コンクリートの試験の中でも、スランプ試験はとても頻度の高い試験です。
簡易的な器具で行えますし、難しい作業も特に必要としないため、簡単に試験ができると思われがちです。
しかし、規定された通りの方法で試験を行わなければ、正しい試験結果を求めることは出来ません。
この記事では、スランプ試験について、試験のやり方や判定のポイントについて解説します。
スランプの規格と用語とは
まずは、用語の解説から。
スランプの規格
コンクリートのスランプは、コンクリートの種類別に JIS(日本産業規格) A 5308に規定されています。まずは、スランプの規格値と許容範囲について見てみましょう。
コンクリートの流動性の指標として、スランプの他にスランプフローというものがあります。
スランプ試験方法
コンクリートのスランプ試験方法は、JIS A 1101に規定されています。
まずは試験器具と試験方法について解説します。
試験器具
スランプ試験を行うために必要な器具をまとめました。
太字で書かれている器具は、JISで規定されているもの。細字は、JISの規定通りに試験を行うために必要となる器具です。
- スランプコーン
上端内径100mm、下端内径200mm、高さ300mmの円錐形の筒 - 突き棒
直径16mm、長さ500~600mm、先端が半球状の、金属製の丸い棒 - スランプ板
表面が平滑で、水に濡れない平板。一般に600×600mmの金属板 - ハンドスコップ
コンクリートをすくうためのスコップ - こて
コンクリートの表面をならす用のこて - 水平台+水準器
スランプ板を水平に設置するための台と、水平を確認する水準器 - スランプゲージ
スランプ値を測るもの
試験方法
- step1スランプ板・スランプコーンの設置
- step2コンクリートの投入と突き固め
- step3スランプコーンを引き上げ、スランプを測定
(step1)
初めに、 スランプ板を水平台の上に設置します。その時、水準器を用いて水平の確認をします。
水平の確認を終えたら、スランプ板とスランプコーンの内側を、湿った布などでふき、板の中央にコーンを置きます。
(step2)
スランプコーンの中に、ほぼ等しい量の3層となるようにコンクリートを詰めていき、各層を25回ずつ突き棒で一様に突きます。
具体的には、コーンの1/3の量のコンクリートを詰め、コンクリートの表面を突き棒でならした後に、コンクリートの表面全体を突くように渦を巻きながら25回突きます。
これを、2層目、3層目と繰り返した後、スランプコーンの上面に合わせてコンクリートをならし、スランプ板の上にこぼれたコンクリートをふき取ります。
(step3)
スランプ板をふき取ったら、2~3秒間で、スランプコーンを30cmの高さまで、まっすぐ上に引き上げます。
この時のコンクリートの下がり具合をスランプと呼び、スランプゲージで0.5cm単位で測定します。
スランプ試験の注意点として、スランプコーンにコンクリートを詰め始めてから、コーンを上に引き抜くまでの時間は、3分以内に行わなければなりません。
スランプ試験の判定基準
スランプの規格値によって許容範囲が決まっていますので、判定は、測定値がその範囲内かを確認します。ですが、スランプの値を測定する前に、スランプ試験の妥当性を確認します。
試験後のコンクリートが、スランプコーンの中心軸に対して偏ったりくずれたりして、不均衡な形となった場合、試験のやり直しを行います。
その際、スランプコーンに詰めたコンクリートは捨て、別のコンクリートで再試験を行います。
スランプ試験が妥当だった場合、スランプ値を0.5cm単位で測定しますが、ここでポイントです。
スランプ規格値18cmのコンクリートの、スランプの許容範囲は±2.5cm、つまりスランプ試験の結果が 15.5cm~20.5cmの範囲にあれば合格ということになります。
試験を行った結果、20.7cmだった場合、スランプ試験は不合格でしょうか?・・・答えは、合格です。20.7cmは、0.5cm単位で測定すると20.5cmとなるからです。
0.5cm単位で測定するという事は、2捨3入、7捨8入して数値を0.5cm単位に丸めなさいという事を言っています。
- 19.8cm~20.2cmの範囲は、
2捨3入・7捨8入して20.0cmと測定する - 20.3cm~20.7cmの範囲は、
2捨3入・7捨8入して20.5cmと測定する
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