コンクリートは「単に乾燥して固まる材料」だと思っていませんか?
実際には、セメントと水が化学的に反応=水和して強度と耐久性を獲得します。水和反応によって結晶構造を持った化合物が生成され、互いに絡まり空隙を埋めていくことで硬化していきます。
このページでは、水和反応の仕組み・生成物・施工への影響・環境条件との関連・実例・チェックリスト・FAQ を、現場経験を交えながら誰にでもわかるように丁寧に解説します。
はじめに — 気候・環境が反応に与える影響
水和反応は気温や湿度といった環境条件に大きく左右され、低温では反応が遅延し、高温では反応が過度に進むことがあります。
特に水和熱(反応熱)の影響で生じる内部温度変化は、温度ひび割れなどのトラブルにつながることもあります。こうした条件依存性を理解することは、施工品質を安定させるために欠かせません。
結論 — 水和反応は「コンクリート強度発現の核心」
コンクリートが硬くなるのは単に乾燥するからではありません。
セメント鉱物と水が化学的に結合して生成する「新しい物質(水和生成物)」が空隙を埋め、微細構造を作っていくことで強度が発現(強くなる)します。つまり、水和反応は化学反応であり、生成物の構造こそがコンクリートの強さの根幹です。
この反応過程を理解すれば、単に材料を混ぜて置いておくだけではなく、環境・配合・養生を設計する意味が明確になります。
水和反応とは? — 仕組みを丁寧に説明
そもそも「水和反応」とは、名前の通り セメント鉱物と水が化学反応を起こし、新たな安定した化合物を生成するプロセスを指します。
これは乾燥とは全く異なり、水は反応の溶媒ではなく反応物の一部として化学的に取り込まれます。
反応が始まるまでとその後の進行

セメントと水を練り混ぜると、最初に水がセメント粒子の表面を濡らします。この時点から化学反応が同時多発的に進行し始めます。
セメント粒子が溶解 →反応物が再結晶化 →生成物がセメント間の空隙を埋める
という流れで、やがて硬い構造体が形成されていきます。
水和によってどんな化合物ができるのか?
下表の4種類のセメント鉱物がそれぞれ反応し、水和物を生成することで強度発現をしていきます。
| 鉱物名称(略号) | 分子式 | 強度 | 水和反応速度 | 水和熱 | 収縮 | 化学抵抗性 |
| エーライト(C3S) | 3CaO‣SiO2 | 28日以内 | 比較的早い | 中 | 中 | 中 |
| ビーライト(C2S) | 2CaO‣SiO2 | 28日以降 | 遅い | 小 | 小 | 大 |
| アルミネート相(C3A) | 3CaO‣Al2O3 | 1日以内 | 非常に速い | 大 | 大 | 小 |
| フェライト相(C4AF) | 4CaO‣Al2O3‣Fe2O3 | 関与しない | かなり早い | 小 | 小 | 中 |
①エトリンガイト
- セメントに含まれるアルミネート成分(C₃A)が水と反応すると、エトリンガイトなどの針状結晶生成物が形成されます。
- 初期反応時の体積変化や発熱特性に影響するため、配合設計で考慮する必要があります。
② Ca(OH)₂(水酸化カルシウム)
- C-S-H と並んでよく生成される物質です。
- 強度な結合を形成するわけではありませんが、内部のアルカリ性を維持し耐久性や防食性に関与 します。
③C-S-H(カルシウムシリケート水和物)
- コンクリートの強度の大部分を担う主役 の生成物です。
- 微細なゲル状・繊維状の構造が結びつき、空隙を埋め、固いネットワークとなります。
- C-S-H の性質・密度が最終的な強度を決定します。
水和反応と時間・強度の関係
反応の段階と強度発現の流れ
- 数分〜数時間初期反応期
C3Aによる極めて初期の化学結合が形成され始めます
アルミネート相(C3A)によるエトリンガイトの生成 アルミネート相+せっこう→ エトリンガイト 3CaO・Al2O3+CaSO4・2H2O → 3CaO・Al2O3・3CaSO4・32H2O - 1~7日急速反応期
C₃Sは素早く反応し、初期強度に寄与します
エーライトによる水酸化カルシウム、けい酸カルシウム水和物 3CaO・SiO2+H2O→ Ca(OH)2 、CaO-SiO2-H2O - 28日まで安定反応期
C3S、エトリンガイト、C3A、C4AFなどが緩やかに反応
アルミネート相+エトリンガイトによるモノサルフェート水和物 3CaO・Al2O3+3CaO・Al2O3・3CaSO4・32H2O→ 3CaO・Al2O3・CaSO4・12 H2O アルミネート相・フェライト相+水酸化カルシウムによるアルミン酸カルシウム水和物 3CaO・Al2O3+Ca(OH)2→ 3CaO・Al2O3・6H2O 4CaO・Al2O3・Fe2O3+Ca(OH)2 → 3CaO・Al2O3・6H2O - 28日以降長期反応期
C₂S は遅れて反応し、長期強度向上 に寄与します
ビーライトによる水酸化カルシウム、けい酸カルシウム水和物 2CaO・SiO2+H2O→ Ca(OH)2 、CaO-SiO2-H2O
セメントの規格値や物性値について、知りたい方はこちらの記事へどうぞ。
水和熱(発熱)の意味と現場での影響
水和反応は発熱を伴う化学反応です。この発熱が内部温度を上昇させ、特に大量打設の現場では 温度ひび割れのリスクになります。
大規模なコンクリートでは内部温度が 80〜90℃ に達することもあり、表面と中心部で温度差が生じると引張応力によりひび割れが発生しやすくなります。
. 施工実例と失敗談(現場の感覚)
成功例:低温現場での反応促進
冬期施工において、水和反応が遅く初期強度不足が懸念されました。しかし 温水散布や断熱養生シートを活用したことで反応速度が改善し、計画どおりの強度確保につなげることができました。
失敗例:高温による温度ひび割れ
猛暑日の打設で水和反応が急激に進行した結果、内部と表面の温度差が大きくなり、温度ひび割れが発生しました。これは 水和熱の管理が不十分だった実例 です。散水養生と高ビーライト系セメントの採用により、その後の工程で修正する必要がありました。
水和熱に関して、セメント鉱物の組成とともに重要なのが比表面積です。比表面積についての記事はこちら。
混合セメントとポゾラン反応
高炉スラグやフライアッシュなどを含む混合セメントでも水和現象が起こります。混和材がセメントの化合物とは違った水和反応を起こすことで硬化していきます。
高炉スラグ微粉末
高炉スラグ微粉末はアルカリ環境下で水和反応を起こし、CaO や SiO₂ が溶出して C-S-H 系水和物を生成します。
フライアッシュ・シリカフューム
水酸化カルシウム(Ca(OH)2) ・二酸化けい素(SiO2)が主に反応し、エトリンガイト、アルミン酸カルシウム水和物、けい酸カルシウム水和物を生成します。
水和反応から見た、混合セメントの特徴とは
混合セメントに共通する特徴には、下記のようなものがあります。
- 初期強度が小さく長期強度に優れる
- 化学的抵抗性に優れる
- 中性化に対する抵抗性は劣る
- 初期強度が小さく長期強度に優れる
- 水酸化カルシウム(Ca(OH)2)を刺激・反応物として水和を起こすため、セメントの水和反応が進みCa(OH)2によるアルカリ性が増してから水和反応を開始します。
- そのため、材齢がある程度進んでから強度を発現するため、初期強度の発現が鈍く、長期強度に優れます。
- 化学的抵抗性に優れる
- 硫酸マグネシウム(MgSO4)、塩化マグネシウム(MgCl2)などの硫酸塩は、水酸化カルシウムCa(OH)2やC3Aと反応し、エトリンガイトを生成する。エトリンガイトの膨張圧によりひび割れが起こる。
- Ca(OH)2を水和に消費する混合セメントは、硫酸塩と反応するCa(OH)2が少なくなるため化学的抵抗性が優れる。
- 中性化に対する抵抗性は劣る
- ポルトランドセメントの絶対量が少ないため、水和によって生成される Ca(OH)2 量が少ない。
- 更に混和材の水和はCa(OH)2 と反応するため、元々少ない Ca(OH)2 がさらに減少するため、中性化に対する抵抗性は低くなりやすい。
施工性への影響
水和反応は、ワーカビリティ(施工性・スランプ保持)にも大きく影響します。早すぎるとスランプ低下や打継ぎに支障が出るし、遅すぎても、仕上げ工程の遅延につながります。
反応速度や生成物の生成量を考慮した 混和材(フライアッシュ・スラグ・シリカフューム等)の選定は、施工性と強度発現のバランスを取る上で重要です。
チェックリスト
- 施工時期の湿度条件を把握し、配合設計に反映
- 水和熱管理のための養生計画を立案
- 混和材の種類を施工性と強度発現に合わせて最適化
- 初期強度と長期強度の両方を視野に入れた工程設計
FAQ(よくある質問)
- Q水和反応とは何ですか?
- A
セメントと水が化学結合し、新しい結晶やゲル状物質を生成する化学反応です。
- Qなぜ水だけでは固まらないの?
- A
コンクリートは化学反応で固まるため、水が蒸発して固まるのではありません。
- Q高温と低温どちらが反応に有利?
- A
温度が高いほど反応は早く進みますが、過度な温度上昇はひび割れリスクにつながります。
- Q生成物の C-S-H はなぜ重要?
- A
C-S-H は強度発現の主要要素であり、内部構造を形成してコンクリートの性能を決めます。





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