2024年JIS改正対応|コンクリート混和剤の種類・機能・失敗しない選定術

材料

コンクリートの施工性や耐久性に作用する「化学混和剤」を専門的に解説。2024年JIS A 5308改正で追加された収縮低減剤や現場の失敗事例と管理術を、実務者向けに構造化して提示します。

混和材料には、「混和剤」と「混和材」の二種類がありますが、ネットの記事でも間違いが多く、両者を混同したままの記事が少なくない印象です。

この記事では、単なる種類解説ではなく、”なぜそうなるのか”“現場で何が起きるのか”まで踏み込んで解説します。

コンクリート用混和材について、用途や種類を知りたい方はこちらの記事へどうぞ。

スポンサーリンク

結論:混和剤は生コンの「施工性」と「品質」を制御するOSである

コンクリートにとって混和剤は、単なる“添加物”ではありません。—流動性・耐久性・強度発現・ひび割れ・施工性—これらすべてを裏側で制御する「オペレーティングシステム(OS)」のような存在です。

同じ材料、同じ配合でも、混和剤の選び方ひとつで「打ちやすいコンクリート」にも「扱いにくいコンクリート」にも変わります。

スポンサーリンク

要点:2024年JIS改正で何が変わったのか

2024年3月、JIS A 5308:レディーミクストコンクリートが改正されました。収縮低減剤がJIS材料として正式に追加。これまで“特殊用途扱い”だった収縮低減剤が、標準的な混和材料として明文化されました。

乾燥収縮が問題になる現場では、「選択肢」ではなく「設計条件」へと格上げされたと言えます。

【全体像】混和剤の種類と役割一覧

ここでは「化学混和剤には何があるのか」を一望できるよう、代表的な混和剤を一覧表にしました。

分類主な目的代表的用途
AE剤微細空気導入耐凍害性向上・ワーカビリティ改善
減水剤単位水量低減強度向上・ブリーディング低減
AE減水剤空気+減水一般RC・舗装
高性能減水剤大幅減水高強度・高流動
高性能AE減水剤減水+空気長距離運搬・高品質
遅延剤凝結遅延夏場・長距離
超遅延剤大幅遅延マスコン・構真柱
促進剤凝結促進寒中施工
収縮低減剤乾燥収縮低減ひび割れ抑制
増粘剤分離防止高流動・水中
防水剤水密性向上地下・水槽
防錆剤鉄筋腐食抑制塩害環境
発泡剤軽量化断熱・裏込め
流動化剤スランプ回復現場後添加

混和剤の原理・機構【実務的な使い分け】

混和剤は“入れれば効く薬”ではありません。どの分子が、どの反応に、どう作用するのか。ここでは、現場で使用頻度の高い混和剤について、「役割」+「原理・機構」+「注意点」をセットで解説します。

AE剤の役割

コンクリートに空気を混入する混和剤。また、ボールベアリング作用によりワーカビリティを改善し、単位水量の低減が可能。寒冷地や耐久性が求められる構造物には欠かせません。

AE剤を使わないコンクリートでも2%程度は空気が混入しますが、自然と混入されてしまう気泡とAE剤による気泡には、違いがあります。

  • エントラップトエア(自然に入る空気)・・・いびつな形で粒の大きい気泡
  • エントレイントエア(AE剤による空気)・・・球状をした細かい気泡
原理・機構

AE剤は界面活性作用により、直径30〜300μmの独立微細空気泡を形成します。この空気泡が、凍結時の膨張圧を吸収し、コンクリート内部を守ります。

注意点

空気量が1%増えるごとに、圧縮強度は約4〜6%低下するとされており、入れすぎは“強度低下の引き金”になります。

減水剤

一般強度域で安定した性能を発揮する、ベーシックな混和剤です。

原理・機構

セメント粒子表面に吸着し、分散力を与えることでフロック構造を緩め、単位水量を5〜10%低減します。

特徴

高性能減水剤ほどの分散力はありませんが、凝結遅延が少なく、汎用性が高いのが特長です。

AE減水剤

現在の生コン製造には欠かせない混和剤。AE剤・減水剤の両方の効果がある混和剤で一般強度域で安定して作用。

特徴

高性能AE減水剤ほどの分散力はありませんが、汎用性が高く、挙動が安定している。

高性能AE減水剤

AE減水剤よりも更に減水効果の高い混和剤。少ない水で高い流動性を出し、しかも長時間スランプを保持できます。

原理・機構

ポリカルボン酸系は、セメント粒子表面に吸着し、という“二重の分散力”で粒子同士を引き離します。

  • カルボキシル基による静電反発
  • 側鎖ポリエーテルによる立体反発

この作用によりセメントのフロック構造が解体され、単位水量を20%程度減らしても流動性が維持されます。

現場での注意点

セメント種類の違いで挙動が変わる・温度依存性が高いため、温度管理や配合毎の管理に注意が必要。

流動化剤

「水を足さずに柔らかくしたい」そんな現場の“最後の切り札”です。

原理・機構

練混ぜ後に添加することで、既に形成されたフロック構造を再分散させます。コンクリートの強度を低下させることなく、ワーカビリティを回復させることが出来ます。

現場での注意点

効果持続時間は短く、長距離運搬には不向きです。

遅延剤・促進剤

一見“正反対”の薬ですが、どちらも水和反応速度の制御剤です。

原理・機構
  • 遅延剤:水和反応を一時的に抑制
  • 促進剤:C₃S水和を促進し初期強度を向上
用途

夏場の打設や寒中コンクリートなど、施工条件に応じた反応制御が可能になります。

収縮低減剤(2024年JIS改正対応)

2024年のJIS改正で、正式に使用が認められた注目材料です。JIS規格では、JIS A 6211「コンクリート用収縮低減剤」として規格化されています。

原理・機構

毛細管水の表面張力を低下させ、乾燥時に発生する引張応力を抑えることで、乾燥収縮ひび割れの発生を抑制します。

【専門解説】界面活性作用と“ボールベアリング効果”の化学

“界面活性作用“

混和剤はなぜ流動性を上げられるのか?答えは、界面活性作用です。高性能AE減水剤などの分子は、セメント粒子の表面に吸着し、同じ電荷を与えます。

すると粒子同士が反発し、ダマがほどけるように分散します。これが「少ない水で流動性が良くなる」正体です。

“ボールベアリング効果”

AE剤の作用により発生した球状の微細な空気泡が転がることで、砂利と砂の間を滑る潤滑剤のように働きます。

この二つの効果により、単位水量を低減しても施工性を得られるという現象が起こります。

環境で“同じ配合”は存在しない

環境条件混和剤の影響
夏場(30℃超)スランプ急落・凝結促進
冬場(5℃以下)初期強度不足・硬化遅延
長距離運搬流動性ロス

混和剤は環境によって影響・性能の変化が大きくなります。だから地域や季節に対応した設計・管理が必要なのです。

現場の一次体験:空気が入らない高強度コンクリート

ある高強度コンクリート現場での話です。配合設計通りに高性能AE減水剤を使用しているのに、どうしても空気量が上がらない。使用量を増やすと今度は以下の問題が発生しました。

  • スランプ過大
  • 分離
  • 凝結遅延

結局、原因はセメントのブレーン値+骨材の凝集剤による吸着過多でした。

教訓

“効く”混和剤ほど、効きすぎると制御不能になる。

FAQ

Q
AE剤を入れすぎると?
A

空気量1%増加で、圧縮強度は約4~6%低下します。

Q
高性能AE減水剤とAE減水剤の違いは?
A

単位水量低減率とスランプ保持性能です。

Q
収縮低減剤の原理は?
A

毛細管水の表面張力を下げ、引張応力を抑えます。

Q
後添加は可能?
A

流動化剤のみ現場添加が可能です。が、化学混和剤の後添加について2024年改正において議論が行われており、今後の改正では可能となるやもしれません。

施工前チェックリスト

  • 使用目的を明確化
  • 季節補正を考慮
  • スランプ保持時間を確認
  • 混和材との相性を確認

コメント

タイトルとURLをコピーしました