コンクリート主任技士とは、公益社団法人日本コンクリート工学会が主催する試験に合格した者が登録できる民間資格です。
過去5年ほどの合格率の推移は約13%程度で、合格ラインはおおよそ70~80%程度の正答率が基準となっています。
合格率だけで比較すると「社労士・行政書士・通関士」などという国家資格と同程度の数字であり、そういう意味では難易度は難しい方の試験だという見方もできます。
しかしながら、受験者数の少なさや合格ラインの変動といった点を踏まえると、サボらず勉強すれば合格できる試験であるとも言えます。
そして主任技士試験の合格を左右するのは、やはり小論文の点数によるところが大きいのも事実です。
この記事では、コンクリート主任技士試験の小論文について、傾向と対策を解説していきます。
令和3年度コンクリート主任技士試験 小論文の概要
コンクリート主任技士試験は、平成25年度から出題形式が変更されています。
従来は、一次試験での筆記(択一と小論文)と二次試験での口述試験(面接)という形式でしたが、二次試験が廃止され、代わりに小論文課題が1課題→2課題へと変更されました。
ですが令和2年度は、コロナ禍の影響?!により試験時間が3.5時間→3.0時間に短縮、小論文についても1課題のみ(特定テーマに関する課題)の出題となりました。
今年度も同様に、試験時間は3.5時間→3.0時間に短縮されている事から、
小論文の課題も1課題(特定テーマに関する課題)のみの出題ではないかと予想されます。
小論文の過去の傾向は4つのテーマに集約できる
過去10年の特定テーマに関する出題は、4つのテーマに集約できます。
- 環境負荷低減
- 耐久性の向上
- 生産性の向上
- 新しい技術
過去10年は、この4つの中からいずれか1つもしくは複合した形で出題されていて、これら以外の出題はありません。
出題の表現として、少子高齢化・自然災害・IT(情報化)などという形で問われることもありますが、内容は4テーマと同様です。
記述の内容は、次の通りです。
回答形式は、次の様に問われます。
- 技術的知識
- 業務との関係
- 今後の展望・自身の考え
さらに近年では、各記述に対して行数=文字数の指定がされています。
ここまでが、小論文試験の概略になります。
テーマについて、過去問の模範解答は教えてくれない
択一問題に関しては、問題集の過去問を何度も繰り返し解くという勉強方法をする事が良くあります。主任技士試験は、過去問と似た問題が出る傾向があるので、その方法でもある程度点数は取れるでしょう。
しかし小論文に関しては、過去問の模範解答だけでは難しいというのが本音です。
模範解答の解説は記述内容の解説がメインで、
など、基本かつ重要な解説が抜けています。
ですから、参考書の模範解答を繰り返し読むよりも
- テーマの社会情勢・社会的ニーズ
- テーマに沿ったキーワード
- テーマ・キーワードの技術的知識
をしっかり調べて、出題の意図を確認することから始めましょう。
テーマとコンクリートの関連・キーワード
テーマについての社会情勢・社会的ニーズとコンクリートとの関係を整理します。
環境負荷低減
- 温室効果ガス(CO2)の抑制
- 産業廃棄物の発生・抑制・処理
- 自然環境の保護・資源循環
セメントは、製造過程で多量のCO2を発生させます。コンクリートに使用するセメント量を減らせば、CO2排出の抑制となります。そのため、セメントの代替品として各種副産物を使用することが、CO2排出の抑制になるということです。
残コンや戻りコン、ミキサー車やプラントの洗浄によって発生したスラッジ水・回収骨材は産業廃棄物になります。そのため、スラッジ水・回収骨材を利用することが、産業廃棄物の抑制になるということです。
回収骨材の利用により、本来必要となるはずだった天然骨材の採掘量が減り、自然環境の保護になります。解体コンクリートからの再生骨材の使用により、新たな資源が不要となるため、資源循環が可能になります。
またどちらも、骨材の輸送にともなうCO2の排出抑制につながります。
耐久性の向上
- 自然災害
- 少子高齢化
- 早期劣化の防止
- 耐久性の付与
激甚化する自然災害に対して、防災・減災、安全・快適な社会を守るために高い耐久性のコンクリートが求められています。
少子高齢化にともない税収や働き手が減少する中、老朽化したインフラの維持管理や更新にあたり、耐久性の向上によるライフサイクルコストの最小化が求められています。
ライフサイクルコストとは、建設~解体までの間に必要となる総額費用(労力)のこと。
耐久性が高いと、使用期間が伸びる・途中のメンテナンスが減るため、コストが小さくなる。
生産性の向上
- 規格の標準化
- 電子化
- 省力化
- 新技術
少子高齢化にともない働き手が減少する中、人材不足となる事が予想されます。減少する人材の代わりに生産性を向上する事で、人材確保の効果を生む必要があります。
生産性の向上とは、同じ労力でより成果を上げるようにすること。
今回の場合、少ない労力(人材)で同じ成果を保つため、生産性を上げる必要があるろいうこと。
コンクリートにおいては、製造・管理の電子化・省略化、施工性を向上させる新技術などにより、生産性の向上が期待されています。
新しい技術
- 超低収縮コンクリート
- 低炭素コンクリート
- 高流動・中流動コンクリート
- 1DAY PAVE
各テーマに関連した新技術として、
- 低炭素コンクリート…環境負荷低減
- 低収縮コンクリート…耐久性の向上
- 高流動・中流動コンクリート…生産性の向上
- 1DAY PAVEは…耐久性の向上・生産性の向上
があてはまります。自分が記述した新技術が、どうように社会に貢献できるかは問われやすい部分ですので、新技術とテーマの関係は整理しておくべきでしょう。
2019年にJIS A 5308が改正され、スランプフロー管理の普通コンクリートが追加されました。そういった点から高流動・中流動コンクリートが狙い目かもしれません。
まとめ
コンクリート主任技士試験の小論文について、傾向と対策について解説しました。
テーマとコンクリートとの関係について、整理すべき考え方を記事にしました。次の記事では、もう少し具体的な小論文の文章構造や組み立てについて、解答例を交えて解説します。
コメント