セメントの種類と選び方|用途が分かる最適セメント一覧

材料

「強度は出ているはずなのに、なぜコンクリートがひび割れるのか?」現場でこの疑問を持ったことはありませんか?

多くの施工トラブルは、配合や養生ではなく、もっと前の“セメント選定”の段階からはじまっています。にもかかわらず実務では

  • とりあえず普通セメント
  • 早く終わらせたいから早強セメント
  • 海に近いから高炉セメント

といった**“雰囲気選定”**が横行しています。

本記事では、JIS数値の解説ではなく、「なぜそれを使うのか」を説明できる判断軸を、失敗事例と設計思想から解説します。

セメントの作り方、規格値や特徴の違いを化学的に知りたい方はこちらの記事をどうぞ。

セメントの水和反応について、詳しく知りたい方はこちら。

セメントの比表面積と強度の関係など、比表面積について気になる方はこちらの記事へ。

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この記事の結論・要約

セメントは「用途に応じて使い分ける」という個性を持った材料です。使う場所・使う時期・使い方を正しく判断しないと、トラブルが発生します。

セメントの種類ごとの特性を理解し、正しく判断することが重要。

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「強度は出ているのにひび割れる」理由

現場で最も多い誤解は、次のような思い込みです。

「設計基準強度を満たしている=安全」

実際には、コンクリートのひび割れの多くは“圧縮強度”ではなく“引張応力”によって生じます。

  • 水和熱による温度差
  • 乾燥収縮による拘束
  • 部材形状による応力集中

これらはすべて、セメントの反応速度と発熱特性に強く依存します。

早強系で内部温度が急上昇すれば、冷却時に内部が引張られ、強度が出ていても割れます。これが「強度は合格なのにクレームになる」正体です。

なぜ「配合」より先にセメントなのか

多くの現場では、トラブルが起きると真っ先に「配合が悪かった」「水が多かった」「養生が甘かった」と結論づけられがちです。

しかし、セメントの鉱物組成(C3S・C2S・C3A・C4AF)や比表面積が異なれば、同じ配合・同じ水セメント比でも、強度発現曲線・温度履歴・乾燥収縮量は大きく変わります。

つまり、配合設計とはセメントの特性を活かし調整を加えるため、設計と施工の“初期条件”が間違っていれば、結果は変わりません。

セメント選定で失敗しない3原則

① 強度発現の“時期”で決める

28日強度が同じでも、初期強度の立ち上がり方は大きく異なります。

種類1日3日7日
普通N20%45%70%
早強H40%70%100%
高炉B種10%30%55%

この違いを無視して施工計画・養生管理を行うと、角欠け・ひび割れ・表面剥離・たわみなどのトラブルが発生します。

② 環境条件で“除外”する

下水処理場・温泉地域・海洋構造物では、硫酸塩などによる化学劣化が進行します。普通ポルトランドを使用すると、

  • 数年で膨張・ひび割れ
  • →鉄筋腐食
  • →想定寿命の半分以下

という事例は珍しくありません。

③ 部材規模(水和熱)で最終判断

厚さ1m超のマスコン部材で普通や早強を使うと、

  • 表面:30℃
  • 内部:70℃

といった温度差40℃超が発生し、温度ひび割れを引き起こします。

セメントの種類別「設計」と現場のリアル

種類設計実例失敗
普通N汎用・標準
早強H工程短縮夜間補修 → 48時間後開放夏期は温度応力過大
中庸熱(M)・低熱(L)温度応力制御厚さ1.8mマット → ひび割れゼロ冬期は初期強度不足
耐硫酸塩(SR)ロ化学抵抗性温泉地・下水施設

用途別“設計判断”ケース

1. 倉庫土間(早期使用が必要)

  • 条件:3日以内にフォークリフト走行
  • 失敗パターン:普通Nで施工 → 表面粉化
  • 判断軸:初期強度+表層耐摩耗性

2. マンション基礎(厚さ1.2m)

  • 条件:マスコン、夏期
  • 失敗:早強使用 → 温度ひび割れ
  • 判断軸:低発熱+長期強度

3. 下水処理場

  • 条件:硫酸ガス
  • 失敗:普通N → 5年で劣化
  • 判断軸:化学抵抗性

4. 冬期土間

  • 条件:5℃以下
  • 失敗:低熱 → 強度遅延
  • 判断軸:初期反応性

混合セメントは“遅い”のではない

高炉セメント・フライアッシュセメントは「化学抵抗性」・「長期強度」・「低水和熱」を得るため、初期強度を犠牲にしています。

よくある失敗

事例原因結果
高炉B種で早期脱型初期強度不足角欠け
普通で耐圧版過大な温度応力表面ひび割れ

これらはすべて**“条件ではなく記憶で選んでいる”**典型です。

「現場あるある」誤判断ワースト5
  1. 早く終わらせたい → 早強
  2. 海の近く → 高炉
  3. 割れた → 配合のせい
  4. 強度出た → 問題なし
  5. 前も使った → 同じでいい

よくある質問(FAQ)

Q
強度が出ているのに割れるのはなぜ?
A

引張応力が原因です。

Q
高炉は弱い?
A

長期強度は、普通より高いです。

Q
判断材料は?
A

用途・環境・部材厚・施工時期・脱型日数など。

施工前チェックリスト設計者のための意思決定フロー

  • 脱型・荷重までの必要日数は?
  • 環境劣化因子はあるか?
  • 部材厚と拘束条件は?
  • 季節と養生温度は?
  • 強度“発現曲線”を確認したか?

まとめ

セメントは“材料”ではなく、構造物の寿命を決める設計要素です。

「なぜそのセメントか」
この問いに答えられるようになったとき、
あなたの現場は変わります。

セメントの作り方、規格値や特徴の違いを化学的に知りたい方はこちらの記事をどうぞ。

セメントの水和反応について、詳しく知りたい方はこちら。

セメントの比表面積と強度の関係など、比表面積について気になる方はこちらの記事へ。

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