コンクリート構造物において、強度(圧縮強度)はもっとも重要な性能の一つであり、劣化に関連した物理的特性の変化に深く関係しています。
そのため構造物の診断において、対象部位の強度確認が重要となります。
強度試験の結果は、施工時の書類によって確認することは可能ですが、経年による「強度特性の変化」や「部材・位置による差異」もあるため、調査時点での圧縮強度を把握する必要があります。
コンクリートの強度を調べる方法には、破壊試験による方法や非破壊試験による推定など、次の手法があります。
- コンクリートコアによる手法
- 反発度による手法
- 局部破壊による手法
コンクリートコアによる手法
コンクリートコアとは、実際の構造物から切り取ったサンプルのことをいいます。それに対して、コンクリートの強度管理用のサンプルを供試体と呼びます。
生コンを打設する際、同じ生コンを現場で採取し供試体を作製します。その後、所定の日数を経て強度試験を行い、構造体の強度を確認しています。
コンクリートコアは、構造物の床や壁に直接穴をあけてしまうため、通常ではコンクリートコアを強度試験に用いることはなく、構造物の診断など特殊なケースで行われます。
コンクリートコアの特徴
構造物から直接切り取るため、試験結果が正確であり信頼性が高いと言えます。
また、圧縮強度の確認以外にも中性化や塩化物イオン含有量、ASRなどの試験を行う場合にも使用します。
コンクリートコアの注意点と手順
コンクリートコア強度は、次のような条件が試験結果に影響を及ぼすため、コアの採取箇所について、事前の検討が必要です。
採取するコアの寸法は、JIS A 1107では、粗骨材の最大寸法の3倍以上とされていますが、鉄筋のあきなど制約がある場合を除いて、通常はφ100㎜のコアを採取します。
コア採取の位置を選定したら、内部の埋設物(鋼材・配管・電気配線)を確認します。設計図をもとに、鉄筋探査などを実施してコア抜きの位置を決定します。
鉄筋のあきが狭く、φ100㎜のコアが採取出来ない場合の解決法として、直径20~30㎜程度の小径コアによる推定方法が研究されています。
コンクリートコアについて、詳しくはこの記事で解説しています。
反発度による手法
コンクリート表面をハンマーで打撃した時の反発度から強度を推定する方法を、反発度法といいます。
国内においては、シュミットハンマーという商品を使用される事がほとんどで、反発度法という名称よりも、シュミットハンマーによる試験方法という方が話が通じやすい。
反発度法は、試験方法が簡便であることや構造物を破壊することなく測定できる、といった利点があります。
反発度法の注意点と手順
反発度法はリバウンドハンマー(シュミットハンマー)と呼ばれる機器で、コンクリート表面を打撃します。
打撃したハンマーは、硬いコンクリート表面で跳ね返ります(リバウンド)。跳ね返り高さ(反発度)とコンクリートの硬度の相関関係から、コンクリートの強度を推定する方法が、反発度法になります。
ハンマーの打撃力の一部は、コンクリート表面に変形として吸収されるため、次のことが言えます。
コンクリートの表面硬度が大きい(強度が高い) | 変形量が少ない | 跳ね返り(リバウンド)は大きい |
コンクリートの表面硬度が小さい(強度が低い) | 変形量が多い | 跳ね返り(リバウンド)は小さい |
反発度法では、表面特性から内部コンクリートの強度を推定する手法であるため、コンクリート表面の特性・状態(表面の乾湿や粗さ)の影響を受けます。
また、経年劣化による表面強度と内部強度に差がある場合、反発度法では内部コンクリートの強度を推定することはできません。
反発度法(シュミットハンマー)について、詳しくはこの記事で解説しています。
局部破壊による手法
局部破壊による手法は、「破壊試験であるコンクリートコアによる手法」と「非破壊試験である反発度法」の中間的位置にあたる手法で、微破壊試験ともいえます。
コンクリート表面の局部的に破壊する手法で、破壊試験の方法に次のような種類があります。
- プルオフ法
- プルアウト法
- ブレークアウト法
- ピン貫入法
いずれの試験も、コンクリートの破壊に対する抵抗力から強度推定を行うため、比較的良好な推定が可能です。
プルオフ法
コンクリート表面を鋼製ディスクで引張り、引張荷重から求めたプルオフ強度をもとに圧縮強度を推定します。
- 使用機器 [鋼製ディスク・積荷装置・荷重計測装置]
- 鋼製ディスクは直径50㎜・75㎜が粗骨材最大寸法の3倍以上、厚さをディスク直径の40%とすると均一性が得られます。
- 計測方法
- コンクリート表面をワイヤブラシなどで粗骨材が見える程度までこすり、エポキシ樹脂を使用し鋼製ディスクを接着します。
- ディスクに積荷装置・荷重計測装置をセットし、毎秒0.05±0.03N/㎟で引っ張り、引張破断した時の最大荷重Pと破断面積Aからプルオフ強度σを求めます。
プルアウト法
コンクリート表面にセットしたボルトを引き抜き、その時の最大荷重から圧縮強度を推定します。
- 使用機器 [加力プレート及び引抜きボルト・積荷装置・荷重計測装置]
- 加力プレートの直径は粗骨材最大寸法の1.25倍以上とし、標準では25㎜になります。
- 計測方法
- コンクリート表面にあらかじめセットしておくプレセット型と硬化したコンクリートにドリルで穴を開けセットするポストセット型があります。
- 引抜きボルトをコンクリート表面に対し垂直に設置し、積荷装置・荷重計測装置をセットし、最大荷重までに1.5±0.5minとなる速度で引き抜きます。
ブレークオフ法
コンクリート表面にコアスリット(切れ込み)を設け、コア上端を加圧し曲げ破壊を起こします。破壊時の曲げ折り耐力から圧縮強度を推定します。
- 使用機器 [ロードセル・油圧計・ハンドポンプ]
- コンクリート表面にスリットを設けるため、円筒型枠をあらかじめ埋設するか、二枚刃付きビットにてスリットを作ります。
- 計測方法
- ロードセルをコア頂点にセットし、コア軸に対して垂直に0.1±0.05kN/secの速度で積荷し、コア底破断時の油圧計のゲージ圧を曲げ折り耐力とします。
ピン貫入法(空気圧式)
コンクリート表面にピンを打込み、ピンの貫入深さから圧縮強度を推定します。
- 使用機器 [空気圧式釘打ち機・圧力計・貫入深さを測定するノギス・打込みピン]
- 太さの違う2種類のピンがあり、細いピンは10~26N/㎟程度、太いピンは10 N/㎟以下の推定範囲で使用します。
- 計測方法
- はじめに試験機の調整を行います。検定用ポリエチレンにピンを5本以上打込み、貫入深さの平均値が48±2㎜、変動係数2.0%以内となるように空気圧力の調整を行います。
- 検定した圧力で、コンクリート表面に垂直にピンを打込み、ピンの貫入深さをノギスで測定します。
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