その側圧が型枠の強度を上回ると、型枠のはらみ・ずれ・倒壊などが起こります。そのため、セパレーターで型枠同士を繋ぎ止め強度を確保する必要があります。
コンクリート壁に一定間隔で丸い跡がついているのを見かけたことはありませんか?あの穴は、セパレーターに取り付けたPコンの跡が表面に残って出来たものです。
似たようなものにスペーサーというものがあります。セパレーターも広い意味ではスペーサーなのですが、
- セパレーター:型枠の幅を固定するもの
- スペーサー:鉄筋のかぶり厚さを確保するために鉄筋に取り付けるもの
型枠の構造計算とは
型枠は仕上がり精度を保つため、各部材それぞれの変形量を2mm程度、総変形量で5mm以下を目安に設計を行う。また、荷重に対して強度・剛性を確保するため構造計算によって確認を行います。
型枠の構造計算では、次に示す外力について検討を行います。
鉛直荷重
鉄筋・型枠・コンクリートの自重などの固定荷重と打込み時の機械・作業員・足場の自重などの作業荷重、それにコンクリートを打込んだ時の衝撃荷重などがあります。
水平荷重
作業時の振動やコンクリートの衝撃荷重、地震・風圧による荷重があります。
コンクリートの側圧
コンクリートの側圧は種類や配合によって変わるものですが、打込み速度と高さから標準値を求めることが出来ます。JASS5では、型枠設計用のコンクリートの側圧について標準値を定めています。
打込み速度 | 10m/h以下 | 10m/hを超え20m/h以下 | 20m/h超え | ||
打込み高さ | 1.5m以下 | 1.5mを超え4.0m以下 | 2.0m以下 | 2.0mを超え4.0m以下 | 4.0m以下 |
柱 | W0H | 1.5W0+0.6W0×(H-1.5) | W0H | 2.0W00.8W0×(H-2.0) | W0H |
壁 | 1.5W0+0.2W0×(H-1.5) | 2.0W0+0.4W0×(H-2.0) |
次に、この表を使って型枠の構造計算の一例として、セパレーターの許容ピッチの算出をしてみます。
計算の流れとしては型枠にかかる最大側圧を求め、使用するセパの許容引張強度で面積当たりの許容ピッチを算出します。
型枠寸法:W(幅)150mm×H(高さ)2.5m×L(長さ)7.5m 打込み速度:15m/h コンクリートの単位容積質量W0:2.4t/㎥(普通コンクリート) 最大側圧P=2.0×2.4+0.4×2.4×(2.5-2.0)=5.28t/㎡
次に最大側圧とセパの許容引張強度から許容ピッチを求めます。
セパの許容引張強度は太さによって変わり、セパの種類は主に太さによると思ってください。表にあるのがセパレーターの種類と強度の一例です
種類 | 呼称 | 最大引張強度(kN) | 許容引張強度(kN) |
W5/16 | 2分5厘 | 20以上 | 14 |
W3/8 | 3分 | 30以上 | 21 |
W1/2 | 4分 | 40以上 | 27 |
最大側圧P=5.28t/㎡ セパレーター(2分5厘)許容引張強度14kN=1.4t 最大側圧5.28÷許容引張強度1.4=3.78本/㎡(1㎡に必要なセパ本数) 1÷3.78=0.27㎡/本(セパ1本当たりの負担面積) セパ許容ピッチ0.27㎡=520㎜×520㎜(0.52m×0.52m=0.27㎡)
520㎜間隔でセパを挿れていけば良い事が算出されましたね。
型枠の存置期間とは?
型枠を取り外す事を「脱型」と言いますが、存置期間とは、生コンを打込んでから脱型するまでの期間の事を言います。
型枠はコンクリートを成形するためだけでなく、強度がしっかりと発現するまでの間、外気や外力からコンクリートを守る役目もしています。
そのため、せき板の存置期間は強度と日数によって管理する事と定められています。
存置期間を圧縮強度から判断する場合は、
計画供用期間の級 | 短期・標準 | 長期・超長期 |
圧縮強度 | 5N/㎟以上 | 10N/㎟以上 |
でせき板を取り外すことが出来ます。また存置日数で管理する場合は、計画供用期間の級が、「短期・標準」である場合には、
コンクリートの材齢(日) | |||
セメントの種類 |
早強セメント |
普通セメント・高炉A種・ フライアッシュA種・シリカA種 |
高炉B種・フライアッシュB種・シリカB種 |
20℃以上 | 2 | 4 | 5 |
10℃以上20℃未満 | 3 | 6 | 8 |
表の日数を経過すれば、せき板を取り外すことが出来ます。
強度発現の速度は、温度とセメントの種類によって変動するため、配合と気温から必要な日数を確保しなければなりません。
コンクリートの強度発現については、こちらの記事で説明しています。
支保工に関しては、構造体コンクリートの強度が設計基準強度(Fc)に達したことが確認されるまでとなっています。設計基準強度など、コンクリートの設計強度についてはこちらの記事が参考になると思います。
まとめ
今回の記事では、型枠工事について説明しました。
型枠は形を成形するためのものですが、コンクリートの仕上がりだけでなく、耐久性にも影響を及ぼすため、確実な施工とすること。また型枠の倒壊は大事故となるため、充分な配慮が必要となります。
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