JIS A 5308[レディーミクストコンリート]では、コンクリートに使用する骨材として、その種類と品質について具体的に規定されています。コンクリート用骨材として使用が認められているものには、以下の骨材があります。
- 砂利・砂
- 砕石・砕砂
- スラグ骨材
- 人工軽量骨材
- 砕石骨材H
JIS A 5308では、砂利・砂の品質を標準として、その他の各種骨材について、個別に必要な項目を規定しています。
複数の骨材を混合(混ぜ合わせて)して使用する場合は、JIS A 5308+骨材ごとのJIS規格の両方に適合する必要があります。
その他の骨材も、同様にJIS A 5308+骨材ごとのJIS規格の両方に適合する必要があります。
骨材に関して、種類、分類や役割などについては、こちらの記事で解説しています。
骨材の粒度
粒度とは、骨材の粒=大きさを表すものです。骨材の粒度は、コンクリートのワーカビリティに影響を及ぼすため、大小粒がバランス良く混合されていることが重要となります。
JIS A 5308では、粒度範囲(各大きさごとの割合)が規定されていて、粒度はふるい分け試験を行い、粒度曲線・粗粒率(F.M.)などで表します。
種類 | 最大寸法 | ふるいを通るものの質量分率(%) | |||||||||
ふるいの呼び寸法(㎜) | |||||||||||
25 | 20 | 15 | 10 | 5 | 2.5 | 1.2 | 0.6 | 0.3 | 0.15 | ||
砂利 | 20 | 100 | 95~100 | - | 30~70 | 0~10 | 0~5 | - | - | - | - |
砂 | 5 | - | - | - | 100 | 90~100 | 80~100 | 50~90 | 25~65 | 10~35 | 2~10 |
骨材の粗粒率の求め方
JISに規定された公称目開きのふるいを用いて、骨材をふるい分けます。その結果をもとに計算によって算出します。
ふるいの呼び寸法(㎜) | 粗骨材 | 細骨材 | ||
各ふるいに留まる量の累計 | 各ふるいに留まる量の累計 | |||
質量(g) | % | 質量(g) | % | |
25 | 0 | 0 | ||
*20 | 252 | 6 | ||
15 | 1565 | 37 | ||
*10 | 3037 | 71 | 0 | 0 |
*5 | 4189 | 98 | 32 | 6 |
*2.5 | 4255 | 100 | 77 | 15 |
*1.2 | 100 | 152 | 29 | |
*0.6 | 100 | 302 | 58 | |
*0.3 | 100 | 415 | 79 | |
*0.15 | 100 | 493 | 94 | |
受け皿 | - | 525 | ||
質量合計(g) | 4255 | 525 | ||
粗粒率 | 6.75 | 2.81 |
粗粒率=各ふるいにとどまる量(*付きのふるいのみ)の合計/100
上のグラフは、JISで規定された粒度範囲と表の結果をプロットしたものです。点線内を試験結果が通っていれば、コンクリート用骨材として使用できることになります。一般的に細骨材で2.70±0.3程度、粗骨材で6.60±0.3程度が粗粒率(F.M.)の標準値となります。
粗粒率は、骨材の平均的な大きさを数値化したもので、数字が大きいほど粗い粒度であることが感覚的に読み取れます。一方で数字の足し算であるため、同じ粗粒率であっても粒度曲線は無数にあり、粗粒率だけで骨材の良否を決める事は難しいと言えます。
骨材の密度・吸水率
骨材はコンクリートの大部分を占める(全体の70~80%)ため、骨材自体にも物理的に硬いことが求められます。密度・吸水率は、その程度を把握するのに役立ち、JIS A 5308では、絶乾密度・吸水率として規定されています。
砂 | 砂利 | |
絶乾密度(g/㎤) | 2.5以上 | 2.5以上 |
吸水率(%) | 3.5以下 | 3.0以下 |
骨材の密度には、以下の2種類の密度があります。いずれも内部の空隙を含めた、見かけ密度であることに注意が必要です。
絶乾密度Dd(g/㎤)= | 絶乾状態の質量/表乾状態の容積(内部空隙を含んだ全容積) |
表乾密度Ds(g/㎤)= | 表乾状態の質量/表乾状態の容積(内部空隙を含んだ全容積) |
吸水率は、表乾状態における骨材の内部空隙に含まれる水の質量から求められます。
吸水率(%)= | 表乾状態で骨材に含まれる水量/絶乾状態の質量 |
密度と吸水率にはある程度相関があり、密度が大きい(内部空隙が少ない)ものには吸水率が小さいことが多く、逆の場合も同様なことが多いと言えます。
骨材の状態は、吸水の程度によって4つの種類に分けられます。
上の図の青い塗りつぶしが水分とします。気乾状態では水が内部に少し、表乾状態では水がぎっしり、湿潤状態では、表面にも水分があり濡れている状態となります。
一般に骨材は湿潤状態もしくは気乾状態で存在しています。絶乾・表乾状態は、骨材の物性を把握するためやコンクリートの配合を定める場合などに、人の手によって管理された状態です。
骨材に含まれる有害物
骨材に含まれる不純物や有機物は、強度や耐久性を損なう有害物となるため、その含有量について規定があります。JISで規定された有害物には以下の様なものがあります。
有害物の種類 | 砂 | 砂利 |
粘土塊量 | 1.0%以下 | 0.25%以下 |
微粒分量 | 3.0%以下 | 1.0%以下 |
有機不純物 | 標準色と同じ、又は淡い | - |
塩化物量(NaCl) | 0.04%以下 | - |
- 粘土塊とは、文字通り粘土質の土の塊を言います。粘土塊はコンクリート内部にそのまま塊として残るため、強度低下の原因となります。
- 微粒分とは、75μmふるいを通過する微粉末を言います。泥分(シルト・粘土)由来のものと、砕石を砕く際に生じる石粉(砕石粉)由来のものがあります。微粒分が多くなると、単位水量の増加や強度・耐久性の低下を招きます。
- 有機不純物とは、腐植土や泥分に含まれるフミン酸などの有機酸を言います。セメントの硬化・凝結不良を招きます。
- 塩化物量(NaCl)は海砂に含まていることが多く、コンクリート内部の鉄筋が腐食する原因となります。コンクリートに対しては、凝結を促進し初期強度を増大する効果があります。また、ナトリウムイオンがアルカリシリカ反応を促進させる、といった側面もあります。
骨材の安定性
コンクリートの耐久性には、骨材の耐久性の良否が関わっています。骨材に作用する物理的作用と化学的作用について規定があります。
物理的作用 | 砂 | 砂利 |
安定性 | 10%以下 | 12%以下 |
すりへり減量 | - | 35%以下 |
- 安定性とは、凍結融解作用に対する耐久性を言います。骨材内部の水分が凍結する際の膨張圧に対して、どの程度の耐久性があるかを示しています。
- すりへり減量とは、摩耗作用に対する耐久性を言います。道路舗装や工場の土間などコンクリート表面に対して摩耗作用がかかる状況で、どの程度の耐久性があるかを示しています。
一般に吸水率の大きい骨材は、安定性・すりへり減量が劣るとされています。
化学的作用として、アルカリ骨材反応があります。骨材に含まれる鉱物の一種がコンクリート中のアルカリイオンと反応し、膨張を示すことで、コンクリートにひび割れを生じさせます。
アルカリシリカ反応性に関して、数値での規定はなく、「無害」または「無害でない」のどちらかで判定します。アルカリ骨材反応については、こちらも記事で詳しく解説しています。
その他の物性値について
骨材の品質として、JISには規定がないが、コンクリートの配合に影響を及ぼす品質特性であり、材料の良否を考える上で重要となる項目です
粒形
粒形とは、骨材粒子の形を言い、丸い・角ばっている・平べったいなど数字では表れない感覚的なもの。
粒形はコンクリートのワーカビリティーに関係し、丸みがあるものの方が有利となり、角ばっている・細長い・平べったいなどの骨材では、単位水量が多くなります。
単位容積質量(実積率)
粒形の良否を数字で比較する方法として、単位容積質量(実積率)があります。骨材の最大寸法、粒度曲線が同じだった場合、粒形が球状に近づくほど単位容積質量(実積率)が大きくなります。
単位容積質量とは、単位当たりの質量を示し、一定サイズの容器にどのくらいの量を積め込むことができるかを数値化したものです。
1Lの容器に水を詰めたら、その時の重さは1kgですね。これは水が容器の形に合わせて自由に形を変えるからです。骨材の場合は形を変えることは出来ないので、積めていけば、容器の中に隙間が生まれます。この隙間の量は、丸い形より角ばった形の方が多くなります。
単位容積質量とは、どのくらい容器に骨材が収まったかを数字にしたもので、実積率はそれを割合(%)で示したものです。単位容積質量(実積率)の数値が大きいほど、丸い粒形の骨材であることが分かります。
単位容積質量(kg/L)= | 容器に積んだ骨材の質量/容器の容積 |
実積率(%)= | (単位容積質量/骨材の絶乾密度)×100 |
各種骨材で個別に規定されている項目
各種骨材の原料・製造方法・使用方法に合わせて、骨材ごとに個別の規定値が定められています。
JIS A 5005[コンクリート用砕石及び砕砂]
粒形判定実積率という規定があります。
砕石・砕砂は、原石を破砕して製造するという実態から、粒形が角ばっている・平べったいことが多いため、粒形に関して規定値を設けています。
JIS A 5011-1~5[コンクリート用スラグ骨材]
化学成分の規定と環境安全品質基準という規定があります。
産業副産物という性質上、一定程度の化学成分が含まれるため、成分量に対して基準値が設けられています。また、カドミウム・鉛・ひ素・水銀などの有害物質の含有量と、成分の溶出量の基準値が設けられています。
JIS A 5002[構造用軽量コンクリート骨材]
単位容積質量と圧縮強度の規定があります。軽量コンクリートを製造するための材料であるため、単位容積質量に規定値が設けられています。
また、軽量=密度が小さいということは、骨材に多量の空隙があることとなります。空隙が多いと骨材の強度が低くなることから、圧縮強度に規定値が設けられています。
単位容積質量と圧縮強度は、水セメント比40%のコンクリートを製造し、そのコンクリートを用いて試験を行います。
JIS A 5021[コンクリート用再生骨材H]
不純物量の規定があります。
コンクリート構造物の解体ガラなどを原料として製造されるため、「ガラス・石膏ボード・プラスチック・アルミニウムなどの金属・木・紙」などコンクリートの品質に悪影響を及ぼす不純物が、有害量含まれていないことを規定しています。
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