コンクリートとは「大小の粒が混合して固まったもの」で、大小の粒とは砂利・砂・セメントです。
セメントは粉状の微粒子で、結合材(バインダー)の役目をしている事は良く知られていますが、セメントの比表面積(粒の大きさ)が重要だという事はあまり知られていません。
セメントには、用途や特徴に応じてたくさんの種類がありますが、その特徴は
- セメントの化合物量の比率
- セメントの比表面積
でコントロールしています。
ネットの記事では「比表面積が大きい=硬化が早い」と書かれていますが、そのまま覚えてしまうと間違えの元になります。
今回の記事では、セメントの比表面積について説明します。
比表面積とはセメント粒子の細かさを表しています
比表面積とは、粒子の単位質量当りの表面積のことで、単位はcm2/gで表されます。
「セメント粒子1g分の表面積を合計したもの」で、粉末度とほぼ同義語です。
値が大きな数字ほど、細かい粒子であるという事になります。
言葉だけでは、ピン!と来ない方が多いので、ここでちょっと例題を計算してみます。
≪比表面積の例題≫
直径10cmの球が1つあります。同じ材料で、あらたに直径5cmの球をつくりました。同じ重さになるように球の数を調整した場合、球の面積はどちらが大きいでしょうか?
問題には重さの差が書かれていないため、体積を利用して算出します。同じ材料で作られているため密度は同じとすると、体積を計算することで必要な個数(重さ)が求められます。
重さ(x)=体積(y)×密度(a) a=一定
- 球の体積の公式=4/3πr3です。
- 10cmの球 π=3.14、半径r=5
4/3×3.14×5×5×5=523.333333…cm3 - 5cmの球 π=3.14、半径r=2.5
4/3×3.14×2.5×2.5×2.5=65.416667…cm3
体積の差は
523.333333 /65.416667 =8
直径5cmの球が8個必要だと分かりました。
直径5cmの球は直径10cmの球の1/8の重さだということです。
次に、互いの面積を計算します。
- 球の面積の公式=4πr2です。
- 10cmの球 π=3.14、半径r=5
4×3.14×5×5=314 cm2 - 5cmの球 π=3.14、半径r=2.5
4×3.14×2.5×2.5=78.5cm2
5cmの球8個で同じ重さなので、8個分の面積を計算します。
8個分の面積=78.5×8=628cm2
10 cmの球と5 cmの球で、重さを揃えた時の面積の大きさは、
直径10cm=314cm2/g
直径5cm= 628cm2/g
となり、粒子が小さいほど比表面積が大きくなるのが、計算から分かると思います。
粒が小さいほど面積が大きくなるというのは感覚的にパッと想像しづらいので、一度計算してみると良いかもしれません。
JIS R 5201にはセメントの粉末度を測定する方法として、比表面積試験と網ふるい試験が規定されています。比表面積試験では、ブレーン空気透過装置と呼ばれる器具を使うことから、比表面積をブレーン値と呼ぶこともあります。
比表面積によって、水和反応やブリーディング量が変わる
比表面積の値は、次のようなことに影響を及ぼします。
比表面積 | 小さい | 大きい |
凝結・強度発現の速度 | 遅い | 早い |
ブリーデイング量 | 多い | 少ない |
収縮量 | 小さい | 大きい |
粘性の大小 | 小さい | 大きい |
ポルトランドセメントと混和材の比表面積のイメージとして、
- 水和する面積が広いので水和反応・硬化が早い・水和熱も大きい
- 表面に付着する水分量が増え、ブリーディング量が少ない・粘性が大きい
基本的にこの捉え方で間違いではありませんが、混合セメントの場合、ポルトランドセメントに混和材を混合するので、比表面積が大きいから硬化が早いとはなりません。
下の表に各種セメント比表面積の一部を抜粋してみました。
セメントの種類 | 比表面積cm2/g |
普通ポルトランドセメント | 2500以上 |
早強ポルトランドセメント | 3300以上 |
中庸熱ポルトランドセメント | 2500以上 |
高炉セメントB種 | 3000以上 |
フライアッシュセメントB種 | 2500以上 |
ポルトランドセメントに関しては、強度発現の速い早強ポルトランドセメントの比表面積が大きい事が分かります。
化合物量の比率だけでなく比表面積を大きくすることで、より水和反応を高めているのが分かります。
一方、高炉セメントB種は3000以上cm2/gで普通セメントよりも大きな値が規定されていますが、普通ポルトランドセメントより強度発現が遅いというのはご存じの通りです。
混合セメントの比表面積は、混合する混和材の比表面積の大きさと割合によって決まるためです。
コンクリート用の混和材として、フライアッシュ・高炉スラグ微粉末があります。粉末度の大きさによって4つの等級に分類されていますが、用途によって比表面積の大きさを使い分けています。
比表面積の大きさによる影響は、混和材においてもおおむね同様だと言えます
セメントの種類を覚える際は、水和熱や強度の規定だけでなく比表面積に注目すると、より確実に覚えることが出来ると思います。
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