セメントの特徴についてJIS規格の内容を化合物や物性から見てみよう

材料

コンクリートには、目的や用途に応じて様々な特徴を持ったたくさんの種類があり、目的に合わせて材料を変えて製造しています。

コンクリート材料の中で、コンクリートの特長・性能をもっとも支配している材料がセメントになります。

セメントの種類を分類すると              

  • ポルトランドセメント
  • 混合セメント
  • エコセメント
  • 特殊セメント

となります。

この記事では、セメントの特徴について、なにがセメントの特徴を左右しているのか?規格の意味や内容のポイントについて、詳しく説明します。

セメントについて、どんな種類があるのか?やその使い方を知りたい方は、こちらの記事で一覧を紹介しています。

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JIS規格で規定されているポルトランドセメントは、全部で12種類(6種類×2パターン)

ポルトランドセメントは、JIS R 5210「ポルトランドセメント」で規定されていて、6種類のポルトランドセメントがあり、それぞれに低アルカリ形のセメントがあります。

普通ポルトランドセメント:低アルカリ形
早強ポルトランドセメント:低アルカリ形
超早強ポルトランドセメント:低アルカリ形
中庸熱ポルトランドセメント:低アルカリ形
低熱ポルトランドセメント:低アルカリ形
耐硫酸塩ポルトランドセメント:低アルカリ形

低アルカリ形のセメントは、アルカリシリカ反応によるコンクリートの劣化が問題となったことから、アルカリシリカ反応抑制対策の一つとして、全アルカリ量を0.60%以下に保障したセメントです。

全アルカリ量の算出方法
Na2Oeq =Na2O + 0.658K2O 
 Na2Oeq :ポルトランドセメント中の全アルカリ含有率(%)
 Na2O :ポルトランドセメント中の酸化ナトリウム含有率(%)
 K2O :ポルトランドセメント中の酸化カリウム含有率(%)
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ポルトランドセメントの原料と製造過程から分かるセメント化合物

石灰石や粘土などの原料を焼成することで、4種類の化合物ができます。

化合物にはそれぞれ特徴があり、ポルトランドセメントは化合物の構成比率を変えることで、セメント自体の特徴をコントロールしています。

混合セメントは、クリンカーと混ぜて同時に粉砕するか、ポルトランドセメントに微粉砕した混合材を混ぜるかの二通りの製造方法があります。

鉱物名称(略号)強度水和反応速度水 和 熱 収 縮 化学抵抗性
けい酸三カルシウム:エーライト(C3S)28日以内比較的早い
けい酸ニカルシウム:ビーライト(C2S)28日以降遅い
アルミン酸三カルシウム:アルミネート相(C3A)1日以内非常に速い
鉄アルミン酸三カルシウム:フェライト相(C4AF)関与しないかなり早い

セメントの水和反応について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

ポルトランドセメントの特徴について、JISの規定値や化合物の比率を確認しながら見てみよう

下表は、JISの規定値のうち、ポルトランドセメントの特徴に関連する規定値の部分を抜粋した表です。

 普 通早 強超早強中庸熱低 熱耐硫酸塩
比表面積(㎠/g)2500以上3300以上4000以上2500以上2500以上2500以上
凝結始発(min)60以上45以上45以上60以上60以上60以上
終結(h)10以下10以下10以下10以下10以下10以下
圧縮強さ
(N/㎟)
1d10.0以上20.0以上
3d12.520.030.07.5 10.0
7d22.532.540.015.07.520.0
28d42.547.550.032.522.540.0
91d42.5
水和熱
(J/g)
7d290以下250以下
28d340以下290以下
けい酸三カルシウム(%)50以下
けい酸二カルシウム(%)40以上
アルミン酸三カルシウム(%)8以下6以下4以下
  • 比表面積
    • セメント粒子の細かさを表しています。粒子の細かさは強度発現の早さに影響していて、比表面積が大きいほど発現が早い。
  • 圧縮強さ
    • 材齢ごとの強度の下限値が記載されていて、強度発現の早さを表しています
  • 水和熱
    • 水和反応時の発熱量を表しています。強度発現の早さに関係していて、水和熱が大きいほど発現が早い。

普通ポルトランドセメント

セメント化合物の割合、比表面積の大きさなど、もっとも中間的なセメント。

早強ポルトランドセメント

普通ポルトランドセメントに比べて比表面積が大きく、エーライト(C3S)の割合が多いため、短期強度が大きい。そのため、水和熱も大きい。1d強度の規定値がある。

超早強ポルトランドセメント

早強ポルトランドセメントより更に比表面積が大きく、エーライト(C3S)の割合も多い。

早強ポルトランドセメントよりも、1d強度の規定値が大きい。

中庸熱ポルトランドセメント

比表面積が小さく、ビーライト(C2S)の割合が多い。

水和熱の大きいエーライト(C3S) 量とアルミネート相(C3A) 量に上限値があり、水和熱を規定している。短期強度の下限値が小さい。

低熱ポルトランドセメント

中庸熱ポルトランドセメントよりもさらにビーライト(C2S)の割合が多く、水和熱の上限値が低い。

アルミネート相(C3A)の上限値が中庸熱ポルトランドセメントより小さく、水和熱が小さいビーライト(C2S)量の下限値が規定されている。初期強度の規定値が無く、長期強度(91d)に規定値がある。

耐硫酸塩ポルトランドセメント

アルミネート相(C3A)は、硫酸塩と反応しエトリンガイトによる異常膨張をおこす。そのため、アルミネート相(C3A)の上限値を規定している。

混合セメントの特徴について、JISの規定値や化合物の比率を確認しながら見てみよう

下表は、JISの規定値のうち、混合セメントの特徴に関連する規定値の部分を抜粋した表です

 高炉セメントシリカセメントフライアッシュセメント
 A種B種C種A種B種C種A種B種C種
混合材の分量
(質量%)
5を超え
30以下
30を超え
60以下
60を超え
70以下
5を超え
10以下
10を超え
20以下
20を超え
30以下
5を超え10
以下
10を超え
20以下
20を超え
30以下
比表面積
(㎠/g)
3000
以上
3000
以上
3300
以上
3000
以上
3000
以上
3000
以上
2500
以上
2500
以上
2500
以上
圧縮強さ (N/㎟) 3d12.510.07.512.510.07.512.510.07.5
7d22.517.515.022.517.515.022.517.515.0
28d42.542.540.042.537.532.542.537.532.5

混合材の分量

高炉セメントは、高炉スラグが潜在水硬性を持っているため、シリカセメント・フライアッシュセメントよりも混合材の分量が多いのが特徴です。

比表面積

高炉セメント・シリカセメントの比表面積は、普通ポルトランドセメントよりも大きいことから、高炉スラグ・シリカ質混合材は、比表面積が大きい事が分かります。

圧縮強さ

混合セメントのA種の圧縮強さは、いずれも普通ポルトランドセメントと同じ圧縮強さとなっています。

混合材の分量が増えるほど、圧縮強さは小さくなっていくため、混合材による強度増進は、ゆっくりしている事が分かります。

シリカセメント・フライアッシュセメントの圧縮強さは同じですが、高炉セメントは高いことから、高炉セメントは比較的強度発現が早いことが分かります。

エコセメントの特徴について、JISの規定値や化合物の比率を確認しながら見てみよう

下表は、JISの規定値のうち、混合セメントの特徴に関連する規定値の部分を抜粋した表です

 普通エコセメント速硬エコセメント
比表面積2500以上3300以上
凝結始発(h-m)1-00以上
終結(h-m)10-00以下1-00以下
圧縮強さ1d15.0以上
3d12.5以上22.5以上
7d22.5以上25.0以上
28d42.5以上32.5以上
三酸化硫黄(%)4.5以下10.0以下
塩化物イオン(%)0.1以下0.5以上1.5以下

塩化物イオン(%)

エコセメントの特徴として、塩化物イオンの含有量が大きいことが分かります。(普通ポルトランドセメントでは、0.035%以下)

そのため、JISや各仕様書において使用については一定の制限を設けています。特に、速硬エコセメントは塩化物イオン量の多さから、無筋コンクリートでの使用に限られています。

三酸化硫黄(%)・凝結

三酸化硫黄の量が多く、特に速硬エコセメントはせっこうの量を増やし、凝結を早めています。そのため、速硬エコセメントの強度は、凝結の早さから初期強度が大きいことが特徴です。

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