一般的に、コンクリートを型枠に流す事を「打設する」と一言で表しますが、コンクリート打設は、型枠に流し込む事だけではありません。
コンクリート打設とは、以下の内容が含まれる用語です。
この記事では、コンクリート打設の手順や方法、打設計画のポイント・注意点、打設計画書の中身・書き方などについて説明します。
コンクリート打設は「発注」から始まり「仕上げ」で終える
コンクリート打設を行なうにあたって、まずは「発注」を行います。
発注には、主に資材の手配・機器の手配・人員の手配などがあります。
生コンの発注をする
事前に生コン工場から提出された配合計画書を見て、発注すべきコンクリートの確認を行います。
注文の時には、生コン工場に対して事前に伝えておくべき項目があるので、はじめに確認してください
- 打設日
- 呼び方(配合)
- 数量
- 開始時間
- 納入ピッチ(納入間隔)
「呼び方」というのは、生コンを注文する時の取引上の言い方の事です。
具体的には、「27-18-20N」で注文すると、強度27N/mm2、スランプ18cm、骨材の最大寸法20m、セメントの種類N、というコンクリートを発注したことになります。
この場合の強度を、呼び強度と言います。呼び強度は、コンクリートを発注(注文)する時の取引上の値で、設計基準強度と区別するための用語です。
「納入ピッチ」というのは、一時間あたりどのくらいの量を現場に届けてほしいかという事です。
機器の手配をする
コンクリートポンプ車(運搬)や高周波バイブレーター(締固め)の機器を手配します。
ポンプ車の手配では、ポンプ車のセット場所や打込み箇所、配合・打込み数量などを事前に伝え、ポンプ車の選定・打込み計画を決めます。
人員の手配をする
締固め作業・仕上げ作業の人員を手配します。また不測の事態に備えて型枠、鉄筋の補修・補強をする人員も確保する必要があります。
仕上げ作業は左官屋さんがするものですが、広いスラブなどは、土間屋さんといって土間・スラブのような水平に広い面積を仕上げる専門業者に依頼します。
届いた生コンの品質確認は入念に
コンクリート打設を開始する前に、生コン工場から運ばれてきたコンクリートの受入れ検査を行います。
配合計画書とコンクリートの納入書を照合し、注文したコンクリートである事の確認と運搬時間の確認を行います。
確認が取れたら受入れ試験を行い、生コンの品質が規格値内である事を確認し、打込みの準備を開始します。
生コンの運搬は迅速に
生コンを荷卸し地点から打込み場所まで運搬します。
運搬は、分離や品質の変化が可能な限り少ない方法で行い、制限時間内に運搬出来る工法を選択します。
一般には、コンクリートポンプ車・コンクリートバケット・シュートなどで運搬しますが、それぞれに注意点やポイントがあります。
運搬について詳しい説明は以下の記事をご覧ください。
打込みは分離に気をつける
打込みは「低い位置」から「真っ直ぐ下」に「ゆっくり」と「その場に落とす」のが基本です。
生コンは密度が違う粒を混ぜたものなので、高い位置から落としたり・長い距離を流したり・斜めに滑らせたりすると分離します。
具体的には、砂利がかたよって集まったり、モルタルが流れ出たり、水が浮き出したりします。
打込みについて詳しい説明は以下の記事をご覧ください。
締固めが打設のポイント
締固めは、型枠や鉄筋の周囲・全体に生コンを詰め込むために行います。
生コンを型枠内に打ち込んだだけでは、型枠の隅まで充てんされず、鉄筋の周りは、スカスカの状態です。
そこで生コンを棒でつついたり振動を加えることで、まんべんなく生コンを詰めていきます。一般的には、バイブレーターや木づちを使って締固めます。
締固めについて詳しい説明は以下の記事をご覧ください。
表面の仕上げは時間との勝負
厚みの調整や表面の凸凹を整えること、表面の強度・耐久性を高めることを仕上げといいます。
仕上げ作業には「均し」と「押さえ」があり、仕上げ作業の程度は、部材・表面の仕上げ種類によって変えていきます。仕上げ作業はコンクリートの凝結を見ながら進めなければなりません。
仕上げについて詳しい説明は以下の記事をご覧ください。
打設計画は無理のない計画とするのが適切
構造体の品質は「生コン自体の品質(ポテンシャル)」×「打設の精度」で決まります。
コンクリートというのはちょっと変わった材料で、生コンという製品であると同時に構造体をつくる材料でもあります。
生コンの品質だけで構造体の品質を確保することは難しく、打設の良し悪しによって品質が左右されるため、打設計画は余裕を持たせたものとし、計画通りに作業しなければなりません。
打設計画を作成するにあたって、事前に注意すべき点・確認しておくべき点をリストにしてみました。
打込み量とピッチによって、運搬・締固め機器の能力や人員の数などが決まります。
時間の限度内に打込めるような打込み順序とし、上面仕上げの時間が確保できるような打込み量とします。
降雨・降雪など品質に悪影響を及ぼす恐れがある場合や、強風など作業に支障をきたす可能性がある場合の対処方法も事前に決めておくことも重要です。
打継ぎ処理は構造体の耐久性を確保する上でポイントとなるため、事前に検討して置かなければなりません。
打ち継ぎについて詳しい説明は以下の記事をご覧ください。
打設計画書には多くの情報があった方が良い
打設の手順や注意点などの検討が済んだら打設計画書を作成します。
打設計画書には、日時や打設箇所、コンクリートの仕様、人員の配置、機器の数、タイムスケジュール、各種検査の実施内容など打設に関わる情報が網羅されています。
打設計画書のひな形を参考にしながら手順について見てみましょう。
- 打設日工程表と各種工事の進捗状況・天気予報などを確認しつつ、打設日を決めます。
- 発注日付を決めたら、打設に必要な資材・機器・人員の発注をします。
- 検査打設日と発注作業が済んだら、打設前の配筋・型枠などの検査を行います。
- 打設計画書検査が済んだら、打設当日の人員配置や打設数量表・ポンプのセット位置・配管ルートなどを確認し打設計画書に書き込みます。
- 打ち合わせ打設計画書をもとに各業者との打ち合わせをして作業要領を伝えます。
- 作業指示打設当日は、機器の点検、役割分担・打込み順序の再確認などを行います。
- 清掃型枠内に木くずやごみ、散水による水が溜まったままの状態で打設をすると、欠陥部が出来てしまうため、清掃により異物を取り除きます。
またラス網やスペーサー、結束線の破損や寸法の乱れがないかも合わせて点検します。 - 受入れ検査一通り確認が済んだら、生コンの受入れ検査を行い打込みを開始します。
- 打込み打設を開始したら、打設数量表の予定と実績を照らし合わせながらコンクリートの出荷ピッチの調整などを行います。運搬時間と打ち重ね時間間隔の限度を超えないようにコントロールしていきます。
- 仕上げ仕上げ作業は、コンクリートの凝結を見ながら作業を進めます。仕上げのタイミングが早くて遅くてもひび割れを誘発することになるため、適切な時期を見極める事が大事になります。
- 養生仕上げ作業が済んだら速やかに養生作業へと引き継ぎます。
仕上げ作業を完了し、コンクリートの養生へと作業が移ればコンクリート打設は完了となります。
コンクリートの養生は構造体の品質を確保する重要な作業となるため、打設計画書には養生方法の計画も含める事が一般的です。
養生について詳しい説明は以下の記事をご覧ください。
まとめ
この記事では、コンクリート打設の手順や計画書の内容・書き方について説明しました。
打設計画書に多くの情報を盛り込むことで、速やかな判断と対応を取ることが可能となります。
また事前の確認・検査事項を盛り込むことで、スムーズな工程管理を行うことができます。
コメント