練り混ぜ水はコンクリートの基本材料で、水質と種類(上水道水・上水道以外の水・回収水)の管理が強度と耐久性に直結する。このため、JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)の附属書JCでは、どのような水を使えるか?どう評価すべきか? が明確に定められています。
今回の記事では、スラッジ水の意味と使い方、練混ぜ水の種類、スラッジ水を使う上での注意点、練混ぜ水の規定などについて説明します。
結論:練混ぜ水とは何か?
練混ぜ水の種類と品質:「塩化物イオン量」「凝結時間の差」「モルタルの圧縮強さの比」など品質規定が明確に定められています。
スラッジ水は固形分率として3%以下で使用可能。セメント量とスラッジ濃度により常に配合ごとに使用量が変動します。またJIS改正により高強度コンクリート以外は自由に選択できるようになった。
要点:練混ぜ水の種類(2024年JIS改正版)
| 区分 | 説明 | 使用条件 |
|---|---|---|
| 上水道水 | 飲用可能な水 | 試験不要でそのまま使用可能 |
| 上水道以外の水 | 河川水・地下水・工業用水など | 水質試験が必要 |
| 回収水(上澄み水/スラッジ水) | 生コンプラントから回収した水 | JIS基準を満たすことが前提 |
※2024年JIS改正により、上澄水→上澄み水(うわずみすい)であることが明確化された。
① 上水道水(最も安全)
- 飲用として供される水
- 試験なしで使用可能
② 上水道水以外の水
- 河川水、湖沼水、地下水、工業用水など
- JISで定められた品質試験を実施し、基準適合を確認
③ 回収水(プラント等で回収した水)
- 生コンプラントの洗い水など
- 上澄み水とスラッジ水に分けられ、特にスラッジ水はスラッジ固形分率の管理が重要となる
「飲める水なら通常はコンクリートの練混ぜ水として使える」これは世界各国の施工実務でよく言われる基準で、 清澄で有害な物質が含まれていないことが大前提 です。
なぜ水質管理が重要なのか?
練混ぜ水が不適切だと、次のような悪影響があります。
| 影響 | 具体的な例 |
|---|---|
| 強度低下 | 有害な成分で硬化が阻害 |
| 鉄筋腐食 | 塩化物イオン(Cl⁻)が内部腐食を促進 |
| 凝結遅延 | 有機物などで異常な凝結時間 |
| 施工性劣化 | 懸濁物質でスランプ不安定 |
これは 良質な水を使うことが、コンクリート品質を守る第一歩である ということです。
専門解説:JIS A 5308 附属書JC の水質基準
上水道以外の水・回収水は試験が必要であり、これは単に「見た目がきれいだからOK」ではなく、科学的評価に基づく合否判定です。試料は「採取後7日以内に試験を行う」など、タイミングの目安も規定されています。
以下は、JIS A 5308 附属書JCで規定される 代表的な水質基準 をわかりやすくまとめます。
| 項目 | 規定値 | 意味と影響 |
|---|---|---|
| 塩化物イオン (Cl⁻) | 200 mg/L 以下 | 鉄筋腐食を防止 |
| 懸濁物質量 | ≤ 2 g/L | 混合性・スランプへの影響 |
| 溶解性蒸発残留物 | ≤ 1 g/L | 不純物の総量評価 |
| 凝結時間差 | 初期 30分以内 / 最終 60分以内 | 水和反応への影響を評価 |
| モルタル強さ比 | ≥ 90% | 強度発現性の評価 |
| スラッジ固形分率(回収水) | 3% 以下 | 回収水の安全性評価 |
スラッジ水の実務的取扱い
回収水には上澄み水とスラッジ水があり、特にスラッジ水は、セメントスラッジなどを含むため、固形分率管理が最重要です。スラッジ水のルールは次の通りです。
- 固形分率1%未満→全量を練り混ぜ水として使用可能
- 3%以下→配合修正を行い使用可能
- 3%超→設計性能低下リスク のため使用不可
固形分が増えると、空気量が減少したり単位水量が不足によって品質低下につながります。現場では、固形分率が変動して配合設計が狂い、スランプ変動や強度低下を招いた事例があります。
スラッジ水の管理ポイント(実務経験)
スラッジ水の使い方は分かりづらく、すぐには理解出来ないので、スラッジ水の計算過程を説明します。
- 濃度測定スラッジ水の濃度10%
- 製造条件セメント量300kg・単位水量180kg・スラッジ固形分率3%
- 固形分量セメント量×固形分率=(スラッジ水に含まれて良い固形分量)
300kg×3%=9kg
- スラッジ水量スラッジ水に含まれて良い固形分量/スラッジ水の濃度=(スラッジ水の量)
9kg/10%=90kg(水81kg+固形分量9kg=スラッジ水の量)
- スラッジ水
以外の水量単位水量-スラッジ水=スラッジ水以外の水量180kg-81kg=99kg(スラッジ水以外の水量)
- 全水量合計値
スラッジ水+単位水量=90+99=+189kg(ただし、9kgは固形分)
という計算になり、スラッジ水の使用量は、セメント量とスラッジ水濃度により常に変動します。
スラッジ水の濃度が3%以下でなければ使えないということではなく、「練り混ぜ水+スラッジ水」=全水量に含まれる固形分を3%以下に抑えなさいというルールです。
また、スラッジ固形分率1%以上で使う場合、スラッジ固形分の量は水には含めず、スラッジ水の水の部分の質量のみを単位水量として計算します。
固形分率の量が3%以下なら使用可能という説明をよく見かけますが、3%以下なら可能ではなく、3%以下になるようにスラッジ水濃度によって使用量を計算して使いなさいという事です。
また、スラッジ水を使用した場合にはコンクリートの配合を修正する必要性が出てきます。一般的には、単位水量を2~3%増やしたり、s/aを若干下げたり、AE剤(空気調整剤)を増やしたりなどの修正を行います。
2024年JIS改正版:回収水に関する規制と注意点
高強度コンクリートには、スラッジ水を使用してはならない。
従来は呼び強度36を超えるものについては、水の種類を購入者と協議しなければなりませんでしたが、回収水の利用促進のため、高強度コンクリート以外であれば生産者責任において使用可能となりました。
2024年JIS改正版:安定化スラッジ水の使用方法
安定化スラッジ水は、スラッジ水に対して安定剤を添加し、水和反応の進行や固形分凝集を制御したものです。
JIS A 5308ではこの「安定化処理したスラッジ水」も、所定の品質管理ルールを満たせば練混ぜ水として使用できると定義され、スラッジ固形分率の上限が6%まで許容されています。
安定化スラッジ水の品質管理ルール
以下の表がスラッジ水を使用する場合の固形分の取扱いとルールの比較表です。
| スラッジ水の使用方法 | 固形分率 | 固形分の取扱い | |
|---|---|---|---|
| A法:安定剤なし(スラッジ水) | 1%未満 | 水の質量に含めてよい | 固形分量の影響を考慮しない |
| A法:安定剤なし(スラッジ水) | 1以上3%以下 | 水の質量には含めず、容積に含めてよい | 固形分量の影響を水量に限定 |
| B法:安定剤あり(安定化スラッジ水) | 3%以下 | 水の質量には含めず、容積に含めてよい | 固形分量の影響を水量に限定 |
| B法:安定剤あり(安定化スラッジ水) | 3を超え6%以下 | 容積は配合に含める | 固形分量の影響が容積に及ぶ |
簡潔に言えば、1%未満は上澄み水と同様の使用方法、3%以下までは、形分の量だけ単位水量を足す、3を超え6%以下の場合は固形分の量だけ単位水量を足し、固形分量の容積分だけ砂かセメントを減らすということです。
実務では、配合計画書や納入書に「安定化スラッジ水(使用方法、固形分率目標など)」を明記することが求められています。
実務の視点:よくある水質トラブル例
事例①:塩化物過剰による鉄筋腐食兆候
事例① 塩分過多による品質低
- 海岸近くの井戸水使用→塩化物イオンが 200 mg/L 越え
→ 定期検査では問題が無かったが、コンクリートの塩化物含有量が急上昇
→ 水源変更+水処理実施で是正
事例②:スラッジ固形分率管理ミス
- スラッジ水濃度10% → 濃度管理設定ミス
→ 粘性増加・スランプ低下
→ 再試験に設定変更で是正
地域・環境視点
- 海岸地域:地下水塩分・Cl⁻濃度が高くなりやすい
- 雪国:融雪剤由来の Na⁺・Cl⁻によって水質が変わる可能性
- 寒冷地:水温が低く、設定凝結時間・強度発展に影響
FAQ
- Q上水道水は試験なしで使っていい?
- A
試験不要です。
- Q回収水は全て使える?
- A
JIS基準に適合する水だけ使用可です
- Qスラッジ水の濃度が高いと何が起こる?
- A
単位水量増加、粘性増加、スランプ変動、空気量減少
- Q地下水を使う注意点は?
- A
融雪剤や、農業用水などの影響を受けやすい。
現場チェックリスト
- 水源の種類を確認
- スラッジ水濃度の管理
- 試験結果を材料管理台帳に保管
- 安定剤の投入量・時期・記録を保管

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