セメントの特徴について|JIS規格を化合物や物性から見てみよう

材料

コンクリートの性能(水和熱・強度発現速度・化学抵抗性)は、使用するセメントのクリンカー組成と物理的性質に支配されています。

実務者には単なる規格の確認に留まらず、現場環境や構造物の要求性能に適した「セメントの種類」を的確に選択し、ひび割れ抑制と長期耐久性を両立させる技術的判断が求められます。

この記事では、セメントの規格値の説明とその見方。セメントの性能がどのように作られているのかを紹介します。

セメントの選び方や用途について知りたい方はこちらの記事をどうぞ。

セメントの水和反応について、詳しく知りたい方はこちら。

セメントの比表面積と強度の関係など、比表面積について気になる方はこちらの記事へ。

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主要なポルトランドセメントのJIS規格値と特性一覧(抜粋)

ポルトランドセメントは、JIS R 5210「ポルトランドセメント」で規定されていて、6種類のポルトランドセメントとそれぞれに低アルカリ形があります。

普通ポルトランドセメント標準+低アルカリ形
早強ポルトランドセメント標準+低アルカリ形
超早強ポルトランドセメント標準+低アルカリ形
中庸熱ポルトランドセメント標準+低アルカリ形
低熱ポルトランドセメント標準+低アルカリ形
耐硫酸塩ポルトランドセメント標準+低アルカリ形

低アルカリ形のセメントは、アルカリシリカ反応によるコンクリートの劣化が問題となったことから、アルカリシリカ反応抑制対策の一つとして、全アルカリ量を0.60%以下に保障したセメントです。

全アルカリ量の算出方法

Na2Oeq =Na2O + 0.658K2O 
 Na2Oeq :ポルトランドセメント中の全アルカリ含有率(%)
 Na2O :ポルトランドセメント中の酸化ナトリウム含有率(%)
 K2O :ポルトランドセメント中の酸化カリウム含有率(%)

主要なポルトランドセメントの規定値(抜粋)

一般的に使用されるポルトランドセメントの規定を表にまとめました。

 普 通早 強中庸熱低 熱
比表面積(㎠/g)2500以上3300以上2500以上2500以上
凝結始発(min)60以上45以上60以上60以上
終結(h)10以下10以下10以下10以下
圧縮強さ
(N/㎟)
1d10.0以上
3d12.520.07.5 
7d22.532.515.07.5
28d42.547.532.522.5
91d42.5
水和熱
(J/g)
7d290以下250以下
28d340以下290以下
けい酸三カルシウム(%)50以下
けい酸二カルシウム(%)40以上
アルミン酸三カルシウム(%)8以下6以下
  • 比表面積…セメントの細かさを表わす。比表面積が大きい=細かいほど発現が早い。
  • 圧縮強さ…材齢ごとの強度の下限値の記載。強度発現の早さを表わす。
  • 水和熱…反応時の発熱量を表わす。水和熱が大きいほど発現が早い。
種類強度比表面積始発水和熱化合物規定から分かる特徴
普通 ――  ――  平均的な性能
早強1d強度3300以上45分―  ― 強度発現が早い
中庸熱 ― ―上限規定C3S上限 水和熱が小さく、強度発現が遅い
低熱91d強度 ―上限規定C2S下限 更に水和熱が小さく、もっとも強度発現が遅い
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混合セメントのJIS規格規定値(抜粋)

混合材の種類・分量によって特性が変わるセメントの基準です。

 高炉セメントシリカセメントフライアッシュセメント
 A種B種C種A種B種C種A種B種C種
混合材の分量
(質量%)
5を超え
30以下
30を超え
60以下
60を超え
70以下
5を超え
10以下
10を超え
20以下
20を超え
30以下
5を超え10
以下
10を超え
20以下
20を超え
30以下
比表面積
(㎠/g)
3000
以上
3000
以上
3300
以上
3000
以上
3000
以上
3000
以上
2500
以上
2500
以上
2500
以上
圧縮強さ
(N/㎟)
3d12.510.07.512.510.07.512.510.07.5
7d22.517.515.022.517.515.022.517.515.0
28d42.542.540.042.537.532.542.537.532.5

混合材の分量が増えるほど初期圧縮強さは小さくなっていくため、混合材による強度発現は、ゆっくりしている事が分かります。

水酸化カルシウムなどを利用し化学的に安定な水和物を生成するため、化学抵抗性に優れ長期的な耐久性に優れます。

専門解説:化合物組成と比表面積が現場の「使い勝手」を変える理由

セメントの性能は、クリンカー化合物の比率と比表面積(粉末度)によって科学的に決定されます

ポルトランドセメントの原料と製造過程から分かるセメント化合物

石灰石や粘土などの原料を焼成することで、4種類の化合物ができます。化合物にはそれぞれ特徴があり、 ポルトランドセメントは化合物の構成比率を変えることで特徴をコントロールしています。

また混合セメントは、混合材をクリンカーと混ぜて同時に粉砕するか、ポルトランドセメントに微粉砕した混合材を混ぜるかの二通りの方法で製造します。

鉱物名称(略号)強度水和反応速度水 和 熱収 縮化学抵抗性
けい酸三カルシウム:エーライト(C3S)28日以内比較的早い
けい酸ニカルシウム:ビーライト(C2S)28日以降遅い
アルミン酸三カルシウム:アルミネート相(C3A)1日以内非常に速い
鉄アルミン酸三カルシウム:フェライト相(C4AF)関与しないかなり早い

① エーライト(C3S)と初期強度の関係

初期強度の主役。早強セメントはこの比率を高めることで、強度発現を早める。

② ビーライト(C2S)と長期強度・低発熱性

長期強度の主役。中庸熱・低熱セメントではこの比率を高め、水和熱を抑えつつ数ヶ月かけて強度を発現させる。

③アルミネート相(C3A)と水和熱

初期水和・水和熱の先頭走者。中庸熱・低熱セメントではこの比率を下げることで、水和熱を抑えている。

セメントの水和反応について、詳しく知りたい方はこちら。

現場の一次体験・施工実例・失敗談

  • 失敗事例:冬季の高炉セメントB種(BB)使用による強度発現の遅延…ある橋台施工において、仕様書の規定通りにBBを採用したが、厳冬期の温度管理が不十分で1週強度が設計値の50%に満たなかった。対策として「積算温度」に基づいた養生期間の延長と保温措置の徹底が必要であった。
  • 施工実例:早強セメント(H)による緊急道路復旧…夜間の道路工事で早強セメントを採用し、打設後18時間で所定の開放強度(3.5N/㎟)を確保。

FAQ:セメント選定に関するよくある質問

Q
2024年のJIS改正で普通セメントの品質は変わりましたか?
A

石灰石等の少量混合成分が10%まで増量されましたが、圧縮強度や物理的性質のJIS規定値に変更はなく、従来の「普通ポルトランドセメント」として同様に使用可能です。

Q
なぜ冬場に高炉セメント(BB)は「不利」と言われるのですか?
A

水和初期の反応・発熱が小さく初期強度が出にくいため、凍害や型枠解体時期の遅延を招くリスクがあるからです。

Q
セメントの「粉末度」が高いと、どのような施工上のメリット・デメリットがありますか?
A

粘性が増しブリーディング(浮き水)が減少するため、仕上げ工程の短縮になります。ただし、乾燥が早いため「プラスティックひび割れ」などの注意が必要です。

読了後に取るべき具体的行動:セメント品質管理チェックリスト

  • 発注予定の生コンに「2024年改正$JIS$マーク」が適用されているか確認。
  • 打設時期の外気温を予測し、中庸熱や早強への変更要否を検討。
  • BBセメント使用時は、初期強度の遅れを考慮した工程表(脱型時期)になっているか再チェック。
  • 部材厚によっては、水和熱を考慮したセメントの品種を検討。

セメントの選び方や用途について知りたい方はこちらの記事をどうぞ。

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