現在の建築現場では、コンクリートポンプ車による施工が一般化しています。それによって締固め作業にも施工スピードの効率化が要求されるようになり、振動機(バイブレーター)による作業が広く普及しています。
コンクリートの締固めは、施工において構造物の出来映え(耐久性や美観)を左右する重要な作業となります。
この記事では、締固め作業の目的、バイブレーターの種類や使い方について説明します。
コンクリートの締固めってなに?
締固めとは、打込んだコンクリートを型枠内の隅々まで充填させる作業をいいます。
コンクリートを型枠内に打込んだだけでは、内部の気泡・型枠や鉄筋の間の隙間が残った状態です。このまま硬化してしまうとコンクリートの強度・耐久性・仕上がりも悪くなります。
お菓子作りを見たりした事がある人は知っていると思いますが、型枠に生地を流し込んだ後、中の空気を抜くためにトントンと叩きますよね?!
コンクリートの締固めとは、それと同じことをしているのです。
打込んだコンクリートに振動を加えて、内部の気泡・水分を追い出し、型枠の隅々までコンクリートを移動させることが締固めの目的です。
バイブレーターは気泡を抜くため
コンクリートの内部には、無数の気泡が存在していて大きく二種類の気泡に分けられます。
- エントラップトエア…径の大きな気泡
- エントレイントエア…径の小さな気泡
エントラップトエアはコンクリートの性能に良い影響を与えないため、バイブレーターによって減らします。バイブレーターで振動を与えるとコンクリートは液状化し、密度が軽い気泡は自然とコンクリートの表面に浮き上がってきます。
振動時間が長くなり過ぎると材料分離を起こすため、気泡が抜けて分離する前に振動を止めるのがポイントです。
バイブレーターの種類や仕様
JISには、JIS A 8610(コンクリート内部振動機) JIS A 8611(コンクリート外部振動機)の2つの規格があります。一般的に建設現場では
- 内部振動機…棒形バイブレーター
- 外部振動機…型枠バイブレーター
と呼んでいます。
棒形バイブレーターの種類は、「電源の位置・電源の種類・構造・振動体の径」によって区別され、棒形バイブレーターの性能は、「径の大きさ・振動数・振幅」によって決まり、高周波のものほど振動能力が高くなります。
また実際の振動効果は「バイブレーターの性能・コンクリートのワーカビリティ・振動時間」の3要素から成り立ち、スランプが大きいほど遠くまで振動が届き、振動時間は短くて済みます。
使用するバイブレーターの締固め能力によって打込みスピードが決まるため、打設計画に合ったバイブレーターを選定する事が重要となります。
型枠バイブレーターとは、棒形バイブレーターを差し込む事が困難な部位や型枠付近の仕上がりを良くするために使います。
棒形バイブレーターがコンクリート内部に直接差し込んで振動させるのに対して、型枠バイブレーターは、型枠の外側から押し当て間接的に振動させるバイブレーターです。それ以外にも「叩き」といって、木づちで型枠を叩く締固めのやり方もあります。
バイブレーターの正しい使い方は?
通常、ポンプ車の筒先から出たコンクリートは、型枠・鉄筋の上に山となって出てきます。そこにバイブレーターをかける事によって、コンクリートの山が流動化し型枠内に流れていきます。
バイブレーターでコンクリートに振動を加える事を「バイブをかける」と言います。
ここで、問題となるのが「横流し」という行為です。横流しとは、山になったコンクリートをバイブレーターの振動によって遠くまで流す事を言います。
長い時間振動を加えるため液状化が進み分離してしまいます。バイブのかけ過ぎはコンクリートの一体性を損なう行為です。
バイブレーターは使い方によってはコンクリートを悪くしかねないため、目的を明確にして扱う事が大切です。
コンクリート打設時のバイブレーターのかけ方
実際に締固め作業(バイブをかける)の具体的なかけ方を説明します。締固めについては、下表のような規定がありますのではじめに確認しましょう。
締固めの規定を踏まえて、高周波バイブレーターと呼ばれるものを例に説明します。
バイブレーターは通常二人一組で作業を行います。高周波バイブレーターには電源ケーブルが付いていて、バイブをかける担当者と電源・ケーブルを管理する担当者に分かれることで効率よく作業を行います。
- 1.バイブを差し込む
垂直に差し込み、鉄筋や型枠を避ける
- 2.5~15秒程度振動させる
コンクリートの山が平らになり、表面のペーストにツヤが出てきたら締固めは終了
- 3.バイブを引き抜く
穴が残らないように徐々に引き抜く
- 4.次の場所にバイブを差し込む
50㎝程度離れた場所を選ぶ
1~4を繰り返し行いコンクリート全体を締め固めていく事が重要なため、あらかじめ締固め位置や作業の進む方向を打ち合わせておくことも必要となります。
特に、打継面はコンクリートの欠陥となりやすいため、必ず先に打ち込んだコンクリートに10cm程度バイブを挿入して下層のコンクリートと上層のコンクリートの境目を無くすことが大切です。
まとめ
この記事では、コンクリート打設の締固め作業について説明しました。コンクリートというのはあくまで材料であり、型枠に打ち込まれたものが現場で硬化していくものです。
コンクリートのポテンシャルの性能が良くても、施工の仕方によっては持っている性能を充分に発揮することが難しい材料でもあります。
締固めはコンクリート打設計画通りに作業を進める上で事前に検討しておくことが大切です。
打設計画について詳しい説明は以下の記事をご覧ください。
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