コンクリートのスラッジ水と上澄水 練混ぜ水

材料

スラッジ水とは、コンクリート材料のうち「練混ぜ水」のひとつです。「練混ぜ水」の種類には、上水道水、上水道水以外の水、回収水などがあります。

今回の記事では、スラッジ水の意味と使い方、練混ぜ水の種類、スラッジ水を使う上での注意点、練混ぜ水の規定などについて説明します。

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練混ぜ水の種類とスラッジ水の位置づけ

コンクリートの練混ぜ水の規定には、「水の区分」という項目がありますので、まずは下の表を見てみましょう。

区分 種類
上水道水
上水道水以外の水 河川水・湖沼水・井戸水・工業用水
回収水 上澄水・スラッジ水

上水道水とは、みなさんのご家庭の蛇口から出てくる水、いわゆる水道水の事です。上水道水以外の水とは、飲料用としての処理がなされていないもの。そして回収水の中に入るのがスラッジ水です。

回収水とは、生コン工場でミキサー車の洗浄やプラント洗浄によって発生した排水(洗浄廃水)を回収した後、さらに処理をしたものを言います。

回収水は、以下のように区別されています。

  • スラッジ水…細骨材・粗骨材を取り除いたもの
  • 上澄水…スラッジ水から更にスラッジ固形分を取り除いたもの

スラッジ固形分とは、骨材の微粒子とセメント分の混ざったものを言います。つまりスラッジ水とは「洗浄水から骨材を取り除いた濁った水」上澄水とは「スラッジ水からその濁りを取り除いた水」になります。

上澄水の処理の方法は、スラッジ水を水槽などに溜め置きして水とスラッジ固形分を分離させるやり方と、脱水機と呼ばれる機械でろ過する方法とがあり、取り除いたスラッジ固形分は、汚泥として産廃処理されます。

海水及び酸性(PHの低い)の強い水は一般に練混ぜ水として使用する事が出来ません。海水の塩化物や酸が鉄筋を腐食させるため、用心鉄筋は配置していない無筋コンクリートの場合のみ、品質を確認した上で使用する事が出来ます。

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練混ぜ水の規定ってどういうの?

練混ぜ水には3つの区分があり、区分ごとに品質に関する規定があります。はじめに、それぞれの規定を確認しましょう。

1.上水道水

上水道水に関しては試験を行わずに使用する事が認められています。

2.上水道水以外の水

上水道以外の水は、以下の品質に適合する水でなければなりません。

項目 品質
懸濁物質の量 2g / L以下
溶解性蒸発残留物の量 1g / L以下
塩化物イオン(Cl-)量 200mg / L以下
セメントの凝結時間の差 始発30分以内、終結60分以内
モルタルの圧縮強さの比 材齢7日及び28日で90%以上

3.回収水

回収水は、以下の品質に適合する水でなければなりません。

項目 品質
塩化物イオン(Cl-)量 200mg / L以下
セメントの凝結時間の差 始発30分以内、終結60分以内
モルタルの圧縮強さの比 材齢7日及び28日で90%以上

回収水とは洗浄廃水を回収したものですので、元々の水質は、試験によって品質が確認出来た上水道水か上水道水以外の水です。ですが、コンクリートを製造する際に使用した混和材料などの影響を確認するために、改めて試験を行います。

水の品質規定では、水の濁度(汚れ具合)と塩化物イオン、そして強度への影響を確認しています。

スラッジ水はどうやって使えばよいのか?

スラッジ水の使い方には二つの使い方があります。スラッジ水以外の水と混合して使う場合スラッジ水だけ(全量)で使う場合です。

  • 混合して使う場合…スラッジ固形分率で3%以下で使う
  • スラッジ水だけ(全量)で使う場合…スラッジ固形分率で1%未満で使う

スラッジ水の使い方は、分かりづらくこれだけでは理解出来ないと思います。スラッジ水とは簡単に言えばセメント分の残った水ですので、固形分率とは、その残ったセメントの量を規定の割合で使いなさいという事です。

実際にスラッジ水を使用する時の計算の過程を説明します。

スラッジ水を使用する時の計算過程
  • 濃度測定
    スラッジ水の濃度10%
  • 製造条件
    セメント量300kg・単位水量180kg・スラッジ固形分率3%
  • 固形分量
    セメント量×固形分率=(スラッジ水に含まれて良い固形分量)

    300kg×3%=9kg

  • スラッジ水量
    スラッジ水に含まれて良い固形分量/スラッジ水の濃度=(スラッジ水の量)

    9kg/10%=90kg(水81kg+固形分量9kg=スラッジ水の量)

  • スラッジ水以外の水量
    単位水量スラッジ水=スラッジ水以外の水量

    180kg-81kg=99kg(スラッジ水以外の水量)

という計算になります。つまりセメント量ごとに使用量が変わり、スラッジ水の量を先に計算し、残りがスラッジ水以外の水の量となります。

また、スラッジ固形分率で1%以上で使う場合、スラッジ固形分の量は水には含めず、スラッジ水の水の部分の質量のみを単位水量として計算します。

固形分率の量が3%以下なら使用可能という説明をよく見かけますが、3%以下なら可能ではなく、3%以下になるようにスラッジ水の濃度と使用量を計算して使いなさいという事です。

スラッジ水の使用に関する規制と使用する場合の注意点

スラッジ水の場合、コンクリートの種類・建物の条件によって使用して良い場合とダメな場合があります。

  • 高強度コンクリート:スラッジ水は使用不可
  • 長期・超長期のコンクリート:回収水は使用不可
  • 短期・標準のコンクリート:呼び強度36以下は使用可、超える場合は協議による

一般に高い品質を確保しなければならないコンクリートには、使用に関して制限があると覚えてください。

さらに、スラッジ水を使用した場合にはコンクリートの配合を修正する必要性が出てきます。スラッジ水の中には、セメント粒子や水和物・骨材中の微粒分が含まれているため、コンクリートの粘性が増大したり空気量が低くなったりします。

そのため一般的には、単位水量を2~3%増やしたり、s/aを若干下げたり、AE剤(空気調整剤)を増やしたりなどの修正を行います。

まとめ

今回の記事では、練混ぜ水の規定、特に回収水・スラッジ水について説明しました。

回収水とは、コンクリートの製造工程で排出される洗浄廃水を再利用したもので、骨材の粒を取り除いたスラッジ水と、スラッジ水からセメント粒子や骨材の微粒分を沈降・ろ過してきれいにした上澄水、とに分けられる事。

回収水の使用に関しては規制があり条件によって使い分けること。スラッジ水の使用量は、濃度とセメント量によって計算から求めること。

環境負荷低減・持続可能な社会の維持が求められる現在、リサイクルや再資源化は世界全体の課題となっています。コンクリートにおける回収水(特にスラッジ水)の使用は今後加速していくと思われます。スラッジ水の意味や規制だけでなく、使い方や注意点についてもしっかりと理解しておきましょう。

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