あなたは、設計基準強度と品質基準強度の違いを説明できますか?
コンクリートの強度に関する用語はたくさんあります。その多くは似たような言葉が多く、勘違いしたり、意味を覚えるのに苦労します。
ボンヤリとは意味を分かっていても、多くの方が、ハッキリと意味や違いを知らないようです。
用語の意味を具体的に理解することで、勘違いやうる覚えを無くして行きましょう。
強度の用語
- 設計基準強度(Fc)
- 構造設計において基準とする強度、構造体コンクリートが満足しなければならない強度
- 耐久設計基準強度(Fd)
- 構造体コンクリートが、計画共用期間の級に応ずる耐久性を確保するために、必要とする強度
- 品質基準強度(Fq)
- 構造体が、要求される性能を得るために必要とされる、コンクリートの圧縮強度
- 構造体強度補正値(mSn)
- 調合強度を定めるのための基準とする、標準養生した供試体の圧縮強度と、保証材齢における構造体コンクリート強度、との差に基ずくコンクリート強度の補正値
- 調合管理強度(Fm)
- 調合強度を定め、調合強度を管理する場合の、基準となる圧縮強度
- 調合強度(F)
- コンクリートの調合を定める場合に、目標とする平均の圧縮強度
- 呼び強度
- コンクリートを発注する際の圧縮強度
各種基準強度の解説
設計基準強度とは
構造設計の時に基準とした強度の事で、構造安全性上必要な耐力や剛性を表し、Fc(エフシー)という記号で書きます。
つまり設計基準強度とは、建物に必要な耐力のことです。この建物の強さは、27N/mm²で設計しましたよ、という事を表しています。
一般的なコンクリートのFcは、18~36N/mm²が標準的な値になります。
耐久設計基準強度とは
ある期間の間、重大な劣化が生じないように、耐久性上必要な圧縮強度の基準値を表し、Fd(エフディー)という記号で書きます。
つまり耐久設計基準強度とは、建物に必要な耐久性のことです。この建物は、65年は崩れ落ちないように設計しましたよ、という事を表しています。
期間の定め方は以下の4つから選びます。
- 短期(おおよそ30年)18N/mm²
- 標準(おおよそ65年)24N/mm²
- 長期(おおよそ100年)30N/mm²
- 超長期(おおよそ200年)36N/mm²
品質基準強度とは
コンクリートが、求められる強さを得るために必要な圧縮強度を表し、Fq(エフキュー)という記号で書きます。
つまり建物に必要な耐力、耐久性の両方を表しています。この建物の強さは27N/mm²で、65年は崩れ落ちないように設計しましたよ、という事を表しています。
構造物の検査において、判定基準となる値でもあります。
構造体強度補正値とは
基準とするコンクリートの圧縮強度と、構造体コンクリート強度との差。一般にmSn(エス)という記号で書きます。
ここで、コンクリートの検査について少し説明します。
コンクリートの検査は、型枠にコンクリートを打ち込むときに、検査用として供試体と呼ばれるサンプルをつくる、というやり方をします。
すると、供試体の圧縮強度と実際に打ち込んだ構造体の圧縮強度に、強度差があることが分かりました。
その強度差が、構造体強度補正値mSnになります。
mSnは、セメントの種類と予想平均気温により標準値が決められており、一般に3か6になります。
構造体強度補正値は、この記事だけで理解するのは難しいかもしれません。下の記事でより分かりやすく詳しく解説しています。
そして、なぜ構造体強度補正値が必要になるのかは、コンクリート強度の増加の理由に関係しています。その理由についても、こちらの記事で詳しく解説しています。
調合管理強度とは
品質基準強度Fqと構造体強度補正値mSnを足した値。Fm(エフエム)という記号で書きます。
調合強度とは
圧縮強度のバラつきを加味して、調合管理強度に割り増しをした強度。F(エフ)という記号で書きます。
呼び強度とは
コンクリートを発注する時の取引上の圧縮強度
荷卸し地点のコンクリートで、JISに規定された管理をした場合に保証される、コンクリート自体の強度値の事をいいます。
コンクリート自体の強度は、配合設計で決めた所定の材齢まで標準養生を行ったときの強度であり、構造体の強度と同一ではありません。
「コンクリート=材料」としての保証強度が呼び強度で、品質保証上の数字であり、単位はありません。
同じ呼び強度を発注しても、製造工場ごとで調合強度は違うため、実際に強度試験をした場合、強度結果には幅がありますが、どの工場でも呼び強度の値以上を保証しています。
一般的には、呼び強度=Fm(調合管理強度)とすることが多いです。
コンクリート強度の定め方
ここまでが理解できていれば、コンクリートの強度については完璧ですよ!
難しい言葉が多くて、よく分からないのぉ
何やらしっくりきていないみたですね?
たしかに言葉の説明だけでは、イメージしずらいですよね。
それでは、例題をみながら一緒にやってみましょう!
とある駅前の土地に、5階建ての賃貸マンションを建て、家賃収入を得る計画を考えました。設計基準強度Fc(地震や衝撃に耐える力)は、27N/mm²として設計しました。
耐久設計基準強度Fd(日射や雨水などに耐える期間)は、償却期間を考えて50年と設計しました。Fdは、標準(おおよそ65年)の24N/mm²になります。
- 外力に抵抗する強さ=地震や衝撃に耐える力・・・Fc=27
- 環境作用に耐える強さ=日射や雨水などに耐える期間・・・Fd=24
品質基準強度Fqとは、耐力・耐久性の両面から必要な強度の事。
品質基準強度Fq(コンクリートに求められる強さ)は、FcとFdのどちらか大きい方になります。
Fc=27 Fd=24 Fqは、FcとFdのどちらか大きい方なので Fq=27(Fc27 > Fd24)となります。
ここまでの条件を一度整理しておきましょう!
- 設計基準強度Fc=27
- 耐久設計基準強度Fd=24
- 品質基準強度Fq=27
建物の強度としては、27N/mm²であれば問題ないとわかりました。では、建物の強度を27N/mm²以上につくるためのコンクリートはどのくらいの強度が必要でしょうか?
ここで、構造体強度補正値mSnの出番です。
建物自体の必要な強度は、27N/㎟です。構造体強度補正値mSnは、コンクリート自体と構造体コンクリートの強度差でしたね?
補正値という事は、27N/㎟のコンクリートで建物を作っても、建物自体は27N㎟の強度にならないと言うことです。
構造体強度補正値mSn の分だけ(通常は3or6 N/㎟)強度の高いコンクリートで建物をつくらなければなりません。
Fq (27) + mSn (3もしくは6) = 調合管理強度Fm (30もしくは33)
調合管理強度 Fm = 30、33としなければ、必要な強度が得られないという事です。 構造体に必要な強度(Fq)+ 供試体と構造体の強度差(mSn)とすることで、
供試体の強度検査の値が調合管理強度(Fm)以上であれば、構造体コンクリートの強度が品質基準強度Fqを満足しているという事になるのです。
いよいよ最後です。
ここまでで、調合管理強度Fm (30もしくは33) が決まりました。では、実際のコンクリートは 30もしくは33 N/mm² で製造して安心でしょうか?
答えはノー!です。
コンクリートは、製品の特性上、品質にある程度のバラつきがあります。 そのバラつきの分だけ、 調合管理強度Fmよりも高い強度を目標値として、製造しなければなりません。
調合管理強度 + バラつき分の強度 = 調合強度とすることで、調合管理強度を下回らないようにしています。
こうして調合強度を定めた後、コンクリートの発注をする際の強度を、呼び強度といいます。無事に呼び強度を定めて、コンクリートを発注することが出来ました。
この一連の流れが、コンクリートの強度の定め方になります。
コンクリートの設計基準強度(Fc)と呼び強度の関係について、すぐに理解するのは大変かと思います。
コンクリートの強度について知ると、構造体強度補正値の意味も理解しやすくなり、Fcと呼び強度の関連性も分かりやすくなると思います。
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