圧縮強度試験だけじゃない!コンクリートの強度試験方法の種類

試験

一般にコンクリートの強度試験と言うと、圧縮強度試験を指す事が多いでしょう。
しかし、コンクリートの試験方法には、その他にも色々な種類の試験方法が決められています。

このページでは、圧縮強度試験をはじめ、様々な強度試験ついて説明します。

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強度試験のJIS規定

JISにおけるコンクリートの強度試験の規定は以下の通り。

各種試験方法
  • A 1108 コンクリートの圧縮強度試験方法
  • A 1106 コンクリートの曲げ強度試験方法
  • A 1113 コンクリートの割裂引張強度試験方法
  • A 1107 コンクリートからのコア採取方法及び圧縮強度試験方法
  • A 1114 コンクリートからの角柱供試体の採取方法及び強度試験方法
  • A 1163 ボス供試体の作製方法及び圧縮強度試験方法

一般的には、コンクリートの強度試験というと圧縮強度試験を指す事が多いですが、強度試験には様々な試験があります。

  • 曲げ強度…コンクリート舗装などの管理に用いられます。
  • 割裂引張強度…通常、コンクリートの引張強度は圧縮に比べて非常に小さいため、応力度の算定では無視されますが、プレストレストコンクリート構造の場合は、コンクリートの引張強度も有効として設計応力度の算定をします。
  • コンクリートコア・角柱供試体…構造体から直接供試体を採取するため、構造体の実際の強度を確かめるのによく用いられます。コア供試体は建築で、角柱供試体は土木で用いられている印象です。

コンクリート強度の種類については、こちらの記事で詳しく説明しています。

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強度試験の方法

まずはじめに言うべきことは、これから解説するどの試験方法にも、強度の基準・判定方法はありません。試験方法とは、強度を正しく判定するために、公平で精確な強度を求めるための基準です。

強度の判定をするには、設計図書や仕様書を確認して、強度の判定について確認する必要があります。
一般には、建築物であれば、日本建築学会のJASS 5 (建築工事標準仕様書)や国交省大臣官房官庁営繕部の公共建築工事標準仕様書(略して営繕)などが該当します。
土木工事であれば、各都道府県の標準仕様書や、土木学会のコンクリート標準示方書などです。

圧縮強度試験(JIS A 1108)

強度試験の解説に入る前にワンポイント。JISの読み方についてアドバイスです。

JISの規定の読み方

圧縮強度試験を例にすると、文頭から


序文(規格によってある場合とない場合) 
1適用範囲
2引用規格

7報告

という様な構成になっています。
はじめに適用範囲を読み、規格に該当するかを一番最初に確認します。
次に引用規格を確認し、必要なら引用規格をサッと斜め読みします。
こうすることで、規格の内容の理解がスムーズになります。
また、文頭に序文がある場合は、技術的に重要な変更があった場合が多く、合わせて確認しておくのが良いでしょう。

A 1108 の適用範囲は、硬化コンクリート供試体の圧縮強度試験の方法となっています。コア供試体の圧縮強度試験には適用できないことに注意してください。

供試体の作り方

圧縮強度試験用の供試体はJIS A 1132に従って作製します。試験を行う材齢は、指定された材齢もしくは、指定がない場合、1週、4週、13週又はそのいずれかとします。つまり、7日、28日、91日で試験をするか、7日、28日で試験するか、28日だけ、91日だけでも良いという事です。

供試体についての規定で重要な事、供試体は所定の養生が終わった直後の状態で試験が行えるようにすること。
具体的には、供試体の乾燥状態と温度によって強度試験の結果に影響を及ぼす場合があるため、養生条件の状態を保ったまま試験をすることが重要です。

乾燥具合は強度への影響が出やすく、乾燥が進むと見かけ上の強度が大きくなるため、水中養生した供試体は乾燥を避けなければなりません。

供試体の寸法

直径の測定は、供試体高さの中央で互いに直行する2方向について、0.1mmの精度で測定します。
つまり円柱の真ん中で90℃クロスするように測り、2方向の平均値を出して小数点以下一桁に丸め、直径とします。

高さは、供試体の上下端面の中心位置で1mmの精度で測定します。供試体の上と下の円の中心位置を繋いだ所を高さとするという事です。

試験の方法

試験に使用する試験機は、JIS B 7721に規定する1等級以上のもので行います。試験機は、圧縮試験機、耐圧試験機、アムスラーなどと呼びます。

供試体の中心軸と加圧板の中心が直径の1%以上ズレないようにセットします。
通常、加圧板には中心軸が合うように円が書かれているので、円からはみ出ないように供試体を置きます

互いの中心軸がズレる事で偏心荷重が作用することがあります。そうすると、実際よりも低い強度を示すことがあるので注意が必要です。

セットが完了したら、供試体に荷重をかけていきます。衝撃を与えないように一定の速度で荷重を加えるのですが、その速度に規定があります。
圧縮応力度の増加が毎秒0.6±0.4N/mm2の速さで荷重をかけます。

ここで問題です。
応力度が毎秒0.6N/mm2であるために、荷重は何kN加えればよいでしょう?

応力=荷重÷断面積で求まりますから、荷重=応力✕断面積とすると答えが出てきます。

つまり、0.6N/mm2✕7854mm2(半径5mm✕半径5mm✕円周率3.1416)≒4.7kNとなります。
荷重は一秒間におおむね、5kNのスピードで加えれば良いのです。

速度が決められているのは、荷重をかけるスピードが早いほど強度が大きくなって測定されてしまうためです。そして、供試体の直径には様々な大きさがあるため、荷重速度ではなく応力度で規定されています。

一定のスピードで荷重をかけ続け、供試体が破壊したら、荷重を抜いて試験は終了です。
試験機が示した最大荷重を有効数字3桁で読み取ります。整数でもなく、小数点以下でもありません。
最大荷重が10以下なら、7.89(小数点以下2桁)で読み、100以下なら47.2(小数点以下1桁)、1000以下なら、358(整数)、と読み取ります。

圧縮強度の計算


求め方は、圧縮強度(N/mm2)=最大荷重(N)÷断面積(mm2)ですね。
四捨五入をし有効数字3桁に丸めます。

曲げ強度試験 (JIS A 1106)

A 1106 は、3等分点載荷法による硬化コンクリート供試体の曲げ強度試験方法について規定しています。

曲げ強度試験用の供試体の作製は、圧縮強度試験用の供試体と同じくJIS A 1132に従って作製し、 その取り扱いも、 圧縮強度試験用の供試体と同様ですが、

曲げ強度試験の供試体は、
標準寸法が100mm×100mm×380mm
もしくは、150mm×150mm×530mmの角柱体です。

試験の方法

試験は、圧縮試験機に曲げ強度試験用のアタッチメントをつけて行います。

3等分点載荷法とは、供試体のスパン方向を三等分したところに荷重を加えるという事です。2個の支持ローラーの上に供試体を乗せ、ローラーとローラーの距離がスパンとなります。スパンを三等分した点を、上から2個の載荷ローラーで荷重を加えます。

供試体が破壊したら、その破壊断面を幅は3ヵ所、高さは2ヶ所について、0.1mm単位で測定をし、その平均値を小数点以下1桁で丸めます。この値を、曲げ強度を求める際の幅と高さとします。

曲げ強度試験の場合、供試体の破壊位置によって、試験が有効であるか無効になるかの規定があります。3等分した内の真ん中の1/3で破壊した場合のみ有効となり、1/3の両側で破壊した場合、試験結果を無効とします。

曲げ強度の計算


求め方は、曲げ強度(N/mm2)=最大荷重(N)×スパン(mm) / 幅(mm)×高さ(mm)×高さ(mm)です。
四捨五入をし有効数字3桁に丸めます。

コンクリートからのコア採取方法及び圧縮強度試験方法(JIS A 1107)

コンクリートからのコアの採取方法と、コア供試体の圧縮強度試験の方法について規定しています。

1.コンクリートコアの採取

コンクリートからコア供試体を採取するところから始まります。

1.コアを採取する時期と方法
「材齢14日以降もしくは、圧縮強度が15N/mm2以上」
「打継ぎ面・型枠際をさける、鉄筋がない箇所(可能な限り)」

2.採取したコアの寸法
「直径は、(原則)粗骨材の最大寸法の3倍以上」
「コアの高さと直径の比率は、原則1.90~2.10とし、1.00を下回ってはならない」

コアの採取には、コンクリート用コアドリルという器具を使用しますが、強度が低い時点でコアを採取すると、ドリルの衝撃にコアが負けてしまい、その後の強度試験に影響が出てしまいます。

2.コア供試体の測定

「母線の直線度・・・コアの平均直径の3%以内」
「角度・・・90±0.5°」
「平面度・・・直径の0.05%以内」
「平行度・・・平均高さの±1.0mm以下」
Check

母線度・・・コアがウネウネと曲がりくねってはいけない、という事を規定しています。

直径が粗骨材の最大寸法の3倍以上で、高さと直径の比率が、1.90~2.10の大きさのものを、上記の寸法規定に適合するように整形しましょう。

3.圧縮強度試験

強度試験の方法は、上述のJIS  A 1108と同様の方法です。

4.試験結果の計算及び補正

「高さと直径の比率が1.00以上1.90未満の場合は、規定の係数にて補正する」

強度は寸法・形状・表面の状況等の影響を受けます。
特に高さと直径の比率は強度に与える影響が大きく、コア供試体の場合、高さと直径の比率が通常の供試体ほど一定でないため、直径の2倍の高さをもつ供試体の強度に換算する必要があります。

コンクリートの割裂引張強度試験(JIS A 1113)

引張強度の試験にはいろいろありますが(多くは直接引張試験方法)、JISに規定されているのは、円柱供試体の側面を上下から加圧する割裂引張試験という方法です。直接引張試験で求めた強度と割裂引張試験で求めた強度はほぼ等しい値を示します

供試体の形状・寸法

A1132コンクリートの強度試験用供試体の作り方によって定められています。

形状…円柱計
直径…粗骨材の最大寸法の4倍以上、かつ100mm以上
長さ…直径から直径の2倍までの範囲

つまり、圧縮強度試験用の供試体で割裂引張試験も行えるという規格になっています。

試験の方法

耐圧機の加圧板に供試体を横倒しに設置し、上下から挟むように加圧していきます。
この時、加圧板と供試体の側面に隙間があると局部的に応力が集中するため隙間ができないような場所を選びます。

供試体を正しく設置したら、わずかに荷重(5.00kN以内)を加えた状態で、上下の加圧板の距離を2か所以上測定して、加圧板の平行を確認します。
平行を確認した後に、荷重を加え続け供試体が破壊するまでの最大荷重を有効数字3桁まで読み取ります。

引張強度の計算

引張強度=2×P(最大荷重)/π×供試体の直径×供試体の長さ
で求め、四捨五入によって有効数字3桁に丸めます。

コンクリートからの角柱供試体の採取方法及び強度試験方法(JIS A 1114)

この規格は、構造体から角柱のコアを切り出し、支圧強度を測定する場合や、曲げ強度試験と圧縮強度試験の両方を行う場合の規格です。一般的に行われている強度管理のための試験方法というよりは、実験や技術開発などの際に用いられることがあると知っておけば良いでしょう。

A1163ボス供試体の作製方法及び圧縮強度試験方法

この規格は2020年に制定されたばかりの新しい規格です。ボス供試体とは、ボス型枠を用いて,構造体コンクリートと一体で成型される直方体の供試体のことを言います。

生コンを打込む型枠にボス型枠という箱型の型枠を取付けることで、構造体と打込むのと同時にボス型枠内にも生コンが打ち込まれます。そうする事で、構造体と同等の環境で養生される事となり、コンクリート強度もより構造体に近い値を示すであろうというもの。

構造体の強度を測定するには、今まではコア供試体を切り取らなければなりませんでしたが、ボス供試体の場合、あらかじめ構造体と一体化させて作るため、切り取る際の構造体の損傷もほとんど無いのが特徴です。大型の公共工事などでは、通常の圧縮強度試験に加えボス供試体での試験も採用され始めています。

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