表面水とは、骨材(細骨材・粗骨材)の表面に付着している水分を指します。
表面水率は骨材の濡れ具合を表す指標であり、コンクリートの性能(強度・耐久性・コンシステンシー)を左右するため、正しく管理する必要があります。
この記事では、表面水率と吸水率の違い、測定方法や計算式、コンクリートの配合、表面水の注意点などについて説明していきます。
表面水率の定義と表面乾燥飽水状態との関係
骨材の表面水率は、骨材粒子表面に付着している水量(表面水)を、その骨材の表面乾燥飽水状態(表乾状態)での質量で割ったもので表されます。
つまり、表乾状態の骨材質量を基準にした、付着水の割合を示す指標です。
表面水率 H=付着水量÷表乾質量×100%

たとえば「表面水率5%」とは、表乾質量1000gの骨材に50gの表面水が付着していることを意味します。
表乾状態とは、「骨材の表面から付着水を取り除いて乾燥させ、内部の空隙はすべて水で満たした状態」を指し、一般にコンクリートの配合設計では、表乾状態の質量を基準とします。
骨材の含水率や吸水率は内部の水分(空隙内水分)を含むのに対し、表面水率はあくまで表面の水分のみを表す点で異なります。
- 吸水率(%)=吸水量÷絶乾状態の質量×100 ※分母が絶乾質量
- 含水率(%)=含水量÷絶乾状態の質量×100 〃
- 表面水率(%)=表面水量÷表乾状態の質量×100 ※分母が表乾質量

コンクリートに対する表面水の影響
コンクリートの製造現場では、水セメント比やスランプを配合設計通りに保つため、骨材の表面水を考慮して単位水量を調整しています。
骨材表面の余分な水分(表面水)は、実質的に練混ぜ水の一部としてコンクリート中に加わるため、水セメント比に影響します。すなわち、単位水量を調整しないと表面水量が多いほど実質的な水セメント比は設計値より大きくなり、スランプも大きくなります。
そのため、設計した単位水量(水セメント比に基づく水量)から、骨材の表面水量分だけ単位水量を減らし製造します。
単位水量180kg、細骨材833kgで表面水率5%の場合
骨材表面水量分41.65kgは練混ぜ水から差し引き、必要水量を約138.35kgとします。一方、細骨材量は表面水を含む質量833kg+41.65kg=874.65kgとなります。
このように表面水量を単位水量から減らし、骨材量に加算することにより、設計上の単位水量と、骨材量を維持します。
表面水率の試験方法
表面水率を測定する試験方法は、JIS規格に定められています。
JIS A 1111(細骨材の表面水率試験方法)・JIS A 1125(含水率に基づく表面水率試験)
JIS A 1803(生産工程用・粗骨材の表面水率試験)・ZKT-108(粗骨材の表面水率試験(簡易法))
以下に主な手順を示します。細骨材は質量法または容積法のいずれかで試験します。例えば質量法では次のように実施します(いずれも約1kgの試料で2回測定し、平均値をとる)
- 1試料の質量(m₁)を測定
試料(骨材)の質量を測定
- 2水を入れた容器の質量(m₂)を測定
容器に満水まで水を入れ質量を測定
- 3容器、試料、水の合計質量(m₃)を測定
試料を容器に投入、水を満たし空気を追い出す。追い出した後に、再び水を足し満水にして、試料・水・容器の合計質量(m₃)を測定
- 4試料で置き換えられた水の質量(m)を計算
置換水量m=m₁+m₂−m₃
容積法の場合、質量を測定する代わりに、容積を測定します。
- 試料の質量を測定(=m₁)
- 容器に試料を覆うのに十分な量の水(v₁)を入れ、その量を測定(=m₂)
- 次に、容器に試料と、先ほど測定した量の水を入れ、試料+水の総容積(v₂)を測定(=m₃)
- 試料で置き換えられた水の体積(v)を計算:置換水量v= v₂− v₁(=m)
このvを水の質量(1mL=1g換算)とみなし、上記質量法と同様にHを算出します。
置換水量(m)、試料質量(m₁)、骨材の表乾密度(ds)を用いて算出し、小数点第1位に四捨五入します。
ds・m—m₁ | ||
表面水率H(%)= | ――――――― | ×100 |
ds(m₁—m) |
考え方としては「試料で置換された水の質量mおよび試料の表乾密度」から表面水量を割り出します。例えば、
表乾密度が2.6g/cm³の細骨材試料400gで置換水量m=170gの場合
(2.6×400-170)/2.6(170-400)×100=7.02≒7.0%
粗骨材では試験器具や手順が異なります。例えば生産工程用・粗骨材の表面水率試験(JIS A 1803)では、次のように行います
- 1試料の質量(m₁)を測定
試料(骨材)の質量を測定
- 2容器の水中質量(a)を測定
容器を水槽などに入れた状態で吊るし、水中での質量を測定する。
- 3試料を容器に入れ、容器+試料の水中質量(b)を測定
容器に試料を入れ、水中で軽くかくはんし、骨材粒子間の空気泡を除去する。その後、容器ごと水槽などに入れた状態で吊るし、水中での質量を測定する。
- 4試料の水中質量(m₂)を算出
容器+試料の水中質量(b)から容器の水中質量(a)を差し引き、試料の水中における見掛けの質量を求めます。
試料質量(m₁)、試料の水中質量(m₂)骨材の表乾密度(ds)を用いて算出し、小数点第1位に四捨五入します。
m₁(ds-1) | ||
表面水率H(%)=( | ――――――― | -1)×100 |
m₂・ds |
表面水率における注意点
骨材含水状態の管理:生コンプラントでは、細・粗骨材の表面水率を定期的に測定し、製造条件に反映します。JIS では、細骨材は午前・午後各1回以上の測定、粗骨材は、1回以上/月の測定が義務付けられています。
単位水量・骨材量の補正:JIS規格に基づく補正方法(上記のように“水量から引き、骨材量に足す”方法)に従うことで適切に調整します。
測定精度への配慮:測定は2回測定し、平均値を試験値とすること。各測定値の平均からの差は0.3%以下とするなどの精度基準が定められています。また、試料は代表性を保つよう迅速に採取し、測定までの乾燥・蒸発を防ぐため湿布で覆うなど注意します。
配合設計上の注意:JISや各学会の仕様書では、配合設計時に骨材を表乾状態とみなして計算します。したがって、実測した表面水率は設計値との調整に用いるだけで、配合が常に一定となるよう行います。
以上のように、表面水率はJIS規格に沿った方法で正確に測定し、その結果を製造条件に反映させることでコンクリートの品質を安定させます。
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