コンクリートの運搬方法には何があるのか?

施工

JASS5では、コンクリートの運搬の定義として「コンクリートの製造地点から打込み地点まで運ぶ事」とされています。

つまり生コン工場からポンプ車の筒先までを「運搬」と呼んでいます。

運搬の要点は、「生コンの品質が変わらないこと」と「スムーズに打込める方法とする」ことです。

この記事では、コンクリートの運搬方法について、説明します。

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輸送と運搬の違いについて

冒頭で運搬の定義について書きましたが、この記事では、生コン工場から現場までを「輸送」、現場内でのコンクリートの移動を「運搬」と分けて説明していきます。

輸送の基準

JIS A 5308では、生コンの運搬車とその運搬時間について規定があります。

スランプ運搬時間の限度
ミキサー車(トラックアジテータ)限定されない1.5時間以内
ダンプカー(ダンプトラック)2.5cmのみ1時間以内

ミキサー車は、正式にはトラックアジテータという名前が正しい呼称です。

業界では、ミキサー車のことを「アジ車」と呼んでいます。

アジテータとは「撹拌」の意味で、ミキサー「混ぜる」とは違います。

トラックアジテータは、「すでに混ぜられたもの=生コン」をアジテータ(撹拌)しながら運んでいて、あのクルクル回っているドラムの中でミキシング(混ぜ合わせる)している訳ではありません。

運搬の基準

現場に到着した生コンを型枠まで運ぶ運搬機器には、以下の様なものがあります。

種類用途運搬距離の目安
コンクリートポンプ汎用・長距離・高所水平~600m、鉛直~200m
コンクリートバケット汎用・高層・遠距離鉛直~100m、水平~30m
一輪車少量運搬・人力~100m
ベルトコンベア・トロッコ水平運搬・遠距離~100m
シュート高低差・場所打ち杭~30m

現場までの輸送には輸送時間に限度がありましたが、現場内での運搬にも時間の制限があります。

 練混ぜから打込み終了まで 
外気温25℃以上:90分
外気温25℃未満:120分

「練混ぜから打込み終了まで」とは、「生コン工場から現場までの運搬時間」+「現場内でのコンクリートの移動」を合わせたものを指しています。

時間に制限をかける理由は、時間の経過とともに生コンの品質(主に流動性)が低下すること・コールドジョイントの発生を防ぐことが主な目的です。

外気温が25℃以上の時期では、現場まで輸送するのに1.5時間(90分)かけてしまうと、何もせずにその生コンは廃棄することになってしまいます。

そこで、遅延形の混和剤を使用したり、コンクリート温度を下げるなどの対策をする事で時間の制限を延長する事も出来ます。

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運搬機器の主な使い方

現場内で生コンを運搬する方法、打設方法には用途や条件に応じて様々な方法があります。

コンクリートバケットによる運搬

バケットによる運搬は、主に高層ビルなどの高所運搬に用いられます。

バケットとは金属製の大きなバケツ状なもので、クレーンなどで吊り上げて水平・鉛直どちらにも運搬できます。

生コンの材料分離を抑えるのにもっとも適した運搬方法です。

シュートによる運搬

シュートによる運搬は、主に場所打ち杭や、流し込み打設に用いられます。

シュートとは、生コンを流す筒状・板状のもので、たて形シュートと斜めシュートに分けられます。

たて形シュートは落差のある場所へ運搬するもので、斜めシュートは水平方向へ運搬するものです。

生コンは水平方向に流すと材料分離が起きやすくなるため、斜めシュートはなるべく使用しない、または30度以上の角度をつけて使用します。

ベルトコンベア・トロッコによる運搬

ベルトコンベア・トロッコによる運搬は、地下坑道などの遠距離運搬に用いられます。

どちらも水平方向の運搬で、ベルトコンベアは硬いスランプ・トロッコは軟らかいスランプの生コンに適しています。

一輪車による運搬

一輪車による運搬は、少量打設や機器の設置が難しい狭小地などに適しています。

現場では一輪車のことを「ネコ」と呼び、一輪車による運搬・打設を「ネコ打ち」と言います。

コンクリートポンプによる運搬

コンクリートポンプによる運搬は、多くの生コンを遠くまで高くまで運べるためあらゆる工事で使用されています。

コンクリートポンプには、コンクリートポンプ車と定置式ポンプがあり、生コンを送る仕組みの違いで、ピストン式スクイーズ式に分けられます。

  • ピストン式…機械・油圧によってシリンダーを往復させることで生コンを押し出す。
  • スクイーズ式…生コンをゴムチューブに吸い込み、チューブを潰すことで押し出す。

ポンプによって生コンを押し出すことを「圧送」と呼びますが、ピストン式のポンプの方が圧送能力が高く、遠くまで多くの生コンを運搬できます。

コンクリートポンプの圧送負荷とは

コンクリートポンプを使用するにあたって、どの程度の能力のポンプが必要かを考えなければなりません。それを確認するためにコンクリートの圧送負荷を求めます。

P=K(L+3B+2T+2F)+W0H×10-3

P:圧送負荷
K:水平管の管内圧力損失
L:直管の長さ
B:ベント管の長さ
T:テーパ管の長さ
F:フレキシブルホースの長さ
W0:生コンの単位容積質量×重力加速度
H:圧送高さ

管内圧力損失は何で決まる?

係数K(管内圧力損失)は、コンクリートの種類・スランプ・ポンプの吐出量・管径によって決まる値です。

  • スランプが大きいほど圧力損失が小さくなるため、圧送距離・吐出量が増える
  • 管径が大きくなるほど圧力損失が小さくなるため、圧送距離・吐出量が増える
  • 吐出量が増えるほど圧力損失が大きくなる

コンクリートポンプ車は、圧送負荷Pの1.25倍以上の吐出能力のあるものを使用し、輸送管の径は粗骨材寸法の4倍以上を選びます。

コンクリートポンプ打設での注意点

  • 生コンを圧送する前に、先送りモルタルを配管内に通す。
  • 配管の段取り替えは閉塞の要因となるため、効率的な計画とする。
  • 型枠・配筋を乱さないように、配管の固定・養生を行なう。
  • 曲がり管・下り配管は、圧送負荷・閉塞の要因となる。

先送りモルタルとは、ポンプの配管内側を汚すために生コンより先に圧送するモルタルの事を言います。

配管を汚さずに生コンを圧送すると、生コンのモルタル・ペースト分が配管の内側にへばりついてしまうため、コンクリートがバサつき閉塞の原因となります。

まとめ

この記事では、コンクリートの運搬について説明しました。

運搬の規定は、生コン工場から現場内までの運搬と、現場内での型枠までの運搬とに分けて考える必要があります。

生コン工場から現場内までの運搬は「生コンの品質が変わらない」ことを、現場内での型枠までの運搬は「スムーズに打込める方法とする」ことが大事になります。

運搬はコンクリート打設計画において打設量を決める重要な項目になります。

打設計画について詳しい説明は以下の記事をご覧ください。

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